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59:魔法の性質-2

「さて、ついでにちょっと調べておくか」

「ハリさん?」

「ノノさんは気にしなくても大丈夫。今後の目標として個人的に調べておきたいだけだから」

 さて、俺とノノさんの魔法の性質は分かった。

 しかし、それに基づいた神殿での強化は直ぐに思いつくものではないし、自主修練による強化もまた直ぐに思いつくものではない。

 なので、今日のところはこれで神殿での作業を終えて、休日を過ごす予定ではある。

 が、予定は予定、折角なので、少し調べたいことを調べておく。


「ふうむ……」

 一つ目、他の地区への移動権について。

 俺たちが今居るのは、AMOL地区と言う名前で、特徴らしい特徴もない一般的な地区であるらしい。

 しかし、『煉獄闘技場』には他にも様々と言う言葉では表し切れないほどに多種多様な地区が存在しているらしい。

 で、具体的にどんな地区が存在しているかは長くなるので今は語らないが、別の地区に移動するためには地区移動権と言う物を購入する必要があるそうだ。

 その額、100ポイント。

 安くはないが……まあ、少し貯め込めば購入できる範囲であるし、この額も払えないなら、他の地区に移動しても仕方がないと言う事なのだろう。


「ふむふむ……」

 二つ目、住居の改良。

 こちらについては細かい所はノノさんとも相談した上でになるが、やはり衣食住と言うのは大切なものなので、自分の理想を詰め込んだ住居と言うのは何処かで用意したいものである。

 なお、仮組みしただけでも、今の俺には到底手が出せない額になったので、当分先になりそうだ。


「なるほどなぁ……」

「ハリさん、本当に何を調べているんですか?」

 三つ目、ノノさんの呪いについて。

 当然ながら、俺が稼いだポイントでの呪いの解除は拒否されている。

 だが、もう少し安く済ませるプランや、最終的には高くなっても今のノノさんが楽になるようなプラン、あるいは分割支払いのようなプランが無いか、と言う事は調べられる。

 なので調べてみたわけだが……見事に全部却下された。

 ノノさんが闘士業で稼いだ一万ポイントを一括で支払う。

 これ以外の支払いを『煉獄闘技場』の主は認める気が無いらしい。


「本当に極々個人的な事だから心配しなくても大丈夫だとも。ノノさん」

 それにしても、他の案件についてはかなりクレバーで、ファジーな条件でも問題なく処理が進むのに、ノノさんの呪いの件だけこれほど頑なとなると……条件の変更を認めないように、誰かが何かをしているのかもしれない。

 そうなると、その誰かと言うのはノノさんに呪いをかけた邪神……ではなく、ノノさんを『煉獄闘技場』に連れて来たのであろう光の神様になりそうか。

 まあ、神様だから人間を助ける義務があるわけでもなし、光の神様にとっては、その方が都合がいい、と言う事なんだろう。

 これについては受け入れるしかないか。


「ハリさあぁぁん……」

「いや、本当に個人的な事なんだって、ほら、ね。うん」

 四つ目、ガラス製品や水晶を用いた品について。

 こちらはノノさんに見せても構わないので、見せてしまう。

 うんまあ、分かってはいたが、ただのガラスのコップや皿程度なら、数個ワンセットで1ポイントと言う値段だ。

 逆に特別な効果を持たせた品物……例えば、水晶の付いたイヤリングに魔法による強化を施した品だと、効果次第ではあるが、2個ワンセットで10ポイントを優に超えるものもある。


「……」

「ん? ノノさん?」

「あの、ハリさん、これって……」

 と、ここでノノさんが表示された画面の隅を指さす。

 で、そこにあったものを見た俺は思わず硬直しそうになった。

 が、このままでは拙いと判断して、直ぐに口を開く。


「偶然です。これについては本当に偶然映り込んだだけです。と言うか誰だ、こんなもの考えたやつは」

 具体的に言うと、ガラスのカップで作ったらしい下着が映り込んでいた。

 しかも無駄に技術の粋が集められているらしく、着用者に合わせた形状変化にサイズ変化、望むなら色付きガラスにする事も可能、魔法が関わらなければ絶対に壊れない不懐性能、着用者の強化魔法の大幅強化、未覚醒の能力の発現補助、敵意ある魔法への高い抵抗能力、等々……見た目の事さえ考えなければ、極めて高性能な代物である。

 なお、当然ながら値段も相応のものとなっており、とてもではないが手が届くような代物ではないと言うか……何も持たずにただ転生するよりも高い。

 本当になんだこれ。


「その、見た目はとても着けられるような代物ではないですけど、能力は凄いですね……」

「本当だな……見た目があまりにもアレで、間違っても購入できるような品物じゃないけど、能力は凄い……」

 うん、あまりにも能力が凄まじすぎて、俺もノノさんも真顔で能力詳細を見ている。

 なんというか、見た目で十割以上損している装備だ、これ。


「ノノさん、ちょっとこの情報を基に色々と弄ってみてもいいかな? その、能力周辺の弄り方次第で必要なポイント量が変わるなら、俺の魔法の性質の理解に役立ちそうだから」

「そうですね。弄ってみてください。たぶんハリさんの役に立ちます」

 そして、極めて不本意な事に、有益な情報の塊でもあった。

 装備の形状を変え、能力を変え、としていくと、当然ながら購入に必要なポイントも変わるのだが、そのポイントの変化によって、硝子と言う素材の性質が見える事になったからだ。

 とても悔しいが、本当に有益な情報ばかりだったのだ……。


「なんだかひどく疲れた気がする……」

「その、PSSでハリさんの生前の世界の食べ物を扱っているお店を調べて、そこで何か食べましょうか?」

「そうしようか……」

 俺はひどく疲れた顔で、神殿を後にする事になった。

ド変態装備です。


10/05誤字訂正

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