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17.レオ、髪を譲る(後)

「オスカー! オスカー、オスカー、オスカー!」


 顔を真っ赤にして、第二食堂に駆け込んできたのは誰あろう、学院きってのお調子者、ロルフ・クヴァンツだった。


「うるさい。叫ばなくても聞こえる」

「だって! これが叫ばずにいられるか? いや、いられない! いられないとも!」


 ロルフの興奮は一向に鎮まらない。

 それどころか、彼は走って呼吸を荒げたまま、オスカーの両手を取るとぶんぶん振りまわした。


「奇跡だ! 奇跡が起こったんだ! 母さんが――」

「ロルフ」


 オスカーが鋭く呼ぶと、ロルフはようやくはっとして声を潜めた。


「母さんが、歩けるようになったんだ……!」


 抑えた声には、その分凝縮された興奮がにじみでている。その内容を聞き、オスカーも「そうか」と口許を緩めた。


 ロルフは「ああ」と堪え切れないように息を吐くと、頭を振って心を静めた。


「オスカーがレオノーラちゃんの髪を持ってきたと言った時には、てっきり冗談かと思ったけど……冗談なんてものか、素晴らしい、魔力に満ち満ちた髪だったよ。たった一筋を媒介にするだけで、みるみる母さんの顔色がよくなっていった」

「だろうな。あれだけ重篤だったカミラの病も、分けてもらった半分の量で事足りた」

「カミラちゃんは、その後?」

「元気いっぱいだ。昨日なんて、町に出かけるための新しいドレスを親父にねだってたらしい」


 努めて呆れた態を装ってはいるが、その声には隠しようのない喜びと愛しさが潜んでいた。

 ロルフも素直に「そっか」と頷き、それに寄り添う。


 オスカーがあの日、ハーラルトのもとを訪れていたのは、――レオが想像していたような理由では勿論なく――病に冒された妹のカミラを助けてもらうためだった。


 ロルフの母も掛かっていたそれは、全身の血の流れが徐々に滞ってしまい、緩やかに死に至る「精霊の呪い」とも渾名される病だ。

 古くから存在しているにもかかわらず原因がわからないその病は、医者も打つ手がないためか、次第に「悪徳の者が報いを受けて掛かる病気」と噂されるようになり、患者を抱える家族は、それを秘匿するのが常だった。


 ただ、迷信の類を信じないオスカーの父親の方針で、ベルンシュタイン家はそれを取りたてて隠すことをせず、方々で治療法を探っていた。

 そしてその方法の一つが、オスカーのヴァイツゼッカー学院入学だったのである。


 (いにしえ)より魔力は、精霊の定めた理すらも乗り越え、自在に因果を操ることで知られていた。

 高名な医師や、徳の高い教会導師をもってしても癒せなかった病も、皇族や高位貴族の持つ魔力を使えば、あるいは回復が見込めるのではないかと踏んだのだ。


 オスカーは入学当初から、潤沢な魔力を持つアルベルトに接触し、事情を話して助力を願い出た。

 しかし、慈愛深いと言われる第一皇子は、そのオスカーたっての願いを、けんもほろろに断ったのである。

 それは、オスカーが懇願しようが、財力をちらつかせようが、恐喝まがいのことをしても変わらなかった。


 魔力は皇族の、権力の源泉。

 それをやすやすと他人に渡すことはしないという、その理屈はオスカーとてわからないではない。媒介として魔力保持者の体の一部が必要となるため、「たかだか庶民のために」体を傷つけたくないという皇族の矜持も理解はできる。

 しかし、最愛の妹を救えない現状が、オスカーを追い詰めた。そしてまた、アルベルトが断る時に決まって口にする、「あなたのためでもある」といった台詞や、自分もまた悩んでいるという態度が、オスカーの怒りを掻きたてたのだ。


