邪神的善意
「これが言ってたやつね。あまり審美眼とかないけれど、確かに見事ね」
「でしょお姉様! 写真撮りますか?」
お姉様にここまで言わせるとは、流石は本物そっくりに作れる人達だ。もっと色々作って欲しかったんだけどなあ。しゃあない、他の人呼んで100倍速で頑張ってもらうか!
「あら、私は像よりあなたと写真撮りたいわ」
「お、お姉様!」
撮りましょう今すぐ撮りましょう!
「四葉!」
お姉様とのひと時を邪魔するとは何奴!?
「ふ、藤宮君!?」
って昨日一緒に学園を抜け出した不良仲間の藤宮君じゃないか! 目がちょっと怖いぞ藤宮君!
「ありがとう四葉! 母さんが目を覚ました!」
「へへっ、どうって事はないさ」
それより頭を上げて欲しい。周りの生徒の皆さんが、なんだなんだと僕らを見てるよ。でもお母さんが目を覚ましたのは良かったよかった。たっぷり母親孝行すると言い。まあ、俺も母親孝行はしてやってもいいぞお袋!
「だがちゃんと礼も言ってないのに帰るのは止めてくれ。 今日の放課後空いてるか?」
一体僕をどこに連れて行くんだい藤宮君!? 僕にはお姉さまが!
冗談はさておき、このまま空いていると答えようものなら、ハイソなお宅に連れられて、ろくに知らないテーブルマナーまで求められてしまうだろう。俺の第六感がそう囁いている。つまり田舎者丸出し。それはいけない。
という訳で邪神流説得電波再び! 藤宮君は納得する!
「実は一子相伝にして、究極秘伝の技を使ってね。あまり大事にしたくないんだ。だからお父さんとお母さんには、なんとか誤魔化してくれると嬉しいな」
「そ、そうなのか? 分かった。だが恩はちゃんと覚えてるからな!」
へっ、ちょろいぜ。これで田舎者丸出しの恥は掻かなくて済んだ。
「気にしないでいいよ。僕達友達じゃないか!」
「よ、四葉!」
は、初めて声を掛けてくれたクラスメイトだからって調子乗んないでよね! うううううう嬉しかったですよ! 田舎の過疎学校にいたせいで、友達も数人なんだから!
だがそいつらに、美人な奥さんと結婚しました、ざまあみろってメールを送っても、嘘乙とか、可愛そうに……とかしか返ってきません。なんて友達甲斐のある連中なんだ。見てろよ、来年の年賀状はお姉様に頼み込んで、僕達私達結婚しましたってやつを送ってやるからな。
「あ、藤宮君、僕とお姉様の写真撮ってくれない?」
「もう、恥ずかしいじゃない」
「あ、ああ」
それはそうとして、お姉様との写真を撮ってください。でも流石のお姉様も、他の人に写真を撮ってもらうのは恥ずかしいみたいだ。可愛い! あいてっ。でへへ。
◆
「おはよう諸君。もう知っているかもしれないが、アメリカ校の学友達が、呪詛型の大鬼を討伐するという活躍をした。それに伴い、我が校への問い合わせが殺到しており、来校の予定も既に組まれているため、海外の生徒の姿を見る事が多くなるはずだ。しかし見ているという事は見られている事でもある。特に推薦組は、その学年の代表としてみられるため、改めて気を引き締めて欲しい」
おお! 既に予定も出来ているとは! やったね蜘蛛君! 世界中から人気者だよ! あれ? 蜘蛛君もしもーし? おかしいな。邪神通信電波の不具合かな? 回線は繋がってる筈なんだけど……。
あ、蜘蛛君ってどれくらい人気なのかな? 事務室に邪神イヤー発動!
プルルルルル
プルルルルルルルル
『また掛かって来たぞ!』
『はい、はい。申し訳ありません。その前後も既に他校が……』
『はいこちら異能学園の』
『はい、アメリカ校が仰っていたのは我が校で間違いありません』
『通知音でノイローゼになりそうだ!』
邪神イヤー終了!
いやあ、人気者だね! 蜘蛛君さっきの聞こえてた? そりゃもう凄い電話の音だったよ! ……うーんやっぱり返答がない。おかしいな。
「もう一つ伝達事項がある。現在バチカンが非常に混乱しているため、留学や研修等を考えている者がいれば私の方まで来て欲しい。以上だ」
はえー。どうしてバチカンが混乱しているんだー。あー。お盆が世界中で起こったからかー。そうだよねー。あんな事できるなんて一神教に決まってるからなー。きっと電話が鳴りやまないんだろうなー。大変だなー。
ちょっと聞くだけ。聞くだけならバチカンにもバレない。邪神イヤー発動!
プルルルルルルルル
プルルルルルル
プルルルルルルルルルルルルルルル
プルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル
邪神イヤー終了! 以上!
やべえええええ! 電話の通知音しか聞こえねえじゃねえか! 人の声なんて聞こえなかったぞ!? やべえよやべえよ……何がとは言わんけど、バレたら一神教総出でボコられるよ! こりゃ秘密は墓の中までもってこ。じゃないと一神教圏から追放されてしまう。よかった日本生まれで。八百万の中に俺も親父も入れてくれるだろ。
今日もいい天気だなー。
◆
「今日もいい天気だねー!」
「そうですねあなた。貴明はうまくやってるでしょうか?」
「大丈夫大丈夫! 小夜子ちゃんもいるし!」
「小夜子ちゃんがいるなら安心ですね。あの子ちょっとマイペース過ぎますから」
「はっはっは! それに貴明はあれだけ優しい子なんだ! 世界の危険に備えて、世界の為に頑張ってるなんて、親として鼻が高いよ!」
「そうですね。おほほほほ」
「はっはっはっは!」
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