28話 再会
「ねぇフリシス。足、大丈夫? そんなに辛いなら一度休む?」
死臭が酷く漂っていた場所から立ち去った俺達は考えなしに前へ前へと歩を進めていた。
だが、時間が過ぎれば過ぎる程足の痛みが増しているのだろう。奥歯を噛みしめながら俺の肩に右手を回して歩くフリシスは苦悶の表情が浮かんでおり、弱音を吐いていないのだが彼女は俺から見ても酷く辛そうだった。
「いや……大丈夫。休むよりもレイラさんを早く見つける方が私としてはありが……痛っ!! ありがたいよ…… 」
レイラとはギャズとフリシスのパーティーメンバーで治療師兼、魔法使いなんだとか。
彼女曰く、レイラに治癒魔法を掛けてもらう事が出来れば直ぐに右足の腫れは治まるらしい。
時計を持っていなかったので正確な時間は知り得ないのだが、恐らく歩き始めて1時間は経っていただろう。そして、照明役として黒焔を低出力で発動させていたが、もし再び魔物が襲ってきた時に俺の魔力が切れてしまっていると2人とも御陀仏だ、という事でフリシスが代わりに照明代わりに周囲に小さな火の玉のような物を浮遊させていた。
「そ、そっか……本当にどうしようも無く辛くなったら言ってね? 気休め程度にしかならないけど時間を掛ければ氷を生成する事も出来るから……それで冷やして……」
「ふふっ、大丈夫、大丈夫。それにしてもユウは万能だねぇ……私は火の魔法しか使えないからユウが羨ましいよ」
俺は空いていた右の手で氷魔法を使い、冷気のような物を漂わせているとフリシスがそれを制止し、心配を掛けないようにする為か笑みを浮かばせながら返答する。
「ま、誰でも何か1つは取り柄が無いとね……。僕は偶々それが魔法だったんじゃないかな? ほら、フリシスは魔法が無くても美人さんだし気に病む必要は無いと思うけどなぁ」
齢が20に満ちていないであろうフリシスはお世辞抜きで美人だった。
純銀をそのまま溶かしたかのような銀色の髪が後ろ首を隠し、背中にまで垂れており、少々目が吊り目がちであったが目鼻立ちが端正に整った容姿をしていた彼女に言い寄る男など、数多だろう。
「ははっ、その歳でお世辞を言うなんてね……こりゃ、将来有望な女誑しになりそうだ。あははははは!!」
発言に対して盛大に笑うフリシスとは対照的に何か納得がいかない、といった表情を浮かべながら俺は「お世辞じゃ無いんだけどなぁ」と呟くがその呟きは彼女の笑い声に掻き消される。
だがそれでも先程まで心底しんどそうな顔をしていたフリシスが元気になったし、まあいいかと思い、彼女の楽しそうな表情を前に水を差すのは止めようと判断した。
そしてそんな談笑をしながら歩く事更に1時間。
俺達の周囲を照らす火の玉では無い炎のような物が双眸に映り、目を凝らして見ると
地面に腰を下ろし、神妙な面持ちで話し合うギャズ達の姿がそこにはあった。