88 普遍なる存在
あけましておめでとうございます、と言いたいところですが、松の内(1/7まで)しか使っちゃいけないらしいですね。
寒中お見舞い申し上げます!! 今年も楽しんで頂けたらなあ、と思います。新春から短いんですけどね……gkbr
「お前があのジャン・スミスだなんて悪い冗談だ! 嘘つけ!」と連呼されてしまった。酷い。
それでも一つ収穫があった。よくわからないが、私は存外有名らしい。照れる。
そんなこんなで飲み会はぐだぐだのお開きになり、本に囲まれた宿で日をまたぐ。
A×6の面々はまたダンジョンに潜るらしい。なんでも、テスのダンジョンの女神像は確実に界渡りができるのだとか。
混沌界では覚えておけよ、などと謎の捨て台詞をもらってしまった。ちょっとときめくよな。
私は世界樹の情報を探したいので、シショ人の店員さんに聞いてみた。黄色のぷにぷにボディは人間より一回り小さい。無駄に多いぷよぷよの手足でどうやって読書するのか、非常に謎めいている。
「すまないが、世界樹に関してなにか書いてある本を知らないか?」
司書に本のありかを聞くのは定番であるからして、期待もそこそこに尋ねてみる。
関節の無い手足を顎(推定)に添え、まんまるの頭を傾げる。すると、ババアアアアアアンと脳内に書籍名が並ぶ。
一般人に高度なテレパシーの処理ができるわけないだろうが!
「……世界樹の生息域とか生態とか。採取方法に関する本はないか? 世界樹の枝が欲しいのだが」
シショ人さんは、ぷにっとした腕をぽんと叩き合わせる。納得したらしい。ぽん、と頭の中で本がひらめく。
なるほど、この本を探せばいいのか。所在はダンジョン内の、南館?
思考に沈んで、送られてきた本の情報を浚っていると、つんつんぷにぷにと腕を突かれる。
顔を上げればまさにその本。取り寄せできるんかい。
「ありがとう、助かる」
ここでそのまま読んでいけ、とでもいうように軽食のメニューを渡された。相変わらず謎の文字列。適当に選ぶと、コーヒーとクラブハウスサンドとカボチャのポタージュスープが出現した。なんてモーニングセット。
本は汚さないように脇によけ、クルトンが湿気らないうちにポタージュをいただく。野菜の優しい甘味がとろりと、喉を温めながらくだってゆく。トマトがたっぷりのクラブハウスサンドを咀嚼すれば、なんだか頭がすっきりした気がする。きっとINT上昇効果を聞いたせいだ、うん。
空になった皿は消えていき、取り残されたコーヒーを飲みながら、ぱたり、と黄色い表紙をめくる。
あまり読まれていなかったのか、ふんわりと古い紙の匂いが鼻をかすめた。
目次の世界樹の項を確認して開く。
『世界樹』
『生息域:混沌界、物質界、精霊界、覇王界、幻想界、冥界、始原界、時界』
『樹高:20-100m 葉は原始的な平行脈をもち、二又に分岐』
『花期:春』
『すべての樹木の長。界を繋ぐ存在の一つ。界のバランスの調停者の一つ。その実、その枝、その葉、その根、すべてに力がありあらゆる最高級品の材料になる』
ははーん、全ッ然わからねえということが分かった。
ぱたん、と閉じ――せっかくだからちゃんと全部読みました――シショ人さんにお礼をいって返却。適当にぶらつけばいけるってきっと。たぶん。おそらく……。
本の街を抜けると、きちんとした森や道が広がっていた。正直文字だらけなのではとドキドキしていたから安心した。
森……、これは寄るしかない。珍しい木材ゲットのはずである。
幻想界だからね! 期待しても問題ないはず。
葉っぱや樹の形からして樅の木っぽい。クリスマスツリーでよく使うアレである。魔法との相性は抜群だと【読書】さんが囁く。
いそいそと手近な木によじ登り、手斧を振りかぶった。
「いええええええい!」
そして振り下ろそうとしたとき。木が身じろぎした。
「ん? お前まさかトレント……?」
ぶんぶんと枝が振られる。肯定なのか伐られたくないのか。両方か。
まさかここにもトレントがいるとは……意外、でもないか。だってトレントだもんな。
「トレントなら世界樹の場所知ってたり、するか?」
ぷるぷると震えながら枝をしならせ西をさす。おっと、手斧しまい忘れていた。
「案内してくれるか?」
つんつん、と手斧でトレントの表皮をつつくと、びっくううと跳ねて、飛び出すように西へ駆けだした。面白……じゃない、これで無事に世界樹の枝がゲットできるな!
さて、揺れてて危ないから手斧しまおう。トレントじゃなくて私の手を切ってしまう。それは避けたい。
……食料、足りるかな。途中街を見つけたら謝って、希望されたら剪定して降りるとするか。
街で補給をしたら、トレントを乗り換えて進むとしよう。
どこにでもいる、トレントだもの……。
卒論やばみなのであと一ヶ月はちょっと更新あんまり期待しないでください……。