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6 教会と図書館



 私は床から立ち上がり、表の教会に回った。


 前回と前々回は気にしていなかったが、星渡りの旅人用の復活場所と建物自体が完全に分けられており、庭を通じて繋がっているようだ。

 まあ、住人には用のない施設だものな。


 ゴシックな教会の扉を潜ると、誰もいなかった。


 ただ、懺悔室こちら、というポップな看板が雰囲気をクラッシュしていた。


 それはさておき、目の前の三つの石像に祈っとく。ついでにさっきの梟を供えてみる。


 ……小銭の方がいいかな?


 というわけで10(ソルト)銅貨を添えてみた。


 シュール。


 左にハルバートを持つ美女(美乳)、右に大槌を持つ美女(巨乳)、中央にドラゴンを首に巻きつけた美丈夫、足元に民芸品と小銭。


 シュール。


 大事じゃないけど二回言ってみた。

 こけしよりはまだ梟の方がマッチしていると信じたい。


 しかし今気づいたんだが、木材乾燥させるの忘れてた。

 不覚!!


 ……ま、まあ小物だし、ヒビとか割れとかそんな入んないよ、うん。


「おや、参拝ですか?星渡りの方は珍しいですね」


 不完全すぎるものを供えるのもどうかと悶々としていると、背後から声を掛けられた。


「珍しいのか?」


「はい。皆さん、旧聖堂から出るだけで、此方にはいらっしゃいませんね」


「旧聖堂?」


「ええ。手狭になってしまって随分前に使わなくなっていたのですよ」


 なんでも歴史的な価値があって壊せずにいたが、今回神託が降って星渡りの旅人用に改修したのだとか。


 この教会のナイスミドルな神父さんが穏やかに語ってくれた。一対一じゃなければ寝てしまうくらいの穏やかさ。


「他の街でもそうなのか?」


「いえ、新しく作ったという街もあったと思います」


 へえ。聞いたはいいが、割とどうでも良かったかな。


「ところで、この神?、は何の神なんだ?」


「おお、ご存知ありませんでしたか。左が破壊神、右が創造神、中央が混沌神です」


 混沌神……なんか主神っぽいのと並んでるぞ?お前そんな偉かったの?


「教会アレフ支部ではこの三柱をお祀りしておりますが、他の街の支部では別の神を祀っていますよ」


「バラバラでいいのか?」


「ええ。その街その村で最も人気のある神々をお祀りするので。この街では信仰に偏りがないため、この主なる三柱ですが」


 あ、主神なんだ。


「神話に興味はおありですか?」


「ん〜、まあ」


 なんか装飾の参考になるかもしれないし。

 この世界にちなんだ作品を作るのも悪くないな、うん。


 ……正直に吐きますと、【混沌】の内容知りたいです。


 簡単に纏めると、混沌神が最初にあり、そこから創造神と破壊神が飛び出し、他の要素も分かれたり混じったりという神話だった。

 創造神側と破壊神側に神々が別れて戦争、なんてのもあったけど割愛。


 まああるある、って感じですね。


 聖書も読まされたので、暗記は完ぺきです。

 【読書】さんマジ神。


 神父さん(ナイスミドル)にお礼を言って教会から出る。


《聖書を覚えたことにより、神に関係したスキルの詳細が開示されます》


 神関係スキルの詳細開示条件、マジきついぞ?

 聖書覚えろとか不可能だろ。小型六法全書くらいあったもん。


 【読書】さん、いや【読書】さま。

 あなたが神だったのですね?




 折角開示されたので、久々にメニューを開きステータスを確認する。


 あれ?なんかスキルが分類されてる。

 お?熟練度もちょっと上がってるなあ。言われてみれば最初よりも短刀が扱いやすくなってるかも?


