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58:魔法の性質-1

「さて着いたな」

「ですね」

 翌日。

 俺たちは早速神殿を訪れていた。

 今回の魔法の性質を調べる件については出来る限り早くやった方がいいと言うのが、俺とノノさんの共通認識であるため、オニオンさんの勧めでは決闘翌日である今日は休みにするべきところだが、それを無視してやってきたのである。


「では、早速と……」

 と言う訳で、適当な個室に入った俺とノノさんは、早速いつも通りにポイント交換のための画面を出し、魔法の性質を調べるためにどれほどのポイントがかかるかを表示した。


「あー、どう判断するべきだと思う? ノノさん」

「どう判断すればいいんでしょうか……ハリさん」

 結果、早速頭を捻る事になった。


「ふうむ……」

 さて、魔法の性質を調べる事自体は、この場でポイントさえ支払えば、即座に結果が表示されるシステムになっている。

 相変わらずの超技術と言うか……『煉獄闘技場』の主にとっては、最初から知っている事で、それを改めて俺たちに提示しているだけなのかもしれない。

 で、問題なのは、支払えるポイントが四段階……具体的には、1、10、100、1000ポイントに分かれていると言うところ。

 ポイントを多く支払えば支払うほどより正確に知れるのだろうし、こちらの手持ちと魔法の性質と言うものの重要性を合わせて鑑みれば、実質ポイントについては一択で、後は払うか否かではあるのだが……うーん。


「ハリさん、PSSでどういう情報が出てくると言うのは調べられないんですか?」

「調べられないみたいだな。元々魔法の性質と言うのが各個人のトップシークレットに近い情報である上に、どうにも毎度おなじみの当人が所有する知識の量と種類に応じて表示が切り替わる仕様が入っているみたいで、他人の情報が信じられないようになってる」

「そうなんですか……」

「まあ、払うか。神殿なんだし、10ポイント相応の情報はちゃんと出てくるはずだ」

 まあ、知るべき情報なのは確かなので、ポイントを支払い、俺の魔法の性質について教えて貰おう。

 結果は?


『ハリ・イグサの魔法の性質。

 それは硝子にして水晶である。

 強固な我によって結合する魔力は、敵と認識した相手からの魔法による干渉に対して強い抵抗性を有する。

 その抵抗の激しさは、時に敵と認識した相手の魔力を逆に侵食することすらあるほどである。

 冷酷になってはいけない、憤怒に陥ってもいけない、我を正しく制御する事こそが、この魔法の力を十全に発揮する事と心得よ』


「……。これ、むしろ10ポイントでいいのか?」

「……。そう、ですよね。その、私が思っていたよりもはるかに詳しい情報が……」

 びっくりするぐらい詳細だった。

 俺の魔法が硝子っぽいと言うのは、『ハリノムシロ』や強化魔法の感じから分からなくもなかったが、今後どう言う風に鍛えればいいかまで出てくるとは思わなかった。

 と言うか、これで10ポイントと言う事は、この上はどれだけ詳しく出てくるんだ?

 なんか、将来性とか、明確な弱点とか、どうすれば魔法を良く扱えるかを直接刷り込まれるとか、そう言う事まで表示されそうで、逆に怖いんだが……。


「ノノさん。これは提案で、場合によっては俺がポイントを支払ってもいいと思っている事なんだが……」

「分かってますハリさん。これほどしっかりとした情報が出てくるなら、私もまずは自分の魔法の性質を知りたいです。とっておきを覚えるにしても、ここで情報を得てからの方が絶対に良いと思いますから。後、自分で払いますから、お気持ちだけ受けとっておきますね」

「分かった」

 とりあえずノノさんの魔法の性質についても調べてしまおう。

 この情報には10ポイントどころではない価値がある。

 と言う訳で、ノノさんの魔法の性質を調べた結果、こう表示された。


『ノノ・フローリィの魔法の性質。

 それは自然である。

 生前の世界の魔法が周囲の魔力を利用するものであり、その理に基づいて現在使用している魔法は、誰でも使えるように調整されたものであって、ノノ・フローリィの性質を十全に生かしているとは言い難い。

 正しく扱うならば、水、土、命だけでなく、周囲に存在するあらゆる環境に呼び掛け、少量の魔力を呼び水として大きな現象を呼び起こす事が可能となるはずである。

 世界の理、大いなる流れを理解する事に成功すれば、この魔法の力を十全に発揮できる事だろう』


「自然……ですか」

「自然……なぁ」

 俺の魔法の性質を硝子または水晶と称した時点で、そう素直な表記で出てくるとは思っていなかったが、自然か。

 なんと言うか、とてつもなく範囲が広い気がする。


「その、ハリさん。自然と言われても、よく分からないんですけど……」

「あーうん、そうだなぁ……」

 そして同時に難解であるとも思う。


「とりあえず、土、水、命、それだけじゃなくて、風や光、陰なんかも自然には当然のように存在するものとして含まれそうと言うか……捉え方によってはだいたい何でも含まれそうではあるけれど、うーん」

「だいたい何でもですか……少し考えてみますね」

「まあ、慌てずゆっくりでいいと思うよ。ノノさん」

 とりあえず将来性と言うか、きちんと扱えた際の爆発力については、俺とは桁違いのものになる。

 これだけは確かな事だろう。

 なにせ、自然の中には噴火する火山や、核融合反応を起こしている太陽、果ては全てを飲み込むブラックホールだって、含まれていると言えるのだから。

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