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12:初めて得る力-2

本日は四話更新になります。

こちらは二話目です。

「まず第一に必要なのは魔法行使権だ」

「魔法行使権……50ポイント!?」

 俺はホログラムの画面を操作して、オニオンさんの言った、魔法行使権とやらを探す。

 そうして確かに魔法行使権は出て来たが……取得するのに必要なポイントは50ポイントと、手持ちのポイントの半分を使うものだった。


「魔法行使権ってのは、『煉獄闘技場』で通常の物理法則の外にある力全般を扱うために必要な権利だ。世界ごとに魔法、魔術、オーラ、気功、妖術、マナ、神通力、霊力、超能力、呪術、スキル、他にもまあ色々と呼び方はあるが、その全てがこいつを取得しない限りは使えないようになってる」

「あ、だから魔法が使えなかったんですね」

「……」

 あ、ノノさんは魔法がある世界の出身だったのか。

 ノノさんが魔法を使えるようになれば、体力の消耗はたぶん抑えられる。

 そう考えたら、ノノさんが取得する意味はあるか。


「言っておくがハリも取得は必須だぞ」

「俺もですか? でも俺が元居た世界はそう言う力は物語の中だけで、仮に現実にあっても俺にはそう言う力を扱う知識は一切ないんですけど」

「だとしてもだ。ある程度以上から先の相手と戦うなら魔法に属する力は必須。生前は扱えてなくても、今なら扱える可能性だってある。魔法行使権を取得しないと、可能性はないままだがな」

「なるほど……」

 俺も魔法を使える可能性がある、か。

 だったら取ってもいいのかもしれない。

 いや、オニオンさんの言葉を考えると、むしろ取らないといけないのか。

 俺にどんな力が眠っているのかは分からないが、その力が目覚めないとある程度以上から先は厳しいのだから。


「分かりました。取得します」

「私も取得します」

「よし」

 と言う訳で、俺もノノさんも魔法行使権というのを取得する。


「ん?」

「あ……」

「なるほど。ハリもちゃんと素養はあるみたいだな」

 魔法行使権を取得した瞬間、世界が開けたような感覚があった。

 こう、なんと言うか、目ではない感覚で以って、ノノさんとオニオンさんが何かしらの力を纏っているのが分かるのだ。

 そして、その力を僅かではあるが、俺も纏っているのが分かった。

 どうやら、これが俺の力であるらしい。


「得た力の性質の見極め、使い方の考案や検査はまた後でな。次の取得だ。次は……休養権とパーソナルサポートシステムの二つだな」

「どっちも5ポイントですね」

「この二つはどういうものなんですか?」

 次の取得は休養権とパーソナルサポートシステムとやらであるらしい。


「休養権は決闘の日程が組まれる日を自分で決められるようになる権利だな。これがないと休みなしに戦い続ける羽目になりかねないからな。絶対に取っておけ」

「はい」

「それは確かに必要ですね」

 休養権は確かに必要そうだ。

 あんな死闘を毎日だなんて、流石に気が狂ってしまうと思う。


「パーソナルサポートシステムは長いからPSSと呼ばれるが、こいつの事だな。休養権の行使、道案内、連絡のやり取り、情報の収集、ポイントの使用、エトセトラエトセトラ、まあ、だいたい何でもできる便利ツールだ」

「ああ、スマホ」

「スマホ? ああ、生前で似たようなのがあったというか、それが基なのかもな。ま、とにかく便利だから持っておけ。と言うか、ないと自宅に帰る事もままならなくなるぞ」

「それは確かに必要そうですね」

 パーソナルサポートシステム……PSSはオニオンさんが時々出していたスマホのような物体の事であるらしい。

 搭載されている機能もだいたいスマホと同じというか……いや、PSSのが上位互換っぽいか、必要がない時は完全に消せるみたいだし。


「取得しました」

「私もです」

「よし、それじゃあ、お互いの連絡先は今の内に連絡しておくぞ」

 俺もノノさんも勿論二つとも取得した。

 そして、試しにPSSを出現させてみる。

 と言うか、もしかしなくても、このPSSの出現と消失も魔法行使権がないと出来ないものだったりするのだろうか?

 だとしたら、これだけでも魔法行使権の取得は必要だったのかもしれない。

 と、そんな話は後にして、今はまずノノさんとオニオンさんの連絡先を得ておかないと。


「あれ?」

「ん?」

「そう言えばお前らは二人一緒に活動するのが義務つけられてたな。なら、それに必要な権利や情報が予め入っているのは当然か」

 と、思ったら、俺のPSSにはノノさんの連絡先が既に入っていた。

 ノノさんのPSSにも俺の連絡先は既に入っていたらしい。

 また、『煉獄闘技場』運営とやらの連絡先も入っていて、そこからは、俺は次々回の決闘から、ノノさんは次回の決闘から、常に一緒に決闘に臨むようになっている事、それとノノさんの居住地が俺の居住地のすぐ近くに変更されたとの連絡も入っていた。

 オニオンさん曰く、ペアで決闘に臨むにも専用の権利が必要であるし、引っ越しにもポイントが必要との事らしく、今回のこれは僅かではあるがポイントの消費が少なくなるので、素直に喜んでおいていいそうである。


「さて、これで二人とも60ポイントずつ消費。次は……お前ら、今朝の食事は食ったか?」

「「……」」

 オニオンさんの言葉を受けて、俺もノノさんも無の表情を浮かべる。


「ようし、分かった。何も言わなくていいし、思い出さなくてもいい。あんな栄養価以外はアンチパーフェクトマターに付き合う必要なんてないんだ。とりあえず15ポイントほど使って、食事のランクを6まで上げておけ。そこまで上げれば、とりあえず飯で精神を病む可能性はなくなる」

「「……」」

 俺もノノさんも無言のまま食事のランクを6まで上げる。

 なお、1ランク上げるのに、ランクと同じだけのポイントが必要になると言う仕様であるらしく、そのためにランク6まで上げるのに15ポイント必要になるのである。

 なんにせよ、あの食事と呼ぶのもおこがましい何かから解放されるなら、願ったり叶ったりである。


「さて、此処まではテンプレ通りだな。で、二人とも残りは25ポイントずつ。これで戦いのための準備を進めていくわけだが……この先については、俺は勝率が高くなるであろう方向性を示したり、細かい部分での相談には乗れるが、基本的にはお前たち二人が自分たちで考えていくべき部分だ。折角の固定ペア、二人で協力する前提のビルドも組めるから、よく考えて行けよ」

「分かりました」

「はい」

 さて、残りの25ポイントで俺は何が出来るのだろうか?

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