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放課後デート3

 人生何度目かの命の危機を乗り越えて、まだまだお姉様との放課後デートは続いている。ちなみに一番の危機はお姉様と初めてごっほん!


「全然気にしてなかったけど、この学園方位を合わせてるわね。平安京みたい」


「ですねー」


 単純な四角形をしている我が帝国だが、お姉様の言う通りきっちり東西南北に合わせて作られており、まるで平安京の様に、陰陽道や風水の考え方が取り入れられている様だ。だが風水はあったとしても、あの学園長には風流なんて言葉はない。あるのは無粋な筋肉だけだ。やはり俺が皇帝として、その上にお姉様を頂ければ完璧だ。


「基礎的な守りをそれに頼ってるんでしょうけど、ふふ、三流の仕事ね」


 ほああああ! 僕、お姉様のその鼻で笑う感じにゾクゾクしちゃいました!


 ふう……。


 普段は面倒だからと、術として編んでさえいない霊力の塊で物事を片付けるお姉様だが、ご実家が名家も名家だったため、そういう系統には随分精通されている。そのお姉様の評価では、この学園の基礎設計をした奴は落第らしい。


「頑張って四神相応にしたかったんでしょうけど形だけね。ま、色々学内にあるから霊脈を整えるのが難しかったのは分かるけれど」


 まあでも一般的には十分仕事した方なのだろう。何と言ってもお姉様は特別なのだ!


「こう見ると、防御施設としてはダメダメね。南の正面は誰かさんが悪戯したから大丈夫そうだけど」


「ななな、なんの事でしょうか!?」


 南にあるのは、観光スポットの金剛力士像だけですよお姉様! もうその手のマニアの方々が写真撮ってたんで間違いないです! いやあ国宝そっくりですからね!


「とりあえず、四神の方をちゃんとしておきましょうか」


「はいお姉様!」


 いやあ楽しみだなあ、お姉様との秘密の遊びだ。でへ、でへへ。


「あれ合体したりするの?」


「はいお姉様!」


 まずは四神の基盤ですかね!


 ◆


「まずはここね」


「結構がっつり掘ってますね」


 やって来ました東の果て、じゃなかった。我が帝国東領域。お姉様が立ち止まった場所の結構下から、何らかの霊的エネルギーを感じる。多分場所からして青龍の基盤だな。


「無理矢理引っ張り出しましょう」


「お姉様のお手を煩わせません!」


 お姉様が霊力で引っ張り上げようとしていたけれど、そんな些事は僕にお任せください! とっても恥ずかしいですけど……。


 右よし左よし360度よし!


 プチ第一形態変身!


 おいそこの基盤! そっちは不浄になったからこっちに来い! 境目は俺だからな!


 解除!


「引っ張り出しました!」


「うふふ。ご苦労様」


「でへへへ」


 ちょっとだけ、ちょーっとだけ第一形態に変身して、青龍の基盤があった地下を不浄な場所、神聖な場所を地上にすることで、神聖な物に区分されているそれを地下から引っ張り出した。


 出て来たのは竜が彫られた厚い銅版なのだが……お姉様の言う通り出来がいまいちだ。これ普鬼程度しか防げねえじゃん。ブラックタール帝国の警戒設備としてはダメだな。守る側が有利なんだから、最低限ぶっ殺すと覚悟決めた猿君を防いでもらわないと。僕知ってる! 守る側が3倍有利なんでしょ! なお質。


「はあ、やっぱりダメね。あなた、代わりに黒いの出して頂戴な」


「おおおおお姉様まだ夕方ですよ!? しかも学園でだなんて!?」


「ほらいいでしょ? ね、は、や、く」


「はいいいいいい!」


 右よし! 左よし! 全方位360度よし! もう一度確認! よし! そりゃ!


「ありがとうあなた」


「滅相もございません!」


 恥ずかしいいいいいい!


 体全体からどろりと落ちたタールが急激に固まり、よりにもよってお姉様がそれを霊力でつついているのだ。世に憤死した偉人はあれど、羞恥死した奴はおるまい。今まさに俺がその第一号になりそうだ。


「はい完成」


「もう!? 流石ですお姉様!」


 俺がそんな恥ずかしさで悶え苦しんでいる中、お姉様はタールの表面にそれはもう見事な青龍の姿を描き切っていた。


「それじゃあ埋めて頂戴な」


「はい!」


 変身! やっぱり恥ずかしいい!


 あ、こっちは不浄になったんで、地下の方にお願いします。え? このタールがそもそも不浄なんだけどって? 仰る通りですね。じゃあ、神聖のままなんで地下によろしくお願いします。はいどうも。


 解除!


 あ、お仕事は来るもの拒んでぶち殺して、去る者追いかけてぶち殺して下さい。怪しいなーって奴限定で。勤務時間なんですけど、警備のお仕事なんで24時間365日お願いします。え? 違います。軽微じゃなく警備です。はい。ずっとここでです。交代要員? やだなあ、東の守りと言えば青龍じゃないっすか。他には誰もいませんよ。同僚はこれからできると思いますけど、皆さんそれぞれ場所が違うんで。じゃあお願いしますよ!


「それじゃああと3か所ね」


「はいお姉様!」


 残りは虎、亀、鳥か。そうだ、帰りは焼き鳥を買って帰ろう。スーパーのじゃなくて、これ何十年モノですかね?ってタレにつけるちゃんとした焼き鳥屋さんのだ。


 あれ、ちょっと待てよ!? 後3か所って事は、3回黒いの出すって事なんじゃ!?


 は、恥ずかしいいいいいいいいい!

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