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43:二人での購入-1

「ふぅ、到着っと」

「意外と遠いですよね。神殿って」

「だなぁ。これでも俺たちは立地的に恵まれている方らしいけど」

 オニオンさんの圧倒的な実力を見た翌日。

 俺たちは自分たちの強化などをするためにノノさんと二人で神殿を訪れていた。


「そうなんですか? ハリさん」

「ああ、最近の話だけど、偶々ブログと言うかSNSの書き込みと言うか……まあ、いろんな人が好きに書き込んでいいサイトを見つけて、そこをうろついていたら、地区の外れの方に自宅があって、神殿に行くのが一日がかりで大変だって言う愚痴があってな。闘技場近くの大通りを起点に神殿から遠ざかるように派生していくと、そう言う立地になってしまうらしい」

「それは……確かに大変そうですね。私たちも自分たちの足で闘技場を訪れた事は無いですし」

「だなぁ」

 今日も今日で神殿は混み合っている。

 何故こんなに混み合っているのか不思議で調べてみたのだが、どうやら神殿と闘技場は別の地区へ移動する際の始点にも使われそうで、分かり易く言えば空港のような役割もあるらしい。

 なので、純粋に神殿を利用する人と合わせて、いつもこんなに混雑しているそうだ。

 まあ、他地区への移動は今の俺たちにはほぼ無関係の話だ。

 そんなポイントの余裕はないし。


「えーと、この部屋でいいか」

「そうですね。入りましょう、ハリさん」

 では話を戻して。

 俺たちは神殿の個室に入った。

 中はいつも通りである。


「それじゃあ改めて。この前の絡繰穿山甲との反省会と四日間の訓練を踏まえつつ、強化内容の最終決定をしていこうか」

「はい。分かりました」

 俺はPSSを操作して、先日の絡繰穿山甲との決闘のログを……あ、神殿の画面に出せるし、こっちに出そう。

 大きな画面の方が色々と分かり易い。


「まず俺は火力不足と防御力不足だな。特に火力不足が深刻だ。『ハリノムシロ』だけじゃ囮にもなり切れない」

「そうですね。今後、私の魔法が一切通じない相手も出てくるかもしれませんし、ハリさん自身の為にも、最低限の火力は必要だと思います」

 まず俺の問題点。

 まあ、考えるまでもなく火力不足が問題である。

 例えがゲーム的なものになってしまうが、0ダメージでは相手の気すら惹けないので、せめて1ダメージは通せるようになりたいのだ。

 勿論、サウザーブさんのお茶と訓練のおかげで強化魔法が最低限使えるようになり、それによって底上げも出来ている。

 が、絡繰穿山甲ぐらいの強度を持っている相手だと、今の棍では残念ながら魔法込みでも火力不足になりそうなのだ。


「となると……棍を重くすると言うか、何かしらの改造をするしかないか」

「そうなりますよね。先端に刃を付けて、槍のようにするのはどうでしょうか?」

「槍かぁ……悪くはなさそうだけど……」

「はい。でも……凄い沢山種類がありますね……」

「まあ、色んな世界で色んな種類が使われているだろうからなぁ」

 方針としては棍全体を重くする、棍の先端に重りを付けて遠心力を生かしやすいようにする、突起をつけて衝撃が集まる打点を付ける、刃を付けて破壊の方向性を変える、まあ色々とあるか。

 ただ、全体を重くする以外の方針を選ぶのなら、それはもう棍ではなく別の武器になってしまいそうか。

 何かを付けるなら、片方の先端にだけ付ける方が適切だろうし。

 後、どれを選ぶにしても、棍の材質をより頑丈なものに変える事だけは決定事項だ。

 全力で殴りつけたら棍が折れてしまいましたとか、洒落にもならないが、今の俺の強化魔法の出来だと普通に起こりかねない。


「あれ? そう言えば、ハリさんの戦い方だと、棍の両端に差を付けない方がいい感じですか?」

「ん? んー……」

 と、此処でノノさんから疑問が飛んできて、少し考える。

 うん、差がない方が扱い易いとは思う。

 棍だからこその利点として、状況によって棍の前後を入れ替えて戦えると言うのはあるから。

 これが槍だと、自分の身体を斬ったり突いたりしてしまうため、出来る動きに差が生じてしまうのである。

 まあ、メリットデメリットの話なので、どちらの方が強いとはまた別の話だが。


「そうだな。ノノさんの言う通り、差を付けない方が扱い易くていいと思う」

「なるほど。だったら刃じゃなくて……こう言うのはどうでしょうか?」

「ああなるほど。そう言うのもありなのか」

 ノノさんが画面を弄る。

 そうして表示されたのは、カヌーのパドルあるいはオールと呼ばれる物体に近い形を取った棍。

 両端に楕円形の金属板が付けられており、打点となる場所を相手に当てた時の破壊力が増すようになっている。

 また、金属板の断面は敢えて丸められており、刃物ではなく打撃を専門とした武器のままになっている。


「うん、これは良い感じだと思う。後調整するなら、この辺に切れ込みを入れたりとか、全体の強度やバランスを良い感じにしてだ」

 俺はノノさんが提示した棍……と言うよりはパドルに少しだけ手を加えて、両端が二股になっているようにしたり、素材の調整を施したりしていく。

 うん、いい感じになった。

 ちなみにお値段は10ポイントである。


「……。装備更新って結構金がかかるんだな」

「……。特に魔法や希少な金属を使っていなくてもこれなんですね」

 もしかして初めての武器の時は初回サービス的なものがあったのだろうか?

 現在の棍を素体に強化する事で安く済ませるサービスを活用してなおこれだったので、普通に高い。


「えーと、後は3ポイントで視界を邪魔しない程度の兜……いや、鉢金を買っておこう。額は守っておきたい」

「ですね」

 まあ、買わないと言う選択肢はないので購入。

 それと一先ずの頭部の防具として、額部分にだけ金属が使われた鉢金を購入する。

 これで今回の俺の直接的な強化は終わりだ。


「それじゃあ次はノノさんだな」

「はい。一緒に考えてくださいね。ハリさん」

「勿論だとも」

 では、続けてノノさんの強化と行こう。

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