 魔力を得られない憤りは、やがて諦めとともに恨みとなってオスカーの心に巣食った。

 そして、学院内でも優秀な頭脳と強い発言力を持つ彼が反皇族を掲げると、同じような事情を持つロルフのような下級貴族や、在野の精神に憧れる庶民出身の生徒たちが、次第に群れ集い、一大勢力を形成するようになったのである。


 無欲と慈愛を掲げる教会のハーラルト導師は、対立しがちな学院内の情勢を憂え、何くれとなくオスカーの相談に乗ってくれており、時折精霊力を分け与えてくれることもあった。

 魔力に比べれば効力は弱いものの、精霊力もまた癒しの作用を持つ。オスカーはそれを求め、教会に通っていたのであった。


 しかし、とオスカーは思う。


 真実を見通す紫瞳の少女が現れてから、そんな状況は一変した。


 彼女はなんの躊躇いもなく美しい黒髪を断ち切り、それを分け与えたのだ。


 一筋であってさえ万の治療薬に相当する価値のあると言われる、魔力を帯びたその髪は、オスカーによって素早く実家に送り届けられ、すぐに効力を示した。

 魔術の心得のある医師がそれを媒介に祈祷したところ、みるみる内に、滞っていたカミラの血が解け、流れ出したのである。


 オスカーは歓喜し、驚愕しながらも、残った髪を親友のロルフに送り、その結果は先程の彼の発言の通りである。


 そんな素晴らしい奇跡を引き起こした髪に対して、レオノーラが求めた対価は、ちょっとしたお忍びの手伝い。

 下町に足を伸ばした後は学院に戻ってくるということだったから、恐らく、息の詰まる学院を抜け出して、故郷で知人にでも会ってくるのだろう。


 秘密裏に学院を抜け出すことなど、オスカーにとっては日常茶飯事だったが、真面目なレオノーラにとっては大冒険であるようで、こちらを見上げる瞳には懇願の色すらあった。


 惜しみなく与え、受取ることにまったく不慣れ。


 近頃学院内で囁かれだしている「無欲の聖女」というあだ名は、実に端的に彼女のことを表していると思った。


(彼女――レオノーラは、自分と俺が似ていると言った。大切なものを失いたくない気持ちがわかる、とも)


 早くに母を失った境遇と、病身の妹を持つオスカーを重ねたのであろうか。


(同情しただけで、魔力の詰まった、それも女の命とも言える髪を、ああもやすやすと差し出すことが普通できるか。そもそも、もし俺が身内を傷つけられたら、それを恨まずに、人に救いの手を差し出すことなんてできるか――?)


 考えれば考えるほど、レオノーラという少女は、どこまでも高潔で慈愛深い精神の持ち主と認めざるをえなかった。


 同じことを考えていたらしいロルフが、ぽつりと呟く。


「ほんと、聖女のような子だよね」

「……ああ」


 普段皮肉ばかりを口にするオスカーも、こればかりは素直に頷いた。


「ただ……僕たちの他にも、魔力がないせいで苦しんでいる子達は大勢いる。今回は量の問題で僕たち二人だけに話を留めておいたけど、こういった話は必ず露呈するからね。早晩、彼女に救いを求めて、グループが揺れるかもしれない」


