41、ダンジョン内逆鬼ごっこ(後篇)
吸血鬼が部屋を出てきっかり30分後。
静かだったダンジョンが鬼達の異様な熱気を孕んだ足音に包まれた。それはスケルトンやゾンビちゃん達「鬼」が時間の経過により解き放たれ、獲物を探してダンジョン内を彷徨い始めたことを意味していた。
一方吸血鬼はというと、曲がりくねった狭い通路の影に隠れて息を殺し、膝を抱えて小さくなっていた。
「おーい吸血鬼」
背後から声をかけると吸血鬼はビクリと体を震わせて慌てたようにこちらへ顔を向ける。声の主が俺だと分かると大きくため息を吐いて肩の力を抜いた。
「脅かすなよレイス。あと声が大きいぞ、静かにしろ」
「静かにしろって……かくれんぼじゃなくて鬼ごっこなんだけど」
「だからなんだ、時間までやり過ごせば僕の勝ちだろう」
「まぁ確かに……“時間までやり過ごせれば”ね」
その時、スケルトンたちの足音が真っ直ぐにこちらへと接近してきた。
吸血鬼は目を見開き、牙を剥き出した恐い顔を俺に向ける。
「スケルトンを呼び寄せたか」
「そんな事しないって。というか吸血鬼気付いてないの? ダンジョン中階はスケルトンたちのホームグラウンド、この辺の地図はみんなすっかり頭に入ってるはずだよ。隠れた吸血鬼を炙り出すくらいなら訳もないと思うけど」
吸血鬼は大きくため息を吐き、舌打ちをしながら髪をかき上げる。
「なるほど……もう少し時間を稼ぎたかったんだが、ダメか」
「ダメだよ、戦闘訓練なんだから。さぁ戦おう吸血鬼」
「言われなくてもそうするさ」
吸血鬼が立ち上がったちょうどその時、通路の曲がり角からスケルトンたちが踊り出た。彼らは追い求める賞金首の姿を見るや、剣を振りあげて果敢に向かってくる。だが彼らの剣は振り下ろされる暇もなく地面に落ちることとなった。
ものの数秒でバラバラになり地面を転がるスケルトンたちを見下ろしながら、吸血鬼は嫌らしく牙を見せて笑う。
「すまないなスケルトン、仲間をこんな風にしてしまって僕も心苦しいよ」
その言葉とは裏腹に吸血鬼はスケルトンの髑髏を高く蹴り上げ、重力に従い落ちてきたソレを足で壁に蹴りつけた。衝撃でヒビの入った髑髏は微かに震えながら地面に転がる。
「オーバーキルはダメだよ」
「ふははは、ならオーバーキル禁止のルールを作るか? いつも痛い目見させられているからな、ちょっとしたお返しだ」
「ふうん……まぁ禁止はしないよ。こちらにも、向こうにもね。でもそんな暇あるのかな」
「なに言ってる、時間ならたっぷり――ぐっ」
ペラペラと話していた吸血鬼の口から言葉の代わりに一筋の血が流れ出す。
その胸からは血に濡れた金属製の矢じりが飛び出し、白いシャツを赤く染めあげている。彼の背後には弓を構えた数体のスケルトンが吸血鬼に狙いを定めていた。
「……ッ、いつの間に!」
「第一部隊が冒険者の気を引いている間に後ろへまわり遠距離攻撃――俺らが良くやる作戦だよ。でも今回は弓部隊の到着が少し遅かったなぁ、ここ一番って時に心臓を外すのも頂けない。やっぱり弓専用の練習場が必要かも」
「反省ならスケルトンとやってくれ。気が散るから喋るな!」
降り注ぐ矢の雨を辛くも回避しつつ吸血鬼は通路を走る。
