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11:初めて得る力-1

本日は四話更新になります。

よろしくお願いします。

こちらは一話目です。

「まったく、生きた心地がしなかったぞ。いや、一応死人なんだがな。この場に居る全員」

 オニオンさんはため息を吐くと、スマホのような物体を取り出して、何かを確認する。

 そして確認が終わったらしい。


「おうし、それじゃあまずは改めて自己紹介からしていくぞ。俺の名前はオニオン・オガ・マスルロド・キドー。オニオンで構わないぞ。そして、お前たち二人のアドバイザー役だ」

「俺の名前はハリ・イグサです。ハリで構いません。改めてよろしくお願いします。オニオンさん」

「ノノ・フローリィと言います。ノノと呼んで下さい。その、私の事情に巻き込んでしまってすいませんでした。ハリさん、オニオン様。特にハリさんは強制的に私なんかと組むことになってしまって……」

「あー、強制的に組まされた件については、むしろ俺の方がノノさんに謝らないといけないかも。ぶっちゃけ俺は戦いの素人だから」

「お前ら二人とも実力的には似たようなものだと思うから、そこはどっちもどっちでいいだろ」

 俺たち三人は改めて自己紹介をする。

 ちなみにノノさんが俺の事をさん付け、オニオンさんの事を様付けで呼ぶのは、より親しくするべき相手の方がさん付けで呼ぶべきと言う家での教えであるらしい。


「さて、それじゃあ、今後お前らがどうやってポイントを稼いでいくかだな。それによって、これから神殿で取得するべき権利と物品が変わってくる」

「どうと言われても……闘士として稼ぐしかないんですよね?」

「ノノの嬢ちゃんの治療についてはそうだ。が、他の事柄については別に他の方法で稼いだポイントでも問題ない。だからまずはそっちで十分な資金を稼いでからと言う手もあるが……そんな気はないみたいだな」

「あまり、あの神様の機嫌を損ねたくはないので」

「すみません。他の稼ぎ方と言うのにしても、私の事情だとやっぱり治療を先にしないと……」

 闘士以外の生き方を選択する気はない。

 たぶん、飲食店でのバイトとか、事務作業だとか、荷物の運搬だとか、色々とあるのだろうとは思う。

 けれど、俺にはノノさんの事情を後回しにするつもりはないので、闘士としての生き方が第一候補である。


「なら闘士で稼ぐのは確定っと。だったら権利の取得前に一つ確認するべき事があるな」

「確認するべき事?」

「なんでしょうか?」

「本来ならば、此処『煉獄闘技場』では生前何をしていたのか尋ねるのはマナー違反の振る舞いだ。が、今回は事情が事情なんでな。ノノの嬢ちゃん、お前が抱えている事情について話してくれ。その事情如何によって、闘士としてどう立ち回るかが変わってくるだろうからな」

「……。はい、分かりました」

 ノノさんの事情か。

 俺は背筋を伸ばし、聞く事に徹する。

 そして、ノノさんは少し悩んだ後、口を開く。


「生前の私はフローリィ男爵家の末娘として生まれました。けれど何故か生まれつき体が弱かったんです。そこで、お父様とお母様は原因を探るために私を高名なお医者様、神官様、魔法使い様と言った方々にお見せしました」

「ふむふむ」

「その結果診断されたのが、肉体や精神ではなく、魂に何かしらの異常が生じている。と言うものでした。その、詳しい原理は分からないのですが、ある程度以上体力を消耗するような動きをすると、魂から何かが作用して、全身がとても痛くなり、呼吸もまともに出来なくなってしまうそうなんです。これはこちらに来てからも変わりません」

「なるほどな」

「それで15歳の冬に流行り病が起きて、それに感染、元々の病気もあって、死んでしまったんです」

「ほー、ちなみに此処へ来た事情は?」

「その、私の世界の神様の名前を名乗る方が、此処でなら治療が出来るから頑張りなさい、と」

「分かった。だいたいの事情は把握した」

 つまり、まとめるとこうなるのか。

 ノノさんは男爵家令嬢。

 ノノさんは魂に疾患を抱えていて、体力を消耗するような動きはNG。

 ノノさんも閻魔様のようなお方によって、此処へやってきた、と。


「そう言う事なら、確かに此処は治療には適切だな。俺たちは仮に肉体を得ているが、実際には魂だけの存在だ。それに神殿でポイントを消費して得られる権利の一部は、魂の改善や改良を伴うものだって聞いたことがあるからな」

「なるほど」

「本当に治療は出来るんですね……」

 そして、『煉獄闘技場』の神殿の機能を利用すれば、ノノさんの治療は可能である、と。

 それにしても体力を消耗すると追い打ちのように悪影響を及ぼすなんて……魂の疾患と言うより、まるで呪いみたいだな。

 いや、俺には魂についての知識なんてないから、適当に思っているだけだけど。


「じゃあ次の確認だ。ノノの嬢ちゃん。お前、何ポイント要求されている? そこの画面を弄れば、見れるはずだ」

「えーと……10,000ポイント、だそうです」

 呪いの治療には10,000ポイント必要なのか。

 あの狼との死闘が100ポイントだったのだから、単純計算ではあれを100回繰り返せば治療できる……と言う訳ではないらしい。

 オニオンさんがしかめ面をしている。


「ちっ、死後も残っている時点で相当の難物だとは思っていたが、条件なしの転生をするのと同じだけのポイントとか相当だぞ」

「えっ……」

「……」

 どうやら10,000ポイントと言うのは、俺が思っているよりもかなり多いらしい。


「そうだな。これは先に教えておくぞ。闘士としての活動で得られるポイントは、初勝利についてはお祝いという事もあって一律100ポイントだが、二回目以降は戦う相手や戦い方で変わっていく」

「「……」」

「つまり、お前らが初めて戦った相手がどんな相手かは分からないが、恐らく二回目以降は多くても10ポイントとかしか貰えないような相手なんだ。だから、10,000ポイントを稼ぐとなったら、二人で協力しなければ倒せないような相手に挑み続け、稼ぐ必要がある。それぐらいでなければ、100年あろうが1000年あろうが時間が足りない」

 アレが10ポイント……あの死闘で10ポイントかぁ……。

 いや、でもだ。

 二人ならきっと何とかなるはずだ。

 そうに違いない。


「そうなると、あーして、こーして、テンプレは外せないから……そうだな、ハリ」

「なんですか? オニオンさん」

「ぶっちゃけ、ノノの嬢ちゃんが10,000ポイントを稼げるかはお前次第だ。頑張れよ」

「……。分かりました」

「そしてノノの嬢ちゃん、お前も頑張る必要がある。最低限の方向は示すが、結局はお前ら二人が手を取り合って、共に頑張らないと、どうしようもならん」

「はい。頑張ります」

 それからオニオンさんは少し悩んだ後、俺たち二人に改めて頑張るように声を掛ける。


「ようし、それじゃあ闘士として必要なものを挙げていくぞ。耳かっぽじってよく聞きやがれ」

「「はい!」」

 そしてオニオンさんによる何を取得するべきかという話が始まった。

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