75:怠惰堕落との決闘を終えて-2
「はああぁぁぁっ……ようやく収まった……」
「お疲れ様です。ハリさん」
「ありがとう、ノノさん」
リバウンドが終わり、俺は安堵の声を漏らす。
長かった。
ただひたすらに苦しく、長かった……。
「えーと、今日の所はもう休みます?」
「いや、寝る前に気を紛らわせるためにも最低限はしておきたいかな……」
「そうですか。じゃあ、サウザーブ様のお店で休憩しながら話をしましょうか」
「そうしようかー」
さて、リバウンドが終わったからには、最低限やるべき事はやらないと。
と言う訳で、休養権の行使をした上で、俺たちはサウザーブさんのお店『カコカティ』へと向かう。
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「二人とも見事な戦いだったよ。では、ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます。サウザーブさん」
「ありがとうございます。サウザーブ様」
『カコカティ』での席や注文は前回と同じ。
ああ、幻覚とは言え、散々痛めつけられた胃腸に温かく優しい紅茶が染み渡る……。
「はっ! と、まずはポイントのチェックだな。俺は100ポイントだった。ノノさんは?」
「私も100ポイントでした。ハリさん」
「ふむ。俺もノノさんも100ポイントなのか」
では改めてヒロウクモ・
まず、得られたポイントは100ポイント。
あの激戦を考えると少ないように思えてしまうし、光の神様から貰った100ポイントを消費しきってこの戦果だと思ってしまうと本当に微妙な気はするが……。
「一応、二人分で差し引きすれば、得にはなっているのか」
「そうですね。後は、勝つだけなら、もっといい方法があったと言う事なのかもしれません」
「ああ、それは確かにありそうだな。ノノさんの『
まあ、勝てたし、仮に強化のための100ポイントが自腹でも赤字にはなっていないので、問題は無いか。
ノノさんの言うもっといい方法があったと言うのについては、ログを見て検討して見るとしよう。
と言う訳でログを見ていくわけだが……。
「あの、ハリさん。リバウンドの原因にもなったであろう、この強化魔法はいったいどうやったんですか? それに、こっちは一時的にとは言え封印魔法の類に見えるんですけど」
「さあ? あの時は感情がかなり昂っていたし、半分……いや、それ以上に本能のままで動いているような状況だっただろうからなぁ……」
「……」
うん、分かってはいたが、本当に俺なのかと自分自身でも疑問を抱くような動きをしている。
いやまあ、だからこそ、生きている時に同じような事をしたら酷い事になるぞと言う警告のために、決闘終了後にリバウンドが来たのだろうけど。
それにしても本当にとんでもない動きをしているな……。
うーん、実質暴走中の行動とは言え、ノノさんが言うところの封印魔法っぽい動き……魔力で相手をコーティングして動きの阻害をしているのとか、練習して自然に出来るようになっておきたいな、出来るようになれば汎用性が高そうだ。
「魔力の暴走……感情の昂ぶりに応じた魔力の増幅……ううん、それだけじゃない。周囲の環境変化に封印まで合わせると、実質的な魔力の量は……」
「ノノさん? 大丈夫?」
「はっ!? あ、はい、大丈夫です。ちょっと考え込んじゃっただけです」
「そう? ならいいけど」
と、気が付いたらノノさんが何か小声かつ高速で何か呟いている。
何か……まあ、俺の魔法関係で何か気にかかる事があったのだろう。
ただ、確証は持てないし、問題があるようなものでもないから、話すまでもない、と言うところだろうか。
では、俺はそれを信頼して流すだけだ。
「そう言えばノノさんはどうしてリバウンド状態に? 俺は見ての通りで、心当たりしかない状態だけど、ノノさんの場合『
「えと、それはですね。その、お恥ずかしい事になるのですけれど、『
「ああなるほど。それで、その状態でも無理矢理に魔力を行使し続けていたから……」
「はい。魔力だけが引き出されたので邪神の呪いは大丈夫だったんですけど、限界は超えてしまったようです」
「なるほどな」
ノノさんにリバウンドが起きた原因はそう言う事だったか。
「ん?」
で、此処で少し気になってしまった。
「ハリさん?」
「いや、魔力を限界以上に行使するのが眩暈と怠さだと言うのなら……俺のリバウンドの腹痛はなんでだ? 肉体の過剰行使で筋肉痛が来るのは分かるけど、肉体の過剰行使で腹痛って、何かおかしくないか?」
「そう言えばそうですね。なんででしょうか?」
腹痛の出元は何処だ? と。
「まあ、闘技場の主の趣味であるかもしれないし、深く考えても無駄なのかもしれないが……うーん、結論も出なさそうだし、深くは考えないでおくか」
「そうですね。でも、違和感を感じたら相談してくださいね。ハリさん」
「勿論だとも」
まあ、今は流しておこう。
調べられないし。
「さて、それじゃあ反省会の残りと……ポイントの使い道について考えて行こうか。ノノさん」
「はい、そうですね。ハリさん」
その後、俺とノノさんは反省会と今後についての話し合いを続け、明日一度神殿に行くことにした。