14:初めて得る力-4
本日は四話更新になります。
こちらは四話目です。
「何とか出来ました。オニオンさん」
「私も何とか出来ました。オニオン様」
「おう、お疲れ様だ」
装備の製作はおおよその形を決めるだけで一時間。
細かいディティールまで決めるのに二時間。
結構な時間がかかった。
が、何とか完成はした。
「さて、改めて見させてもらうが……まあ、ハリは新人闘士としてなら見れる感じか」
「頼もしいです。ハリさん」
「頼りになるかは怪しいけれど、頑張らせてもらうよ」
まずは俺。
武器は色々と試した結果、俺の身長と同じくらいの長さの棒の両端を金属で補強したもの……所謂、棍のようなものを選んだ。
素人でもとりあえず扱える、距離を取って攻撃できる、軽くてもそれなりの威力が見込めるなどの理由からだ。
防具は両腕は肘まで覆える金属製の手甲、両足は膝まで覆う金属製の脚甲、左胸だけ守る金属製の胸甲、左手に固定された木と金属を組み合わせた小さめの盾になっている。
で、ここまでで24ポイントだったので、残り1ポイントで木綿のシャツとズボンの上下一式を購入した。
後は結構な重量があるこの装備を着て、どれだけ俺が動き回れるかだが……これについてはこの後試してみるか。
オニオンさんの見立てではある程度なら大丈夫らしいけど。
「で、ノノの嬢ちゃんは……完全に闘士じゃなくて魔法使いだな。新人じゃまず見ないスタイルだ」
「えーと、この評価が正しいかは分からないけど、可愛いと思うよ。ノノさん」
「ありがとうございます。オニオン様、ハリさん」
次はノノさん。
武器は先端に水色の宝石のような物が填め込まれた木製の杖。
防具については全身を覆うローブに加えて、靴底が鉄板になっているらしいブーツを履いているらしい。
他にもローブの下には普通の服や、周囲の魔力支配を助ける作用を持つ装飾品も身に着けているそうだ。
見た目を総評するならば、ゲームなどでよく見るような魔法使いらしい魔法使いと言う感じだろうか。
着ている本人の見た目もあって、強さどうこうよりも先に可愛いという評価が出てしまったけれど。
「ゴホン、さて、これで準備完了だ。確か予定だと、明日ハリが単独で一戦あるんだったな」
「はい。ノノさんとペアを組む前に組まれていた決闘があります」
「じゃあそこで今後のために色々と慣らしておけ。一人で戦える最後の機会かもしれないからな」
「分かりました」
「ノノの嬢ちゃんもその決闘はPSSで見ておけよ。前衛の動きを把握しておくことは悪い事じゃない」
「はい、分かりました」
とにもかくにも、これで装備は整った。
後は闘士として決闘に臨み、勝利を重ねていくだけである。
「で、二人とも今の内に休息権は行使して、次の決闘日時が組まれるタイミングは弄れるようにしておけよ。明日のハリの決闘の内容次第じゃ、決闘に臨む前に基礎訓練が必要かもしれないからな」
「うっ……それは確かに……」
「必要かもしれませんね……」
問題はやはり俺が戦闘の素人である事と、ノノさんが抱えている問題だろうか?
特に前者。
後者は俺次第ではフォローできるかもしれないが、そのフォローをする俺の実力がまず問題だらけ過ぎる。
まあ、これからの努力でどうにかしていくしかない。
どうにか出来なくて、俺が悲惨な目に合うだけなら納得もいくが、ノノさんまで悲惨な目に合うような事になれば、俺が俺を許せないのだから。
「後、必要な事項は……ないな。それじゃあ、装備を身に着けて動き回るのと、PSSの機能習熟、この二つの訓練も兼ねて、此処から二人一緒でハリの家まで戻れ」
「分かりました。今日はありがとうございました。オニオンさん」
「はい。本当にありがとうございました。オニオン様」
「気にするな。俺も仕事だから手助けしただけだし、お前らは手のかからない方だったからな。じゃ、二人とも頑張れよ」
オニオンさんはそう言うと、部屋の外に出ていく。
「それじゃあノノさん」
「はい、ハリさん。一緒に帰りましょうか」
そして俺たちも部屋の外に退出。
神殿の外に出ると、PSSの機能を利用して、自宅までの移動を始める。
その道のりは身に着けているものの重量の差、ノノさんと俺の歩幅の差、この街並みに慣れているかどうかと言う差もあって、行きよりもだいぶ時間がかかる事になったが、どうにか二人揃って無事に自宅へと着く事が出来た。
また、帰り道で少しとは言え会話も出来たので、交流も図れたと思う。
≪食事の時間になりました。ランク6の食糧配給を行います≫
「「!?」」
で、家に着いたタイミングで食糧配給があり、俺も、俺の部屋の隣が居住地になったらしいノノさんも体を強張らせた。
オニオンさんの言葉ではランク6ならばとりあえず大丈夫とのことだったが、具体的にどんなものが出てくるのかは知らされていなかったからだ。
そして俺たちは緊張しながら今日の食事を見て……。
「普通の食事って素晴らしいものだと思うんだ。ノノさん」
「そうですね。私もそう思います。ハリさん」
出て来たのが、野菜、肉、卵、魚をパンで挟み込んで作られた、ごくごく普通のサンドイッチであることに安堵した。
味も含めて本当に普通であり、本当に、ほんっとうに安心した。
「それではハリさん。明日の決闘、頑張ってくださいね」
「ああ、頑張らせてもらう」
そして俺たちはそれなりに長い時間を起きていて、周囲の照明が夜仕様なのか薄暗くなってきたという事もあって、それぞれの部屋で眠り始めた。