吸血鬼の普段の戦場である宝物庫前のフロアはだだっ広く障害物が無い。今回のように気付かないうちに敵が背後に迫っていた、なんてシーンはほとんどないのだろう。このように曲がりくねった迷路での戦いには慣れていないのだ。身体能力や純粋な戦闘技術でスケルトンを圧倒する吸血鬼がまさかスケルトンから敗走することになるなどとは思ってもみなかった事だろう。その足の速さでなんとかスケルトンたちの追跡を撒いた吸血鬼は通路の影にその身を隠し、悔しそうに唇を噛んだ。
「選択を誤った。最深層で奴らを迎えるべきだったか」
「うーん、でもあそこ逃げ道ないし。スケルトンが大挙して押し寄せて来たらそれはそれで大変だったと思うけど」
「確かにあの数は厄介な武器だな……痛ッ」
吸血鬼は胸に深々とささった矢を抜き、忌々しそうに片手でそれを折る。
矢は心臓を逸れており出血もそこまで酷くない。この程度なら直に傷も塞がるだろう。確かに吸血鬼はスケルトンたちの戦術と不慣れなフィールドに押され気味ではあるが、そうは言っても吸血鬼が受けた攻撃はこの矢一本のみ。まだまだ戦いは始まったばかりである。
「はぁ、とにかく近距離戦に持ち込めればまず勝てるんだが。問題は弓矢部隊だな」
吸血鬼は腕を組み、呼吸を整えながら弓矢への対策を考えているらしい。あちこちに視線を泳がせながら真剣な表情を浮かべる。
「遠距離戦ができる武器を手に入れるとか……いやダメだ、それでは技術でも数でも勝てない。ううん、どうしたものか」
その時、遠くから足音が聞こえてきて吸血鬼は不意に口をつぐんだ。
だがその足音には力強さがなく、目的地に向かって歩いているというよりは獲物を探して彷徨っているといった様子である。しかも足音から察するに相手は二人組、そのほかに足音は感じられない。
「……こっちから仕掛けるか」
吸血鬼は足音がどんどん近づいてくるのを待ち、十分に引きつけたところで素早く通路を飛び出し2体のスケルトンの頭をもぐ。不意を突かれた近接戦で吸血鬼に勝てるわけもなく、彼らはいとも容易く地面に崩れ落ちて二つの骨の山を作った。
だが吸血鬼の表情は依然として硬いままだ。
「成功、か? 罠じゃないよな……」
吸血鬼は注意深くあたりを見回して敵襲に備える。だがいくら待ってもダンジョンは静かなまま、新たなスケルトンの影も見えない。
吸血鬼は大きく息を吐いて胸をなで下ろす。
「はぁ、なんだか心臓に悪い。よくこんなお化け屋敷の様なダンジョンに入るな、冒険者……ん?」
吸血鬼はふと骨の山の脇に転がった武器に視線を向ける。一つは剣、もう一つは吸血鬼にとって今最も忌々しいであろう弓である。彼は憑りつかれたようにそれを見つめ、そして思い出したように口を開く。
「そうか、懐に潜り込まれたら弓を射ることはできない。ならこちらから潜り込んでやれば――」
彼は地面に転がる弓を踏みにじり、嫌らしい笑みを浮かべた。
それからの吸血鬼は「狩られる側」から「狩る側」へと変貌を遂げた。
積極的に迷路を歩き回ってスケルトンの側へ音もなく忍び寄り、背後から鮮やかにその首を刈り取るのだ。そもそも吸血鬼というのは人間に紛れて生活をし、夜な夜な人を襲う化け物。こういった殺り方は彼らの得意分野なのかもしれない。
武器や鎧を身につけないからこその静かで軽い身のこなしや目にも留まらぬ速さを発揮する瞬発力、そして的確に急所を狙うその鮮やかな攻撃はこの入り組んだ迷路で遺憾なく発揮された。
万一スケルトンに発見されても、迷路に逃げ込めばその足の速さですぐに撒くことができる。さらに彼を追いかけて迷路に入ってきたところを待ち伏せし、至近距離から撃つという手も使える。
