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57:円陣との決闘を終えて-2

「でもそうだな。自分で自分の改良点を言うだけなのもアレだから、俺がノノさんの、ノノさんが俺の改善した方がいいと思う点を挙げようか」

「えっ!?」

 さて、これから改良点を考えるわけだが、ただ考えて口に出すのも勿体ないので、別の訓練も兼ねてしまうとしよう。


「あの、どうして……ハリさんに悪い所なんて……」

「絶対にある。で、今回のこれは一つの練習でもあるんだよ。ノノさん」

「練習ですか」

「そう、練習だ。相手に直すべき点があった時に、それを気兼ねなく口に出すと言う練習」

「それは必要な事なんですか?」

「必要な事だとも。あくまでも俺個人の考えになってしまうけれど、相手との関係が壊れる事を嫌がって、必要な事も言えないような関係は健全な関係とは言い難い。そして、そう言う関係は、どちらにとっても悪影響を及ぼす事になる。だから、言い方とかは考える必要はあるだろうけど、言わなくてはいけない事は、遠慮なく言えるようになった方が、今後の為にも良い」

「なるほど……」

 俺の言葉に唖然としていたノノさんは、その後に続いた俺の説明で少しずつ納得の顔を見せ始め、最後には頷いてくれた。

 受け入れてくれて何よりである。

 で、そんな訓練の必要性だが……絶対に必要になる。

 ぶっちゃけた話として、俺は完璧には程遠い存在だ。

 判断ミスは普通にするし、理不尽に対する沸点が低くて神様相手にだって喧嘩を売りかねない。

 自覚していないだけで、他にも色々と問題は抱えている事だろう。


「……。分かりました。それなら今回は私がハリさんの改善した方がいいと思う点を言います」

「ああ、よろしく頼む。ノノさん」

 そうして俺が間違った行動をすれば、俺とペアであるノノさんはほぼ確実に巻き込まれる事になる。

 それなのにノノさんが俺に必要のない遠慮をして、必要な事を言えなかったら、状況は確実に悪化する事になるだろう。

 それを防ぐためには、こうした場を時々設けて、言うべき事はきちんと言えるようにした方がいい。

 と、此処まで考えての事であるが、ちゃんと言ってもらえるようだ。


「それで、俺の改善した方がいい点は?」

「そうですね……ハリさんがまずやるべき事は、やっぱりハリさんの魔法についてもっと詳しく知る事だと思います」

「ふむふむ」

 さて、肝心の俺の改善点だが……まあ、やっぱりそこだよな、うん。


「今回の決闘では、ハリさんの魔法の性質が相手にとって良くないものだと、決闘中に分かりました。だから、私はそれを戦術に組み込みました。けれどそれは、とても危うい事だと思うんです。ハリさんの魔法の性質が、私の推測したものと違っていたら、ハリさんの命に関わっていたかもしれないわけですから」

「それは確かにそうだな」

「ではどうすればいいかと考えたら……神殿でポイントを支払ってでも、ハリさんの魔法の性質について詳しく調べてみるのがまず最初だと思うんです。それで今回私たちが気づかなかった何かが出てくるかもしれませんし、ハリさんが今後新しい魔法を覚えるのにも役立つはずですから」

「なるほど」

 ノノさんの言葉には全面的に同意する。

 俺には魔法の知識がない。

 俺の魔法の性質に対する理解も足りない。

 そこは明確な改善点だろう。

 ぶっちゃけ、今回俺の魔法の性質が嵌まったのは、闘技場の主がそう言う相手を選んでくれたからに過ぎないわけだし。


「以上です。ハリさん」

「ありがとう。ノノさん。よく分かったよ」

 俺はノノさんに礼を言う。


「それじゃあ今度は俺からノノさんへの改善点だな」

「はい、よろしくお願いします」

 では次は俺だ。

 とは言え……。


「実を言えば、思いつかないんだよな」

「え、それは……」

「大丈夫大丈夫。ただ、今回のノノさんの立ち回りは悪くなかったし、観察も良かった。手札の使い方も同様。改善点と言えるような部分はないんだよ」

「えーと、でも、何かはあるんですよね?」

「現状のノノさんからどう言う風に成長すれば、もっと楽になっただろうな、と言う点はある」

「じゃあ、それでお願いします。ハリさん」

 今回の決闘、現状のノノさんはやれるだけの事をやっていたので、改善と言うよりは順当に成長するにあたって、その方向性を提示する、と言うのが正しい形になるだろう。


「俺が思いつくのだと、一つの魔法で生成される水や土の量を増やす事。今回は周囲の普通の土を巻き込み固めない事で量を増やしていたけれど、アレを自然に出来るようになれば、使い道は色々とあると思うんだ」

「それは……そうですね」

「後は単純な威力の増強かな? 今回は相手の性質を利用する事でどうにかしたけれど、きっとオニオンさんやドーフェさんなら、俺たちが使ったような絡め手無しでも相手を倒せていたと思う。だから、相手の構築を崩し、戻れないようにするぐらいの威力は、今後のノノさんには必要だと思う」

「なるほど……」

 方向性としては量を増やして汎用性を増すと共に威力を幾らか増やすか、何かしらの手段で以って単純に威力を増やすか、これだろう。

 で、後者に限るならだ。


「でだ。そこで俺が提案するのは、神殿で強力な魔法を一つ獲得してしまう事だな」

 所謂、必殺技のようなものを得てしまうのも、一つの手だろう。


「神殿で、ですか?」

「ああ、俺の『ハリノムシロ』のように、実力が追い付くまで改良が出来ないと言う問題点はあるけれど、一つとっておきがあると言うのは、いざという時も含めて、役に立つ場面が相応にあると思う。もちろん、普通に練習や研究をして、力を付けていくのもいいとは思うけど、一つくらいは持っておいてもいいと思うんだ」

「……。少し考えてみますね」

「ああ、分かった」

 まあ、問題点は有れど、それ以上に得るものが多いとも思うので、出来れば持っておいて欲しいものである。


「それにしても魔力の性質か……。善は急げと言うか、放置しておくとそれだけモヤモヤしそうだし、明日辺り神殿に行ってみるべきか」

「あ、その時は一緒に行きますね。私も少し調べてみたいですから」

「分かった。それじゃあ明日はそう言う事にしようか」

 と言う訳で、俺たちは明日、神殿へ一度行くことにしたのだった。

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