出動4
ど、どどうして佐伯お姉様と橘お姉様がここに!? お堅いご実家生まれのお姉様は、意外とこういう所が新鮮みたいでお好きですけど、まさかお二人もなんですか!?
「ここで会ったのも何かの縁と言う奴だ。相席してもいいかい?」
「お姉様どうでしょうか!?」
僕はお姉様のお尻に敷かれてるので何とも言えません! でへ。でへへ。
「夫婦水入らず、と言いたいけど、たまにはいいかしら」
「それじゃあ失礼するよ」
俺は席を立っていたのでお姉様の隣に座り、お二人は前の席に一緒に座られ、特に何も仰っていない橘お姉様の方は、別にどうでもいいといった感じのようだ。
「いやあ貴明君、一年の三人姫に囲まれてるところを、一般入学の子達に見られたら大事になるよ」
「あら、そんな風に呼ばれてるのね。よかったわねあなた。ふふ」
すいません。一般入学の人達に見られなくても、僕の血圧は今大事になってまして、多分上が200で下が200くらいなんですよ。
そしてお姉様が笑っているこの三人姫と言う称号、俺もチラッと聞いた事がある。同学年どころか全学年合わせても飛びぬけて美しいお姉様達は、一般入学の生徒達から三人姫と呼ばれている様だ。が、何故一般入学の組だけで呼ばれているかと言うと、お姉様にビビりまくっている推薦組は、そこにお姉様をカウントしていないため、その呼称は使われていないのだ。いや、それだけではない。佐伯お姉様は成り上がり、橘お姉様は家同士の旨みが無い天涯孤独と異能学園の名家サロンは見なしているため、このお三方は学園の推薦組全体から少し浮いているのだ。呪うぞコラ。
「栞は何を注文する?」
「ハンバーグでいいわ。ファミレスなんだもの」
「うーん……ボクもそうしようかな」
メニューを広げている橘お姉様に、橘お姉様はファミレスのメニューなんかどれも変わらないでしょと返している。
それにしても奇遇ですね。僕もハンバーグにしようと思ってたんですよ。
「お決まりでしょうか?」
「ハンバーグで」
お姉様方がハンバーグを注文している。よし、俺もだ。
「お子様ランチで」
あ!?
◆
わーいおこさまらんちらー
「彼も変わってるね」
「ふふ。そこも可愛いのよ」
はっ!? 俺は正気に戻った!
やべえよやべえよ。注文した時お姉様以外、ウエイトレスさんも含めて、え? って感じになってたよ。このご飯の上に突き刺さった旗が悪いんだ。俺は悪くない。そうだ落ち着こう。水を飲むんだ。
「ところで異の剣に行ってた時、二人はどこにいたんだい?」
「ごほっ!?」
「あら、何のことかしら?」
最近妙にむせる事が多い! ってそれどころじゃない! 一体どうして佐伯お姉様にバレてしまったんだ!?
「いやあ、見学中二人がそれはもう大人しかったからさ」
「ぼぼぼ僕達普段から大人しいと思いましゅ!」
これは本当間違いない。なにせ主席たる俺とお姉様なのだ。そりゃもう大人しいに決まっている。つまりコピー式神君たちは完璧に仕事をこなしたという事だ。
「ほんとーう?」
「本当でしゅ!」
ああ佐伯お姉様! その獲物を見つけた猫みたいなニヤニヤ笑いとっても素敵です! それはそうと、どうしてそんな顔で僕を見るんですか!?
「うふふ。ちょっとカバラを見に行ってたのよ」
「え!? カバラの聖者達がいたのかい!?」
「なんですって?」
お姉さまバラすんですか!? 色々と流石です!
それはそうと、流石にこの答えはお二人とも予想外だったようだ。なにせ対外的には来月来るかもねって話になっているのに、あの見学しに行った日にカバラの聖者達も来ていたとは予想外なのも当然だろう。
「ひょっとして世鬼の訓練符と?」
「ええ。中々見応えあったわよ」
天使の羽を生やして飛び回る聖者達と天使の軍団。相対するは八首八頭、その全てがまさに世界の敵。そんな怪獣映画も真っ青な取っ組み合いは、確かに見応えたっぷりだった。
「どうだったの?」
「カバラ? 世鬼?」
「両方」
おっと、橘お姉様が興味津々だ。橘お姉様は単独者を目指しているため、こういった強者の情報には敏感なのだろう。
「どっちももう少し頑張りましょう。かしら」
「あなたの基準じゃなくてよ」
「まあカバラの方は、学園長並にはあるんじゃないかしら。世鬼の方は、カバラが10人いたらほぼ互角ね」
蛇君もカバラも、お姉様基準の通知簿では三角のようだ。前回の戦いではお姉様単独でも勝ってたと思われるのに、その上式神12体まで加勢していたのだ。ボコボコもボコである。それにただの式神と思う事なかれ、お姉様の髪を編んだ式符に俺のタールで文字を書いたのだ。一体一体が特鬼でも最上位中の最上位。タイマンならカバラの聖者でも負けるであろう強さなのだ。それが12体。まあ、オーバーキルというやつである。
まあ蛇君は全力全開のリミッター解除、人類を守護らなければならぬ状態なら、お姉様の本気モードプラス全力稼働の式神12体と勝負できると思うんだが……去年なら式神があっても蛇君が勝ったはず。でも全く俺も関係なく、今年にお姉様は完成されたからなあ。
あ、このからあげおいしい。
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