近距離戦に持ち込めばほぼ負けることは無く、しかも不意を突くことができれば勝負は一瞬で決まる。
あれだけたくさんいたスケルトンはみるみるその数を減らし、ダンジョンのいたるところにバラされた骨が散乱していた。まさに死屍累々たる有様との形容がふさわしい。
吸血鬼は完全にスケルトンを「攻略」したのである。
「最初は戸惑ったがコツさえ掴めば簡単だな」
吸血鬼は地面に転がるスケルトンたちの残骸を蹴り飛ばし、できたスペースに腰を下ろす。これと言った怪我こそしていないものの、迷路を走り周ったおかげで彼の息は上がり、その表情からは濃い疲労感が窺える。普段ここまで長時間走り周る機会が吸血鬼にないためだろうか。
「スタミナの無さも吸血鬼の弱点かもね。ランニングでもすれば?」
吸血鬼は疲労感の滲む顔を歪め、無理矢理笑ってみせる。
「馬鹿言え、僕は短期決戦型だぞ。そんなのは必要ない」
「そう? でもまぁ、少なくとも今は必要だよね」
俺はゆっくりと、だが軽い足取りで近付いてくる足音を察してそちらへ視線を向ける。鎧や剣の擦れる金属音や骨のぶつかり合う軽快な音はしない。その足音もスケルトンにしては重量感がなく、まるで裸足で遊ぶ子供が出すような物である。
という事は、考えられる足音の主は唯一人。裸足でダンジョンをうろつくゾンビ少女、ゾンビちゃんである。
彼女はとうとう通路の向こうからその姿を現したが、特に隠れようともせず、かといって素早く襲いかかって来るでもなく、まるで鬼ごっこなどやっていないかのように涼しい顔でこちらへと向かってくる。大会が始まってから今まで一度も吸血鬼とエンカウントしていないためその体にキズは無く、吸血鬼とは違い疲労感を一切感じさせないエネルギーに溢れた表情をしている。
「エヘヘー、真打ちトージョー」
吸血鬼は壁に手を付いてふらりと立ち上がり、ゾンビちゃんに露骨に嫌そうな顔を向ける。
「くそっ……後半戦には少しキツい相手だな。逃げるか」
「逃ガサナイよ!」
ゾンビちゃんの言葉を合図に、すべての通路からスケルトンたちが吸血鬼を囲むようにしてその姿を現した。吸血鬼に接近を悟られないためか彼らは鎧を身に纏っておらず、その手にはしっかりと弓が構えられている。
「包囲されたか」
吸血鬼は険しい表情を浮かべてあたりを見回す。
もし一斉に弓が放たれれば吸血鬼とて無傷ではいられまい。致命傷を受けなかったとしても、今のスタミナ切れを起こした吸血鬼が鎧を脱いだスケルトンたちやゾンビちゃんを撒けるのか微妙なところである。
吸血鬼はポケットから懐中時計を取り出し、ちらりと眺めた。
「……時間はまだあるな。そちらの生き残りはあとどれくらいだ?」
その問いかけにスケルトンたちは何も答えずただうつむく。吸血鬼はスケルトンたちの様子を眺め、薄ら笑いを浮かべた。
「そうかそうか、もうこれだけか。我ながら殺したな」
彼の足元に転がる大量の骨、そして相手の神経を逆なでするような口ぶりはまるで悪役のそれだ。さすがにダンジョンボスなだけあり、得も言われぬ異様な威圧感を周囲に与えている。だが彼女にそんなものは通用しない。
「ナンカ疲れてる? ウンドウブソクじゃない、マラソンでもしたらー?」
「ゾンビちゃん俺と同じこと言ってる」
「わー、オソロイ?」