 ベルンシュタイン一派の参謀役を受け持つロルフは、一方で冷静に現状を分析した。


「そうだろうな」

「どうするの、オスカー?」


 狐のようなロルフの瞳がきらりと光った。


「恩人のレオノーラちゃんを守る? それとも、グループのリーダーとして、彼女から搾取し続ける?」

「……は。相変わらず、おまえは言葉の選び方がえげつない」


 オスカーは広い肩を軽く竦めると、テーブルの上で腕を組み、組んだ手の上に鼻を埋めた。


「……魔力とて無尽蔵にあるわけではないし、女に何度も髪を切らせるなど、卑劣極まりない。だが、……相手の優しさに付け込むわけではないが、彼女なら、あるいは――」

「――あるいは大人しく髪を奪われてくれるかもしれないと?」


 不意に、氷のような声が降ってきた。


 獣のようにしなやかなオスカーの体が、さっと起き上がって相手の姿を捉える。


 そこに立っていたのは、誰あろう、帝国第一皇子、アルベルトであった。

 美しい白皙の顔に、これまで見たこともないような険しい表情を浮かべている。


「……これはこれは。こんな場所に、皇子殿下がどのような御用向きで?」


 皮肉気に尋ねてみせたが、オスカーにとっては重要な質問であった。

 彼が帝国第一皇子としての権限を持ってこの場に居るというつもりなら、相応に慎重な態度を取らなくてはならない。


「……下級生を庇護すべき生徒会長として。また、妹のように思っている少女を傷つけられた兄として、あなたを非難しに来ました」


 つまり、すぐにでも自分を処罰するつもりはない。


 話し合いの余地はあると見て、オスカーはゆっくりと立ち上がった。自分が何をしたかの自覚はある分、アルベルトの激怒も想定の範囲内だ。


「非難? それは穏やかでない。今度は一体どんな言いがかりをつけに来たんだ?」

「心当たりがないとは言わせません」


 アルベルトは切り捨てるように言った。


 そう、学院内では常に微笑みを絶やさず、穏やかな顔を見せている皇子であるが、その実彼が、冷徹な精神の持ち主であることをオスカーは知っていた。

 帝国の威光をその身に背負う肩書は、伊達ではないのだ。

 現に、普段柔らかな口調に、ほんの一粒冷たい怒りが滲むだけで、ロルフが迫力に圧されてたじろいでいるのが見て取れた。


「……二日前、レオノーラ・フォン・ハーケンベルグが突然授業を休みました。心配した僕の妹が見舞いに行っても、従者が頑として中に入れなかった。その理由は次の日に分かりましたよ」


 実際には、断髪して部屋に戻ってきたレオはピンピンしていたのだが、主人のその姿を目の当たりにしたカイの方が、恐慌をきたして倒れてしまったのである。

 翌日になって、早速肩のあたりまで伸びていた髪を見てようやくカイが正気に返ったため、レオも再び登校することができたのだが、それを知る人物はいなかった。


 アルベルトは声を潜め、囁くように告げた。


「彼女の髪は短く切られていた」


 周囲に聞こえないように配慮するのは、それだけ貴族令嬢にとって短髪というのが不名誉なことだからだろう。

 下町育ちのレオはまったく気にしていなかったが、貴族社会において髪の短い女性というのは、俗世を離れた修道女か犯罪者、あるいは髪を売るほど困窮した者くらいなものなのだ。


「……それで? その卑劣な髪切り犯は俺だと、彼女はあんたに泣き付いてきたわけか?」


 アルベルトは音が鳴りそうなほど鋭くオスカーを睨みつけ、押し殺した声で答えた。


「……いいえ。事情を尋ねても、彼女は最初答えませんでした。ちょっと転んだだけだ、などと言って」

「…………」


 少女のすっとぼけた誤魔化し方に、さすがにオスカーも沈黙した。

 転んだというのは、例えばいじめに遭って殴られたりした時の常套句だが、その状況でそれは無いだろう。


「僕もむきになりましてね。少々強引な方法で聞き出さざるを得ませんでしたが、かわいそうに彼女は、青ざめながらも『相手の名誉に関わる話だから、詳しくは言えない』と、最後まで口を閉ざしたままでしたよ」

