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13:初めて得る力-3

本日は四話更新になります。

こちらは三話目です。

「さて、まずは方向性だが、ノノの嬢ちゃんが体力を消耗すると問題がある以上、取れる方向性は限られる。つまり、ハリが前衛の盾役を務めて時間を稼ぎ、隙を作り、後衛のノノの嬢ちゃんが強力な技を叩き込んで相手を倒すという方向性だ。特殊な魔法の類でもなければ、これ以外に手はないだろう」

「その、すみません。ハリさん、私のせいで」

「問題なし。気にする必要もない。そうと決まっているなら、逆に分かり易いし、それにたぶんだけど、俺は俺でどの道火力不足だろうから、ノノさんが居ないと勝てない」

「そ、そうなんですか?」

「ああ、そうなんだ」

 方向性についてはオニオンさんの言う通りだと思う。

 ノノさんの問題がどれぐらいで発生するかは分からないが、敢えて発生させるべきものではないのだから、オニオンさんの言った通りで問題ないのは、戦いの素人でも分かる。


「ゴホン。でだ、方向性はそれでいいんだが……ノノの嬢ちゃんには戦いを決められるような強力な技の類はあるのか? と言うか、ノノの嬢ちゃんが使う魔法の性質ってのはどういう物なんだ?」

「私の魔法ですか? そうですね……」

 決め手になるのがノノさんの魔法なのだから、確かにそこら辺の確認は必要か。


「……。魔よ、水となり、球となり、浮かべ。『水球(アクアボール)』」

 ノノさんは目を瞑り、右手を前に出す。

 そして、周囲の魔力を右手の先に集め、十分に集まったところで自分の魔力を少しだけ注ぎ込み……水の球体を出現させる。


「おおっ。正に魔法……」

「ほう。周囲の所有権が存在しない魔力を集め、自分の魔力を呼び水として魔法を発動。低コストでそれなりの火力を発揮できるようにした感じか」

「す、凄いですね。オニオン様。一目見ただけで……」

「これでも闘士として中堅よりちょっと上ぐらいだからな。これぐらいは分かる。で、これだけか?」

 俺がノノさんの魔法に驚く隣で、ノノさんとオニオンさんがそちら方面に詳しい人間同士という感じの会話をしている。

 し、素人だから混ざれないのは仕方がないんだ。


「えーと、私が使えるものだと、他は魔力を土、生命力には変えられます。形状については球体限定で、矢よりちょっと遅いぐらいの速さで飛ばせます。その、不勉強でごめんなさい」

「ま、その辺の勉強は今後ポイントが手に入ったらすればいい。ポイントでの直接強化も、魔導書の類での強化も出来るはずだからな」

「分かりました」

「水、土、生命力……ノノさん、傷の治療とかもできる感じ?」

「はい。あ、でも、回復したい相手に直接触れる必要があるので……」

「あー、うん。なるほど」

 ノノさんの魔法は水、土、生命力……回復魔法にも近いのか?

 でも回復については決闘中に使うのは厳しいかもしれない。

 俺は前衛だからノノさんの手が届かない位置にいるだろうし、ノノさんが自分で自分の傷を治すというのは、その状況自体がもう拙い。

 となるとやっぱり火力役をお願いする事になりそうか。


「なるほどな。そうなると、あーして、こーして……やっぱり装備を整える方向で行くか。ハリ、お前は戦いの経験は碌に無いんだよな」

「はい、そうです」

「じゃあ、お前は打撃武器、片手で扱える大きさの盾、両手分の手甲、両足分の脚甲だな。余ったポイントは上下の服にしておけ」

「頭や胸は守らなくていいんですか?」

 打撃武器は分かる。

 俺に刃が付いた武器を使わせても、マトモに刃を立てられるとは思えないからだ。

 盾も分かるし、防具も分かる。

 けれど、頭や胸は守らなくてもいいのだろうか?


「俺たちは死んでも復活する。だから、即死するような攻撃は今は無視していい。それよりも手足をやられる方が数段拙い。最悪、痛みで心が折れかねないからな」

「……。それは嫌ですね」

 そう言う事情なら、分からなくもない。

 ポイントの余り方次第では、胸だけ守る防具とかを付けてもいいかもしれないけど。


「ノノの嬢ちゃんは魔力支配や魔法を助けるような装備品を複数、荒れ地でも動き回れるようなブーツ、この辺が必須だな。後は残ったポイント次第だな」

「分かりました」

 オニオンさんとノノさんが話をしている横で、俺は必要とされた装備品を見ていく。

 えーと、打撃武器は……なんか恐ろしい数が並んでいるというか……えっ、これどうすればいいんだ?

 長さ、形状、材質、特殊な能力……えっ、待って、一体どこまで弄れるんだこれは……。


「……」

 見ればノノさんも俺と同じように茫然としていた。

 いやだが、これは茫然としても当然だろう。


「ん? ああそう言えば言ってなかったか。神殿での物品の交換は、イメージさえ出来ればだいたい何でも要求できるぞ。当然細かく注文を付けたり、魔法の力が大きく関わっていたりすれば、必要なポイントも増えていくけどな」

 あの神様はだいたい可能であると言っていて、俺はそれを事実だと思い、色々と想像はしていた。

 だが実際には、俺の想像と同じかそれ以上だった。

 なにせポイントさえ支払えるのであれば、北欧神話の主神であるオーディンが持つ槍であるグングニル、スサノオノミコトがヤマタノオロチの尾から見つけた天叢雲剣、ヒンドゥー教の神であるシヴァ神が持つトリシューラ、そう言った文字通りの神器も再現可能なほどだったのだから。

 まあ、必要なポイントはノノさんの治療がはした金になるような額なのだけれど。


「そうだな。初心者が物品を交換するなら、払えるポイントと必要な性能を要望として出して、向こうが提示するものを仮出力してみるといいぞ」

「わ、分かりましたー」

「あ、はい……」

 オニオンさんのアドバイス通りに俺とノノさんは装備を作り始めた。

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