ゾンビちゃんはそう言って朗らかに笑う。空気を読めないのかあえて読んでいないのかは分からないが、彼女のこの子供の様な天真爛漫さは大きな武器と言えるだろう。
ペースを崩された吸血鬼は面白くなさそうに眉間に皺を寄せる。
「減らず口を叩くな。お前らを殺してサッサと休むとするさ」
「ヘー、ニゲないの?」
ゾンビちゃんはその大きな眼を見開き、瞳にやや挑発的な光を宿しながら吸血鬼を見つめる。吸血鬼もまた顎を上げ、傲慢さを滲ませながら小柄なゾンビちゃんを見下ろす。
「気が変わった。言ったろ、誰がボスか思い出させてやるってな。お前らの上司は僕だ」
「エー? 『ボス』ってダンジョンのイチバン出口に近いポジションにいるヒトのことでしょー? ラクそうでイイナァ、勝ったら私がボスヤッテモ良い?」
「おお……煽るねゾンビちゃん」
ゾンビちゃんは涼しい顔をして「エヘヘ」と笑った。
一方、吸血鬼はこめかみに青筋を浮かべて鬼のような表情を浮かべる。
「ほざけ三下! 二度とそんな口が利けないよう首を落として舌を引き抜いてやる」
「んー、舌戦ではゾンビちゃんの勝ちかな」
「うるさいぞレイス、茶々を入れるな!」
「ごめん」
俺はそう言って二人の邪魔にならないように、そして二人を見下ろせるよう天井近くまで浮上する。
最初に攻撃を仕掛けたのは吸血鬼であった。ゾンビちゃんとの舌戦で冷静さを欠いているらしく、怒りに身を任せたようにゾンビちゃんへ突っ込んでいく。さすがに速い――が、疲労からかいつもと比べると勢いが落ちているようだ。吸血鬼の最初の一撃は容易くゾンビちゃんに受け止められた。
「カルイ」
ゾンビちゃんは不敵な笑みを浮かべて吸血鬼の顔にカウンターパンチを放つ。ゾンビちゃんの拳は吸血鬼の頬を擦り、彼の背中の壁にめり込んだ。砂埃を立ててひび割れた壁を横目に、吸血鬼は蒼い顔で息をのむ。
「か、顔はやめろッ!」
「ヤダー」
ゾンビちゃんは悪戯っぽく笑いながらも執拗に吸血鬼の頭を狙う。
再生能力の高いアンデッドと対峙するときはその頭を狙うのが定石ではあるが、知り合いの顔に岩をも砕く拳を打ち込むというのはなかなか勇気のいることだ。死ぬことがないと分かってはいても、吸血鬼の顔をゾンビちゃんの拳が掠るたびにこちらまでドキドキさせられる。
「ほら吸血鬼頑張って! 俺にグロ死体見せないでよ」
「それは僕じゃなくコイツに言ってくれ……!」
「ヘーキヘーキ、ザクロみたいなモン」
ゾンビちゃんはそう言って容赦なく腕を振り回す。スピードはそこまででもないが、一撃でも当たれば致命傷となり得る重い攻撃だ。疲労が溜まり、その上慣れない狭い通路では吸血鬼の自慢のスピードもなかなか生かせず、今のところ防戦一方である。
しかも敵はゾンビちゃんだけではない。彼女の攻撃を避けることに集中していると、風を切り裂く音と共に矢の雨が吸血鬼を襲った。
「くっ……」
「アイタタ」
矢は吸血鬼のみならずゾンビちゃんの背中をも射抜く。絶えず動き回る中、吸血鬼のみを射抜くことは不可能だ。ゾンビちゃんの打たれ強さを考えれば多少矢が当たっても大丈夫と踏んだのかもしれないが、さすがに一瞬攻撃を加える手が緩んだ。吸血鬼はその一瞬の隙を見逃さなかった。
彼は懐から何かを取り出し、高く放り投げた。天井近くを漂っていた俺の目前にそれが迫る。
「……干し肉?」
ゾンビちゃんの眼はソレに釘付けになった。
