84 俺の屍を越えてゆけ
戦闘描写を頑張ったせいで、中途半端に長いしテンポが悪いかもしれませんが
楽しんで頂ければ……いいなあ……
溶岩が固まったような黒い地面を歩くことしばし。なんか暑いなあ、などと集中力の切れはじめたころ。
八ツ橋くんが止まった。
「居た」
居なくね? 見回せど蛇の影なし。
とりあえず毒専用の瓶を構えておこう。
「はあああ!!! 【水遁・氷犀拳】!!」
一瞬、八ツ橋くんの体が発光し、白い犀のような形で腕にまとわりつく。え、これ他の人にも見えるのだろうか。
見えてそう。
バキバキバキバキ……!!
氷が地面に突きたてられ、盛大に亀裂が走っていく。めっちゃカッコイイな。
『ギュロオオオオオオオオン!』
亀裂から首をもたげたのは、見上げるほどにデカい。黒い体表の奥には、ちろちろと朱色の火がくすぶっている。めっちゃカッコイイ。
そして口からは、ぼたっ、ぼたっ、とマグマが垂れる。垂れた先ではシュウシュウと紫色の煙が上がっていた。
え? これ採取するの??? 火傷するじゃん???
「こんなにデカいなんて聞いてないんだが!!」
「知っていると思ってたんや! 堪忍な!! 【水遁・氷犀拳】!」
『ギュッギュウウウウウウウ!!』
「うるっせえぞこの駄蛇が!! 【水遁・氷龍降ろし】!」
八ツ橋くんは超イイ笑顔で蛇に突撃していく。八ツ橋くんバーサーカーなのか……、意外。
派手なエフェクトが飛び散り、彼の蹴り痕を起点に氷の龍に巻きつかれた黒溶大蛇は悲痛な声をあげた。
私も仕事をするべく、【空駆け】で結構な高さの頭部にしがみついて、容赦なく口内の牙に瓶をあてがう。
「あれっ。全身が冷やされているから? おぼおあっ」
うおお、ばかすか八ツ橋君が胴体に攻撃入れてて揺れるっるっる。
牙の周りにだけ、熱くなれ~、と念じれば、ちょろちょろ~と赤々とした毒が溜まってきた。
《熟練度が上限に達しました。【毒耐性】は【毒耐性(初)】に変化します》
えっ。体表にも毒あるんかい。
驚きつつも毒採取を続行していると、ばしゃっと草くさいものが掛かる。なんだこの緑の液体。もしやピンチになると分泌されるタイプの毒か……?
「ジャンさん! HP管理忘れんなし!!」
掛けられた言葉から、先ほどの液体はポーションのようだ。言われてみれば身体がちょっと軽くなった気がしなくもない。
「すまん、助かった。っと、瓶に詰め終わったぞ」
「了解! トドメだ、【水遁・氷獏狩り】!」
瓶の蓋をしめると、蛇が痙攣してくたりと崩れる。
私も落ちる。
「ぶべっ」
「ジャンさん……。着地くらいはできはると思うたんやけど」
「じゃあ聞くが、私にそんなスマートな身のこなしができると思うか?」
「あ、ないわ」
ぱんぱん、と土埃などを掃いながら尋ねると即座に否定されてしまった。少しは悩めよ。かわいそうだろ、私が。
「そういうことで毒な」
「あざっす! よしっ。やったー!」
ガッツポーズしてて可愛い。さすが子供。あざとい。
「んじゃ、瓢箪もらいに戻るか」
「そうしましょー」
るんるん気分で歩き出すと、かすかにパキッ、とひび割れた音がした。
パキパキ。
パキパキパキパキ。
「ん?」
倒れたはずの大蛇から、赤々とした更にデカい蛇が生まれようとしていたのだ。
脱皮するとか今度こそ聞いてない!!!
「逃げるぞ!!!」
「ええ、うわっ! トドメ刺し損ねたっ!!? っ、ダメや、このままじゃトレインしてまう!!」
「えー、じゃあ、どっちかだけ逃げるか?」
「せやけど……」
「ほれ、負けた方が囮役な。じゃーんけん、ぽん」
言い淀む八ツ橋君に構わずじゃんけんの掛け声を敢行。
音に釣られて、八ツ橋くんはグーを出していた。私はチョキ。
ぐあああああああ、負けたっ! だが計算通りだっ!!!