「……彼女らしい」


 恐らく病の噂が広まることに配慮してくれたのであろう少女の優しさを思い、オスカーは口許を緩めた。


 もちろんレオとしては、ハゲ問題を隠匿し、できればその後も細く長くオスカーにたかろうとしていたに過ぎない。

 しかし、それをアルベルトに「オスカーを庇っている」と思い込まれ、再度壁ドンの恐怖に晒され、青褪める羽目になったのであった。


「先程の話を聞くに、彼女の髪を切ったのはあなたに間違いありませんね?」


 アルベルトは、塑像のように整った顔に、冷えた怒りを浮かべて尋ねた。

 実際、腕の中に囲った少女が、髪を解き細い首を晒した時、彼は我を失いそうになるほどの憤りを覚えたのだ。


「教えてください、先輩。なぜ、そんなことをしたのですか。何の罪もない彼女に」


 答えによっては、とアルベルトは呟いた。


「僕はあなたのことを許さない」

「――穏やかでないな。見ろ」


 オスカーは顎をしゃくってロルフを指した。


「おまえの迫力に、すっかりみんなちびってやがる」

「ちび……っ! いや、さすがにちびってはないけど、オスカー! だって……!」


 怖い。


 そう、精霊かと思うほどの美しい顔に、抜き身の刀のような怒気を宿して見つめられると、とにかく死んで詫びねばならないような心持ちにさせられるのである。

 直接やり取りに加わっていない周囲も怒りの余波をくらい、第二食堂一帯は、まるで大氷雪地帯の様相を呈していた。


「……まあ、これでおまえの怒りが収まるとは思わないが、俺は彼女を腹いせに傷つけようとしたわけではない」

「へえ?」

「……妹のことを知ったレオノーラが、自ら髪を譲ってくれたんだ」


 妹の単語が出た途端、アルベルトの険しかっただけの表情に、躊躇の色が混ざった。


「たしか……カミラと言いましたね」

「は、覚えていてくれたとは光栄だな。そう、おまえがいとも簡単に見殺しにしてくれた、俺の可愛いカミラだ」

「……見殺しになど。僕はただ、もう少し時間をくれと言ったはずです」


 歯切れ悪く答えた皇子に、オスカーは「ふざけるな!」と机を叩いた。


「俺は病のことも説明したはずだ、妹には時間が無いとな。それを待てとはどういうことだ? いつまで待てばよかったんだ? たかだか男が髪の毛一筋を譲る、その覚悟が決まるまでか?」

「ですから……!」

「まあいい」


 反論しかけたアルベルトを、オスカーは視線を逸らすことで躱した。


「すでに魔力は手に入った。おまえとは違って、憐れみと施しの何たるかを知っているレオノーラ・フォン・ハーケンベルグが、ふんだんに髪を譲ってくれたからな」

「やはり、病を癒すためだったのですね……」

「ああ。おかげで、妹は皇族サマの手を煩わせることもなく、無事に全快したよ」

「――今、なんて?」


 アルベルトはさっと青褪めた。


「先輩。まさか、もう彼女の髪を使ってしまったのですか?」

「ああ? だからそう言ってるだろうが」

「そんな……」


 皇子は珍しく呆然としている。彼が無防備な表情を晒す姿を初めて見たオスカーは怪訝そうに眉を寄せたが、問い質すことはしなかった。別に、皇子がショックを受けようが急に思索に耽りだそうが、その理由を聞き出してあげるような関係ではない。


「いずれにせよだ。髪を切ったのはレオノーラの意志だし、俺はそれに感謝こそすれ、彼女を害するつもりなどなかった。それに……今後、彼女の優しさに付け込むような真似もしないつもりだ」


