24話 無言の旅
荷台のような場所では……
予想通り、無言だった。
誰も喋らず、超気まずかった。
あ、あのー……なんて声を掛けても返ってくるのは仏頂面だけだ。
ぶっちゃけ、もう俺悟りでも開けんじゃね? くらいには気不味すぎて頭が逝っていた。
ギャズのパーティーメンバーさん達は武器を磨いたりしていたが俺は何もする事がなかった。
何せ、武器は買ったばかりだったからな。
たまにギャズが話し掛けてくれたりするのだが焼け石に水だった。
しかもギャズも話のネタが無いのか「いやー、楽しみだなぁ」しか言わない。3度目以降はもう皆反応しなくなり、気不味さが一層強くなった。
そしてそんな無言タイムが1時間程度たった頃だろうか、初めてギャズのパーティーメンバーだった男が話し掛けてきた。
「おい坊主、リザードマンの巣にそろそろ到着するんだが足を引っ張るくらいなら後ろで隠れとけよ? 邪魔だから」
威圧するような口調で彼は口を開いたが、女の人達はなにも言わないけどそう思っていないのかな? などと思い視線を移してみるが他の女性2人も同じ意見なようで、目で同意していた。
うはぁ、とことん嫌われまくってるな俺。目のやり場がねぇよ。
などと思い嘆息しながらも、俺は馬車についていた窓に視線を移した。
先程までは縮こまっていたので窓を見ていなかったが、そこは
地峡だった。
馬車は細い道を進んでおり、直ぐ近くは底が見えない崖となっていた。
高所恐怖症なら冷や汗ものだろう。
あれ? ところでここは何て場所? と気になったのだが尋ねれる人がいなかった。
ギャズの好意は凄くありがたかったが、今日がギャズとパーティーを組むのが最初で最後になりそうだなぁ、と景色を無言で眺めながら思っていると急にギャズの口から悲鳴染みた声が発せられた。
直後、俺は何事だ!? と思い、慌てて表情を引き締めながら御者の場所にまで向かおうとするがギャズが叫んだ事ですぐに理由が判明した。
「嘘だろッ!? おい!! お前ら今すぐ降りて逃げろ!! 火竜が飛んで来やがった!!」
それを聞くと同時に俺達は一斉に窓を開けるなりして、逃げようと試みるが
GYAAAAAAAAAA!!
近辺一帯に響き渡る程に大声量の咆哮によって馬車を引いていた馬が恐れおののいた為、急に足を止めてしまう。
その結果、俺達は前へとなだれ込む事となり逃げることが叶わなかった。
「糞がッ!! ブレスだ!! どうにかして逃げろお前ら!!」
そして咆哮の直後、ギャズの口から声が発せられるが注意虚しく火竜の口から吐き出されたブレスが乗っていた馬車に直撃し、燃え上がると同時に大破した。
そして俺は、武器屋にて手に入れた紅華を手に身を崖へと投げ出された。