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65:次の決闘の前に-4

「さてノノさん。それじゃあ改めて次の決闘について話し合おうか」

「はい、よろしくお願いします。ハリさん」

 光の神様との面会を終えた俺とノノさんは、改めて次の決闘相手であるヒロウクモあるいはファティーグモのデータを確認していく。

 とは言え、光の神様から送られたこのデータは生前のもの。

 死後に堕落の邪神が手を加えた可能性もある今のヒロウクモがどのような状態になっているかまでは分からない。

 大きく変わっている事は無くても、反応できなければ致命傷になるような何かぐらいは仕込まれていても不思議ではないだろう。


「まず絶対に必要になるのは……感知能力と言うか反応能力を一時的にでも強化していく事かな」

「そうですね。それは私もハリさんも必要になると思います」

「堕落の邪神の手が入った時点で、硫酸スライムのように何でもありになっていると考えた方が良さそうだもんなぁ……」

「そうですよねぇ……」

 よって、相手の攻撃を確実に感知し、反応するために、その辺に対するバフを神殿あるいはサウザーブさんのお茶で得ておくのは、ほぼ必須と言っていいだろう。


「ちなみにどう言うのが来ると思う? 俺は纏っている糸を全方位に勢いよく飛ばすぐらいはありそうだと思っているんだが」

「うーん、具体的にどう言うのが来るかは分からないです。でも、死体を操れるなら、死体の中にたくさんの糸を詰め込んでおいて、何かをするとかはありそうですよね」

 ただ、貰った100ポイントは神殿以外で使えないから、基本的には神殿での強化をする感じか。

 身体能力の底上げや、魔法能力の強化と同じように出来るはずだ。

 これ以上の不意打ち対策は……100ポイントだと厳しい気がする。

 他にも対策しておきたいことは色々とあるし。


「後は糸対策か。吸収能力付きの糸だから、出来るだけ接触せずに処理する方法が欲しいわけだが……データを見る限り、相性が良さそうなのは火か?」

「そうですね。ファティーグモの糸なら、魔法で強化されていても火で燃やすことは出来ると思います。それでですね、ハリさん、この件については私から一つやってみたいことがあるんですけど……」

「ん?」

 続いて糸対策について。

 どうやらノノさんには何かしらの案があるらしい。

 俺はそれを聞き……受け入れた。

 上手くいけば、非常に効果的な案だったからだ。


「ああそれと、俺の魔力の性質についてだけど、積極的に狙う必要はない。でいいよな」

「はい、それでいいと思います。その方がきっと効果的でしょうから」

 合わせて俺の魔力の性質から予想できる展開についても話しておく。

 ただこちらについては、ある種のカウンターなので、発動すれば美味しい、積極的には生かさない、程度にしておく。

 たぶん大丈夫だと思うが、堕落の邪神の能力の強力さ次第では上手くいかない可能性もあるからだ。

 で、これを積極的に仕掛けるためのアレソレは……ポイントが余るようならワンチャンか。


「さて後は……どう考えても長期戦になりそうだから、その辺についての対策か」

「そんなに長引きそうですか?」

「長引くと思う。データを見る限り、ノノさんの火力だと速攻は狙えなさそうだし、そうなると確実に勝とうと思ったら、時間をかけて相手の攻撃を一つ一つ丁寧に潰していく必要があるから」

「なるほど……」

 長期戦対策は……自然回復能力の強化、と言うのが妥当なところだろうか。

 体力、魔力、集中力、その他諸々、長期戦と言うのは色々とすり減らされるものだ。

 無傷で済ませる事など俺には出来ないだろうし、ノノさんの魔力が薬込みでも足りなくなる可能性は見ておいた方がいい。

 なので、此処も必須と見ていいだろう。


「うーん、一度神殿に行こうか。どれにどの程度のポイントがかかるかは確認しておきたい」

「そうですね。そうしましょうか」

 俺たちは此処までの話し合いで必要だと判断したものをまとめると、それを持って神殿に移動する。

 で、実際に交換はしないが、それぞれのポイントを確認。

 そこから、何処を弄れば使うポイントが削れるか、余ったポイントをどうするか、と言ったところを話し合っていく。


「残す問題は何時ヒロウクモに挑むか、だな」

「能力強化を行ったら、その状態に慣れるのに一日くらいは使った方がいいですよね?」

「そうだな。少なくとも一日は使って、慣らしておいた方がいいと思う。一時的なものにしたからこそ、ポイントのわりに強力なバフに出来そうだったから。それと、予定通りの期間は普段通りの訓練をした方がいいとも思う」

「上手くいけば、その間に新しい何かを、と言う事ですね」

「まあ、俺については厳しそうだけどな。ノノさんは?」

「私は……あと二日ぐらい貰えれば、十分な精度にはなると思います」

「なるほど」

 こうして俺たちがどうするかは決まった。

 まずこの場で一部の能力向上は取得しておく。

 で、休養権を切るのはノノさんのそれが使い物になった後のタイミングで、さらに言えば神殿の一室でだ。

 これまでの流れからして決闘そのものは直ぐに決まるだろうし、多少の時間はあるはずなので、神殿の一室で休養権を切る事により、決闘相手が決まってから強化を入れ、決闘内容決定前の状態から見て、こちらが少しでも有利になるようにするわけである。


「それじゃあ、全力で挑むとしようか。ノノさん」

「はい、頑張りましょう。ハリさん」

 そうして俺たちは準備を整えた上で、決闘に挑むことにした。

10/11誤字訂正

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