小さな隙は致命的な隙へと変わり、吸血鬼の一撃はがら空きになったゾンビちゃんの腹を貫く。この前と同じ方法で同じように腹に風穴を開けられ、ゾンビちゃんは地面に倒れ込んだ。
「もー! 目先の肉に惑わされちゃダメって言ったでしょ!?」
「ヘヘー……」
ゾンビちゃんは血を吐きながら力なく笑う。腹には大きな穴が空き、背骨も砕かれているらしい。これではしばらく立つこともできないだろう。
残ったのは数体のスケルトンのみ。大将首をとられ、敗走しようと背中を見せるスケルトンたちを吸血鬼は自らに刺さった矢を投げて射殺す。敗走兵はあっという間に地面に転がる骨の山の一部と化した。
彼以外に立っている者は無く、ダンジョンは再び静寂に包まれた。
「ふふ……はははは! 見たかレイス、皆殺しだぞ。僕の勝ちだ!」
「時間内に勝負をつけるとは、想像以上だよ吸血鬼。ちょっとセコイ手は使ったけど」
「多勢に無勢だぞ、手は選んでられない。じゃあさっそく首を落として舌を引き抜こう」
不穏な空気を纏わせながらおもむろにゾンビちゃんに近付く吸血鬼。俺は慌てて彼の前に立ちはだかり、通路の先にある階段を指差す。
「ほ、ほら吸血鬼。そんなことより賞金だよ賞金。宝物庫に入れてあるんだ、取りに行こう」
「む……そうか、なかなか良い仕掛けだな。せっかくだから先に授与式を済ませてしまうか。それからでも遅くないしな」
吸血鬼はゾンビちゃんを見下ろし、名残惜しそうにしながらも俺の導きに従って階段を下りていく。俺達はいくつか階段を下り、スケルトンの屍を乗り越えて宝物庫前のフロアへとたどり着いた。
「鍵は開けてあるんだ、入って入って」
「悪くない気分だ、冒険者もこんな感じなのだろうな」
吸血鬼は光に吸い寄せられる虫のように豪華な飾りのついた重厚な宝物庫の扉へと向かい、手を伸ばす。指先が宝物庫の扉に触れんとするその瞬間、吸血鬼の姿が「消えた」。
「ぐあっ……」
鈍い音と短い悲鳴が俺の作戦の成功を告げた。
吸血鬼が先ほどまで立っていた宝物庫前の地面にはぽっかりと大きな穴が開いている。恐る恐る穴を見下ろすと底に設置された剣により串刺しにされた吸血鬼の姿が目に入った。彼は自分の置かれた状況を理解できていないらしく、キョトンとした表情で俺を見上げる。
「えっ……なんだ、これ?」
自分の身体を貫く剣と俺の顔を交互に見比べ、吸血鬼が呟いた。
俺は穴の上から吸血鬼を見下ろして言う。
「吸血鬼の弱点は油断しちゃうとこだよね」
「は……?」
「言ったじゃん、『鬼は吸血鬼以外のアンデッド全員』って。俺を仲間外れにしないでよ」
「なんだそれ……君も鬼ってわけか。主催者のくせに」
「あはは。他の鬼が倒すか時間終了まで戦ってればこんな落とし穴使う気なかったんだけどね。あんまり圧勝しちゃうと吸血鬼調子に乗るでしょ?」
吸血鬼は悔しそうに血に濡れた唇を噛む。
「ぐっ……なんて卑劣な男だ」
「ごめんごめん。でも油断した吸血鬼が悪いんだよ。まだ制限時間内なんだから。最後まで……いや、最後の最後こそ用心しないと。それから、どんな非力な相手にでも足元をすくわれる可能性があるって事を身を持って知って欲しかったんだ」
吸血鬼は自虐的な笑みを浮かべ、血反吐と共に吐き捨てるようにして言う。
「ああ、十分すぎるほど知ったよ。今後は中立の立場を装って近付いてくる透けた男には気を付けるとしよう」