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76:新たな権利-1

「ハリ・イグサ、ノノ・フローリィ、二人あてに三件のプレゼントが届いていますよ。受け取ってください」

「「……」」

 翌日、神殿に赴き、いつも通りに個室に入ったら、唐突に『煉獄闘技場』の主が現れた。

 しかもとても良い笑顔で。

 すみません、今すぐこの場から逃げ出したいです。

 駄目ですね、はい、分かってます。

 いつの間にか個室のドアが壁と溶接されると言う方法で以ってロックがかかってます。


「その、一応、どなたからのプレゼントなのかはお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「……!」

 だが、逃げ出すのは駄目でも、最低限の情報収集はさせてもらいたい。

 これでプレゼントの出元が堕落の邪神だったりしたら、受け取るのもはばかられるような物かもしれないからだ。

 ノノさんも見知らぬ相手から贈り物を受け取る事のまずさは理解しているので、俺の言葉に頷いている。


「贈り主はノノ・フローリィの世界の光の神。貴方たちも知っている相手です。贈ってきたものもあちらがポイントを払ってこちらで購入したものを貴方たちに渡す、と言うもの。心配するような事は一切ありません。そもそも、闘士に害をなすようなものはこちらで予め弾いていますから、安心しなさい」

「ほっ……」

「そうでしたか。その、『煉獄闘技場』の神様、可能であればですが、光の神様に私がお礼を申し上げます、と言っていたのを伝えて貰えるでしょうか?」

「と、俺からもお願いします。『煉獄闘技場』の主」

「いいでしょう。私から伝えておきます。では、私はこれにて」

 どうやら光の神様からであったらしい。

 ならばまあ、大丈夫だろう。

 あの方は基本的にノノさんの側だ。


「じゃあ、プレゼントの中身をまずは確かめようか。当初の予定はその後で」

「はい、分かりました」

 俺とノノさんは『煉獄闘技場』の主に頭を下げ、『煉獄闘技場』の主の姿が消えると、光の神様からのプレゼントとやらに目を通す事にした。


「えーと……物体じゃなくて権利みたいだな」

「そうみたいですね。詳細を見てみましょうか」

 光の神様からのプレゼントは三つ。

 いずれも『煉獄闘技場』内で闘士として活動するにあたって有効な権利であるらしく、俺とノノさんがペアである限りは二人一緒に利用し続ける事が出来るようだ。


「名称は……PvP出場権、決闘人数制限解除権、レイドバトル出場権か」

「これまでとは違う形式の決闘に参加できるようになる。と言う事でしょうか」

「概ねそれでいいみたいだな」

 では、三つの権利について、もう少し詳しく見て行こう。


「PvPは……これまでのPvEが闘士と『煉獄闘技場』が用意したモンスターで行う決闘であったのに対して、闘士同士で決闘を行う形式だな」

 PvP出場権は名前の通りで良さそうだ。

 そして内容についても、そのままで良さそう。

 それにしてもPvPか……ゲームのPvEとPvPならかなりの差があるのだけど、『煉獄闘技場』だとその差は……まあ、後で考えてみようか。

 勝つ事が出来れば、PvEよりも多くのポイントを稼げるとも書かれている辺り、挑む場合はきちんと考えてから挑んだ方がいい気がする。


「決闘人数制限解除権……これは相手の数が増えたり、こちらの数が増えたりするみたいですね」

 決闘人数制限解除権は、これまでの決闘が、俺とノノさん対一体の相手、であったのを、俺とノノさん対複数体の相手にしたり、逆に俺とノノさんのペアに更に誰かを加えて一体の相手と戦ったり、場合によっては敵も味方も数人のグループで決闘したり、と言った具合に人数を増やしたり減らしたりできるようだ。

 なお、当然ながら人数が相手より多くても油断はできないし、人数が相手より少なくとも勝つ可能性が0になったりはしない。

 他にも初対面の相手と組む都合上、幾つかの規則と言うか、仕様があるようだが……まあ、それは後で。


「レイドバトルは……ああこれは今の俺たちが挑むと雑兵にしかなれない奴だな」

「そうなんですか?」

「そうそう。間違いなく居ても居なくても、ぐらいの役割になる。まあ、挑むかはちょっと調べてからだな」

 レイドバトル出場権は、先述の決闘人数制限解除権の追加解除と言うか、ついでに解放しておくようなものだろうか。

 レイドバトルと言うものは、少人数対多人数、と言う戦闘形式であり、少人数の方は一人から多くても百人以下、多人数の方は最低でも百人以上、場合によっては万単位で闘士が参加する、人数については非対称の大規模戦闘になるようだ。

 うん、今の俺たちだと、多人数側の雑兵にしかならないだろう。

 なにせ、少人数の方は最低でも一人で百人を相手に出来るような存在でないと、決闘が成立しないからだ。

 でも、そんな存在の攻撃を俺が防げるかと言われたら……うーん。

 ノノさんについてはアタッカーなので、普通に参加できそうではあるが。


「まあ、どれもありがたく受け取ってもいいものだな。あって困る権利じゃない」

「そうですね。もしかしたら今までよりも簡単にポイントが稼げるかもしれませんし」

「だな」

 なお、当然だが、どのような形式の決闘であれ、勝たなければポイントは得られない。

 そして、勝ったとしても、相応の活躍をしなければ大量のポイントを得る事も出来ない。

 あって困る権利ではないし、権利購入にかかるポイントを考えれば普通に嬉しくもある。

 が、有効活用できるかは俺たち次第、と言う事になるだろう。


「折角だし、当初の予定のものを購入する前に少し調べてみるか」

「もしかしたら、新しい決闘の形式でなら、もっと有効なものがあるかもしれない、と言う事ですね」

「そうそう」

 では、有効活用するためにも少し調べてみよう。

 俺とノノさんは目の前の画面とPSSを操作して、色々と調べてみる事にした。

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