 ロルフがくっと片方の眉を引き上げる。オスカーはそれに視線だけを動かして応えた。


「先輩、待ってください、魔力は――」

「言い訳なら聞きたくないね。おまえの得意な、もっともらしい説明で、俺たちに訴えかけようとするのもご遠慮こうむる」


 口を開きかけたアルベルトを、オスカーは立ち上がることで遮った。


「もはや俺に、おまえと話す理由はない」


 ついでに言えば、とオスカーは続けた。


「おまえを敬い、謙る必要もな」


 藍色とアイスブルーの瞳が交錯する。

 オスカーの鋭い視線には、くっきりとした敵意が浮かんでいた。


 これまで、どれだけ皇族憎しを掲げていても、暴力を振るうこともなく、せいぜい「お茶会」くらいしかしてこなかったのは、彼らに報復の理由を与えないためだった。

 膨大な魔力を持つ皇族は、敵に回したくない相手であるだけでなく、オスカーにとっては妹を救える可能性を持った数少ない人物だ。

 最後の最後までその可能性を捨てないためには、オスカーたちは常に、慈悲を乞う弱者たりえる立場を維持しなくてはならなかったのである。


 だが、レオノーラ・フォン・ハーケンベルグの魔力を得た今となっては、状況は変わった。もはや、わずかな施しの可能性を求めて、アルベルト達に縋りつかなくてもよいのだ。


「――もうすぐ、魔術発表会がある」


 唐突に切り出すと、オスカーは薄く笑みを浮かべた。


「帝国の至宝である魔力を研鑽し、国内外に披露する、学院きっての一大行事。実際には、魔力を持たない下級貴族や庶民は指を咥えて見ているだけの、お貴族サマの、お貴族サマによる、お貴族サマのための舞踏会だ。――いや、『だった』」

「……何が仰りたいのですか」

「いいや? その取り澄ました顔が、各国の大使や皇帝陛下の前でどのように歪むか、見物だと思っただけだ」

「……いったい、何を企んでいるのですか」


 アルベルトの透き通ったブルーの瞳が、すっと細められる。その気迫に、周囲の幾人かがひっと息を飲んだが、オスカーはどこ吹く風だった。


「さあな」


 ひょいと軽快な動きで椅子を戻し、硬直しているロルフに呼び掛ける。


「おい、行くぞ。――失礼、アルベルト皇子殿下。もう午後の授業が始まるんでね」

「ベルンシュタイン先輩」


 非難するように声を上げた皇子を無視して、オスカーはさっさと歩きはじめた。


「ちょ、ちょっとちょっと、オスカー! さすがにあの態度はまずいんじゃないの?」


 オスカーとアルベルトをわたわたと見やっていたロルフが、小走りで追い掛けてくる。素早く囁いた親友に、オスカーは歩みを止めぬまま軽く肩を竦めた。


「さあな。珍しくご立腹のようだったが、あれくらいの挑発で簡単に攻撃してくるほど、あいつは馬鹿でも暇でもないだろう」


 アルベルトはヴァイツ帝国第一皇子。

 一個の人間としての怒りが導いた行動でも、皇族が無抵抗の庶民を――それも学院内で発言力を持つ優秀な生徒を傷つけることが、どんな騒動を引き起こすか、分からない彼ではないだろう。


「大胆だねえ……」

「それより、ロルフ。出番だぞ。レオノーラの髪のことを聞きつけた奴らがいたら、話を聞き出してすかさず論点をすり替えろ。俺たちが髪の魔力を独占したのではない、アルベルト皇子たちがふんだんに持っている魔力をいっこうに施さないから、いつまでたっても充分に行き渡らないんだ。レオノーラ・フォン・ハーケンベルグと俺たちは、それに酷く心を痛めている、とな」


 ロルフは狐のように細い目を、ぱちぱちと瞬かせた。


「わお。グループ内対立を回避して、ちゃっかりその責任を皇子サマになすりつけるって?」

「最近、一部の急進派が、不満のはけ口を求めて暴れたがってるのは確かだ。それを俺たちが受け止めてやる義理はない。魔術発表会という大きな舞台を用意してやれば、奴らの意識はそちらに向くだろう」

「そうなれば、レオノーラちゃんの安全も守られる、ってことだね」


 沈黙した黒髪の親友に、ロルフはふふっと笑ってみせた。


「末端とはいえ貴族に籍を連ねる僕に、女の子一人を守るために皇族を危機に晒せと? そんな愚かで向こう見ずなこと――」


 狐の瞳が弧を描く。


「オスカーかこの僕くらいしかできないよね」


 二人はそれきり黙りこみ、それぞれの計画に忙しく思考を巡らせた。

本日2回目の投稿は、活動報告欄に置いていた小話を、と考えております。


また、ブックマークがもうすぐ3000を超えそうです。どうもありがとうございます。

お礼になるかわからないのですが、(個人的な)記念に、短編を書いてみようかと…。詳細は活動報告ページにてご報告申し上げます。

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