25 アルバイト
象牙より白い鹿の角。
偶には木以外を彫るのも楽しいな!木より固くて上手く削れないのだが、それがまたいい。
……やっぱいくない。
ボソボソした、髄?のようなのが出てきた。折角だからあの鹿を彫ろうと思ったというのに。変なところが凹んでしまった。ショック!
むむ、大きくは使えないな。ありきたりだけどアクセサリーを作るか。小さい彫刻というか細工をするには道具が足りない。
予定を大きく変更して、三日月形の何かをいくつか作る。ヤスリを丁寧に掛けて完成。
穴は開けない。開けたら月じゃなくなる。
でも大きめのビーズにしても良いか。暇だし。
ぼちぼち作ってクーゼさんにでも使わせよう。
小型の鋸で爪くらいの立方体を削り出し、キリで穴を開ける。あとは適当に丸まるようにやする。
……歪。真円からは程遠いんだが。でもこれはこれで味がある。気がする。そういうことにしておこう。
というか二十も三十も一気に作ったから、やするの飽きた。もうこれでいいや。
もはや角の取れただけのサイコロみたいなのもあるけど。キニシナーイ。
角が大分余ったが、使い途が無いのでストレージの肥やしかな。
ベスの街の屋台で買い食いしていると、ぴろんという間抜けな音がメールが来たことを知らせてきた。
おうふ、クーゼさんとサカイくんから来た新調する装備の見積書だ。
一、十、百、……。
高っ!!
えっ、一つ五万!?以前買った時は全部で五万くらいじゃなかったか!?総額二十五万!?
そんな金ねえよ!
ガレット落としそうになったじゃないか!!
ジャケット、シャツ、ベスト、ズボン、脇差。
どれも交換が必要なほどこの前買ったものはボロボロだ。この際予備も買おうと思っていたのだが……。
ムリだな!
うーん、金策に走るべき?最悪この装備でもいいか……。今回護衛がいるらしいし。
一応ギルドの納品クエストと素材売りで稼いでおこう。貯まればいいけど、二十万。五万くらいはなんとかあるし。
と思っていた時期が私にもありました。
解体所でギーメルの街……というか洞窟のキノコがかなり良い値で売れました。
ちょっと惜しかったけどトレントの枝もスゴく高く売れました。
「アッハッハ。お前さんスゲえな!ギーメル産のトレント素材は本当に珍しいんだよ。これはちょっと質がわりィけど。しばらくは同じものは買い取れねえな、値崩れしちまう」
ちっ、金欠になったらまた売ろうと思っていたのに。
「オークトレントの枝でこんなに状態がいいのは久しぶりだ!エルフの別嬪さんが偶に市に流してもダレスにだしな!」
「キノコ類もギーメル産か!燈茸、緑青茸、巌窟茸、蚯蚓茸、うおっ望月茸もあるじゃねえか!食用のもか!南じゃ珍しいのが多いな」
邪な皮算用はさておきべた褒めされちまったぜ。鹿は買い叩かれたけどなっ!悲しくなんかないぜ!……ホントだぞ?
どうせディアならフォレストディアよりムーンディアの方が良いなんて言われてしまった。なんでも付与に向いているとか。
どこにいるねん。
あ、この辺の西ですか、夜ですか、そうですか。
「ありがとう。ところでインクに使うような鉱物ってどこら辺で採取できる?」
「鉱物かあ、それならザイーンの街かあ?あそこはドワーフが住み着いてるしな。インクに向いているかは分からねえが。一応ここの東にも鉱山があるが」
また聞いたことのない街だな。一体いつたどり着けるのやら。というかいくつ街があるんだ。
「おい、昔落盤のせいでダレス方面のは廃坑になっただろ、掘れないんじゃないか?しかもその辺りに住み着いてる魔物も強かったような?どうだったっけ」
「一応場所を聞いてもいいか?」
尋ねるとざくっとした地図をもらえた。親切なおっちゃんたちである。ストレージに手描きの地図をしまうと、【地図】によって示される地図にバツ印と廃坑という注釈がついた。統合されたらしい。普段実際に歩いた分も更新されていく。便利。
しかし掃けてしまった素材をまた取りに行かないと……。特に枝な。
金も貯まったし、魔法ギルドに顔でも出そうか。
その思いつきは全くもって良くなかった。〆切前の修羅場再び。
「頼むよー!新入りが営業頑張りすぎちゃったんだ!納期に終わら#/☆$%*!」
「……今日だけしか手伝えないぞ」
顔見知りの職員が私の足元にすがりついて、鼻水やら涙やら体液をぶちまけて懇願するので仕方なく手伝うことにする。オイこらズボンに付けんじゃねえ!
今回は【転写】と【解除】の魔法陣だ。以前描かされていていたものより文字と図形が多く少し複雑である。
何が言いたいのかというと、失敗作がよく出来上がるんですよ……。
終わらない絶望と努力が儚くなる虚しさに心がばきばきアゲインです。
折角描きあげても、規定値を満たしてないと消さないといけないしな。
はあ……、ワカメになりたい。味噌汁を悠々と泳ぐワカメ……美味い。味噌はどこだ……。
おうふ、追加ですか、え、今度は【浮遊】?
描くけど。描きますけど!
コレ画数多いよ!書き順も紛らわしいよ!アルバイトにこんなもんやらせんじゃねえ!!
うおおおおおおおお!
「あっ、ごめん、その紙【時間加速】用のだ。全部消してこっちの紙で描き直して!」
魔法陣はその陣に必要な魔力が籠められた紙に、相性の良いインクで描かれなければ発動しないのだ。
つまり、【時間加速】用の紙では役不足。
「早く言えええ!」
心からの叫びだった。
まあ、地獄の修羅場をくぐりぬけたお陰……とは言いたくないのだが、【魔法陣】が【魔法陣(初)】に進化した。個人的には木工が進化してほしいところ。
「あ、すまん!手が空いてるならこっちもお願い!えっ、見たことない?じゃこの本貸すから!157ページのやつね!」
手渡されたのは『魔法陣大全~初級編~』だった。
まあああああたあああああかあああああ!
名前:ジャン・スミス Lv.24
種族:人間 性別:男性
HP:168
MP:182
STR:28
VIT:18
INT:15
MID:56
AGI:86
DEX:94
LUC:63
称号
【混沌神の玩具】【運命神の憐憫】【怠惰神の親愛】【無謀】【マゾ】【命を弄ぶ者】【妖精郷の歓迎】【黄泉の道化師】
スキル
戦闘
【盾】【刀】【奇襲】【会心の一撃】【空駆け】【バランス感覚】【毒耐性】【魔力武装】【夜目】
魔法
【魔法陣(初)】【生活魔法】
生産
【細工】【採取】【料理】【木工】【解体】【伐採】【書画】
その他
【運】【薄影】【痛覚耐性】【読書】【識別】【魔力制御(初)】【木登り】【地図】【風の心得】【金の心得】【木の心得】【水の心得】【火の心得】【効果】
特殊
【混沌】【手抜き】【六文銭】