「というわけだ。私の屍を越えてゆけ……!!」
一度は言ってみたいと思っていたんだ。ちょっと満足。ここで死んでも悔いはない。
「ジャンさん!!」
「いいから行け。誰が依頼を達成するんだ、君だろう!! 私は何度でも甦る! だから振り向かず街へ走れ」
ゲームだからね。死に戻りには自信がある。なんなら八ツ橋くんだって甦る。
うん、ちょっと恥ずかしくなってきた。突撃しよ。
あっ、刀ないじゃん。なんか投げるもの~、パチプチの実は……さっき納品してしまった、そういえば。
「ジャンさん! 次に会ったら瓢箪渡しますね!」
「あー、萬屋のサカイ君に着払いで宅配とか頼んでおいてくれれば、たぶん受け取れるから~。またな~」
まあ杖でいいか。……杖も売り払っちゃって無いんだよなあ!
枝のままでも何とかなる……ハズ。
ローワントレントの枝を構えて睨みあい、八ツ橋くんの気配が遠くなったころには、蛇は黒く堅くなっていた。もしや、倒すチャンス逃した感じ??
『ジュロオオオオオオオオ』
「連続で『氷』!」
迫りくる蛇顔に向け氷柱を射出していく。ちょっと狙いが甘いな。
まあ問題はない。すっすっ、と器用に避けられるが、一応敵視は取れていると思う。
私は街とは反対方向に奥へ奥へと移動しながら攻撃を加えていく。
よし、そのままこっちへ来い!
「『氷』!!」
真っ黒の地面を走りながら、蛇の上下左右から、トラップ的に落としていくと、多少はダメージが入るようだが、全然決定打になっていない。
メキ、メキ、メキメキメキ……。
地面がきしみ、私の足元にも亀裂が届く。
嫌な予感。
ベキベキベキベキベキベキ!!!
ぱらぱらと溶岩の破片を落としながら、何匹もの黒々と大蛇が顔を出し私を取り囲む。
口を開き。
それぞれの喉の奥に淡く赤い魔素が集結していき。
吐き出された。
「これアカン奴や……!!」
慌てて上に逃げ出す。が、蹴りつけた空気がすでに熱い。肺も熱い……!!
ぎゃああああああああ……。
ああああああああ。
あ。
ハイ、死にましたー。知らない天井~?
「うーむ。テス、だよな? んで、どこだここ?」
身体を起こせば見覚えのある笠を被った女神が。
ダ ン ジ ョ ン 内 か よ 。
名前:ジャン・スミスLv.45
種族:人間 性別:男性
職業:【気分屋】
HP:171
MP:419
STR:32
VIT:29
INT:55
MID:90
AGI:139
DEX:146
LUC:99
称号
【混沌神の玩具】【運命神の憐憫】【怠惰神の親愛】【無謀】【マゾ】【命を弄ぶ者】【妖精郷の歓迎】【黄泉の道化師】【探検家】【妖樹の友】【界渡り(魔)1/1】【悪戯小僧】【変異種】【補佐官】【野菜泥棒】【逆走の探索者】【養蜂家】
スキル
戦闘
【盾】【刀】【奇襲】【会心の一撃】【空駆け】【バランス感覚】【毒耐性(初)】【夜目】【逃げ足(一)】【肉体言語(初)】
魔法
【魔法陣(玄)】【生活魔法】【詠唱】
生産
【細工(一)】【採取】【料理(初)】【木工(一)】【解体】【伐採】【書画(初)】【調合】【スキル付与】
その他
【運】【薄影】【痛覚耐性】【読書】【識別】【木登り】【地図】【効果】【魔道具】【妖精化(玄)】【指導】【分解】
特殊
【混沌】【手抜き】【六文銭】
最近主人公死んでないな、と思って、先週と今週のお話ができました。楽しんで頂けたでしょうか?
ところで、プレイヤーの復活場所の条件って書いた覚えがないんですけど、書きましたっけ?
とりあえず死んだ場所から一番近い、立ちよったことのある教会を復活地点としますので、今までの掲載分で矛盾が生じていた場合はお知らせくださると助かります。