28 バザール
雑踏だな。きっと本場のバザールもこんな感じなのだろう。明らかに違う点を挙げるとすれば、それはモフモフの獣人たちがいることだろうか。
もし私が現実でトルコとかに行ったら即スリに遭う気がする。
しかし暑い。この服だと汗が……、出ないけど暑い。
悩んだけども、ダレスって手書きっぽく書いてある半袖の黄色いシャツを買って装備した。私の趣味が悪いのではない、コレが一番安かったんだっ!
そして門番はなかったが、バザールの入り口には役所があった。ここで身分証を提示し、転移許可証の提出・登録と入場許可証を発行する。
小判形の金属のタグに革紐を通したカッコいい感じのペンダントだ。私が貰ったのは銅っぽい観光客用の物で、目的や職業に応じてタグが変わるらしい。
「さて行くぞー!」
役所で買ったパンフレット片手に突撃。残念Tシャツ装備で左右をキョロキョロしているので、完全に観光客丸出しである。しかし色々売っているのを見るだけでも楽しい。
大きな箱型の建物に店を規則正しくはあるが、所狭しと詰めたバザール。
東西南北に出入口があり、役場兼ギルドや図書館などの公共施設になっており、外側は民家や出稼ぎの露天で占められている。
バザール内はだいたい似たような店で固まっているので、商品比べも楽そうだ。
色々な店が構えているが、その中でも、塩、香辛料、絨毯、金、宝石、陶器やガラス製品を扱う店が多い。この辺のモンスターが落とすのかね?
ちょっと質の悪いガラスに入った香辛料が並んでいるところとか、口の開いた麻袋に果物とか、カラス除けのCDみたいにやたらとぶら下がる皿とか萌える。
日本ではまず見られないから余計にテンション上がる。
しかしなんかボッタクリな値段〜、と思いつつカラフルな通りを進んでいく。どうやら値段交渉で下げていくのが一般的みたいだ。
日本人には厳しい。
コミュ障の人にも辛そうだ……。
つまり私に優しくない。
中央部に出ると、そこは吹き抜けになっており、縁が座れるようになっている噴水が設けてある。屋根が無いだけとも言える。かなり広いし。
ここはバザール内の店が宣伝がてら露天を開いているので、日毎に出店が違うのだ(パンフレット参照)。半分は飲食店というね。
「おお、綺麗だ。……高っ」
触りはしないが、無造作に並べてある宝石の露天を覗きこんだ。綺麗にカッティングされたものは浮いた二十万を以ってしても一つすら買えないという。
更に金属の台座がついた奴はもっとするんだぜ……。
しかし見るぶんにはタダだ。
「この宝石はどこで出たものか聞いても?」
透き通った蒼色の石を指して、褐色の肌の店員に聞いてみる。褐色肌の住人は初めて見たな。
「コレは宝石じゃなくてな。魔物が稀に体内に持っていたり、テスの遺跡から発見されることがある星幽石と言うんだ」
この辺りではサソリやサボテン、トカゲ系の魔物も出るそうだが、それらではなくザイーンの街のモンスターがよくこの石を持っているそうだ。あとは別の国に鉱脈があるとかないとか。
「何に使えるんだ?」
「杖に使ったり、剣の柄に嵌めたり、お守りにしたりだな。魔法系の威力の増幅効果が多いが、精霊獣の住家になったりするぜ」
要約するとファンタジー用途か、理解した。(本当か?)
「わかった、ありがとう」
隅に所在無げに置かれていた、五万くらいのを情報代よろしく買う。
爪の先くらいのまだ磨いていない赤い星幽石だ。よく見ると内部がユラユラと燻っていて面白い。
「にいちゃん加工できんの?クセが強くて結構難しいぞ?」
「さあ?でも綺麗だろ」
微妙な顔をされた。しかし気をとりなおしたようで、にかっと笑う。くそ、こいつ普通にイケメンだ!
「毎度あり!もし手に入れて売るつもりなら『リプラの宝石箱』に売ってくれよ?最近あんまり出回らなくてな」
「ああ」
冗談めかして笑う店員に手を振って別れる。
うーん、図書館を見たらもうやること無いな。ギーメルの街に戻るか。
ウッカリ北と南を間違えた所為で図書館に行くつもりが教会に着いてしまった。教会というよりか、尖塔がいくつか建っていてモスクっぽいけどな。
祀られているのは商業神。金属系の神でもあるようだ。兼任なのか混ざったのか。
そんな事より気になるのは、親指と人差し指をつけて完全に金マークをつくる像だ。あからさまに賽銭箱もある。
コレジャナイ感がヒドイな。お供え物に悩まなくて済むから良いが。
五百ソルトほど賽銭を入れ、ターバンを巻いてロバの上で良い笑顔を浮かべる胡散臭い神に二礼二拍手一礼。違和感は拭えないが、気持ちだし合ってなくても良いだろう。
なんだろう、商業神を貶したせいか、気分の悪いものを見かけてしまった。
ゲームだし、奴隷がいるのも商売として成り立っているのも構わないのだが。身繕いしたら美しそうな動物が目立たぬようにだが鞭打たれた傷を持っていたのだ。
気づかなきゃよかった。
さて、図書館。途中買い食いと土産で散財したが、ようやく着いた。
サボテンから作ったという酒が美味かったです。ワインも。
あとはヨーグルトとチーズを足して二で割った感じの!試食で食って何にでも合いそうな気がして買った!
本当はフェアリーズに何か甘いのを買っていこうと思ったのだが、菓子類は砂糖が多い気がして自分の舌に合わなかったのでやめた。花の砂糖漬けは買ったけど、これで誤魔化されてくれるだろうか。
そして本命ダレス図書館。
大理石の床が芸術的だった。青と緑の大理石と白い大理石の幾何学模様がねっ!もう素敵すぎてな!しかも魔法陣っぽかった。熟練度が足りないせいかよくわからなかったがな。
多分、温湿度調整、かな?ダレス乾燥してて暑いし。
もしかしたら風の循環とかも有るかもしれない。床だけではなくて、柱にも魔法文字が目立たないように彫ってあったから。こんな大規模な魔法陣、作りたくねえな、何年掛かりだ?
天井画もフレスコ画っぽくて良かったよ、商業神讃えてなければ更に。あのドヤ顔がチラつく。
流石に本棚とかの家具は木製でした。柱はキャラメル色の大理石だったからそんなに違和感はなかった。こういうのってセンスがモノを言うよな〜。
ここの図書館では、物価の統計がすごい場所取っていた。いらねえ。
あとは地図類が豊富で、他国も載っている地図があった。私の【地図】も更新されたもよう。……あれ、知らないうちにパンフレット情報も取りこまれてる?
他は旅行記とか礼儀作法系、宝石やら星幽石やらの石、か?、それと精霊獣の本も一応目を通す。
ギーメルの街には図書館無いからなあ。なんか口伝っぽくて部外者は聞けないっぽいのだ。
妖精系の種族は記憶力が良いから本にする必要がないんだと。アイツらがだぜ、信じらんねえ。
目ぼしい本はとりあえず読んだし、満足。
ここら辺良い木材ないし、もう用済みかな!
イスラーム圏は偶像崇拝禁止ですがね。一応トルコっぽい街だとしておいてください。
自分で書いといてアレですが、国内で文化が違うってヤバくないですか?