 と言うか、【識別】とか【魔法陣】も内容が読めるようになっている。

 ……内容、フラスク老に教わったそのままじゃねえか。

 あれか、【鑑定】持ちじゃないと知ったことが反映される形か。


特殊スキル


【混沌】

あらゆる境を曖昧にする。


【手抜き】

何もしなくても欠点が一つ補われる。あるいは上手くできる。


 わっけわかんねえ。曖昧すぎるな……。【手抜き】の説明も想像とちょっと違ったし。


 放置でいいか。


 さて、【読書】さまの偉大さを感じるために、図書館とギルドの資料室に行こうと思う。


 後回しにしていたが、意外とスキルが手に入るんじゃないかという打算も勿論ある。


 【読書】さま、レアじゃねえの?ってくらいチートなんだが。今度サカイくんにでも聞いてみようか。


 道中で買った串焼き美味いです。

 焼き鳥塩味。

 鳥系のモンスター見たことないなー。




 もぐもぐトコトコ歩いていると、立派な石造りの図書館についた。


「おお……!」


 素晴らしい!

 図書館は柱や床、梁、本棚、手すりに至るまで丁寧に磨きあげられ、つやつやと飴色に輝いていた。

 古い本や、閲覧用の机と椅子もよく馴染んでいて、その雰囲気に一役買っている。


 なんで私もっと早く来なかった……!


 ……図書館も石造りだと思い込んでたからだ。

 外見はバッチリ石造だったから……。


 現実なら世界遺産レベルの図書館なわけだが、きっと他の図書館もこれくらいなんじゃなかろうか。

 新しい街では必見だな。


 私は決意も新たに、その魅力的な作品に頬擦りしたいのを堪えつつ、図鑑系が置いてある本棚に向かう。


 だって文字ずっと読むの辛いじゃん。

 先程のように神父さん(笑顔こわい)に、監視でもされ(見守られ)てなきゃ興味のないものは読めない。


 いくら【読書】さまが凄くても、読むのは私なんですよ、ええ。


「およ?」


 また像が飾ってある。今度は本を持ったおじいさんだけど。

 神様かね?ま、いいや。




 図鑑は比較的新しいものを選ぶ。それで絵が凄く詳細に書いてあるやつ。


 多分採取や討伐する時とかに【識別】さんが「?」付きで仕事してくれるはず。


 にしても本当色々あるな。

 『植物図鑑』、『木材一覧』、『魔法陣大全』、『魔物百科事典』、『技能大図鑑』なんかを選んで積み上げる。


 早速読んでみようかね。


 !?


 『植物図鑑第一巻旧都周辺』

 第一巻!?第二巻とかあんの!?


 まさか!


 慌てて他の図鑑も表紙だけ捲る。


 『木材一覧旧都周辺』

 『魔法陣大全〜入門編〜』

 『魔物百科事典〜旧都周辺〜』


 オーマイゴッド。


 一気に終わらない予感。


 いや待て諦めるな私。閉架にあるかもしれないじゃないか。司書さんに聞いてみようぜ。


「すまない、これらの続きは置いてあるか?」


「申し訳ありません、この街近くではあまり需要のないものですので……。他の街にあるのです」


 これアカンやつや。

 各街の図書館で読書必須くさいです。

 面倒ごとは纏めて片したい私です。吐血。


 いや、図書館巡りするけどさ、観光だけで済ませたかった……!

 心置きなく建物を愛でたかった……!!!




 その四冊を読み終わったあと、興味を惹くやつと覚えとくと良さげなやつは片っ端から読んでやった。

 どうだ、参ったか!


 途中【速読】とか【地図】が手に入ったから調子に乗りました。【速読】はすぐ【読書】に吸収合併されたけど。


 どこまで優秀になるんですか、【読書】さんや。


 中でも一番面白そうだと思ったのは、杖や弓、小物に魔法陣で追加効果を付けられるという記述だ。


 あとは『名匠の武器・防具』とかもオススメだ。

 色んな杖とか弓とか棍棒とかが載ってて、とっても参考になりそうである。


 創作の幅が広がりますね!

 ワクワク。




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