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20 景品と泉



 この間は、酷い目にあった……。

 鍋さんから色々売ってもらったけど、それくらいではチャラにならない……。


 とりあえず、忘れないうちに回避率一位の景品を貰おう。安定の【???】ですよ。

 いっぱいあるので目を通すのさえ面ど……もとい悩む時間が無駄なのだ。差し迫って欲しいものはないし。 【超☆必殺技】とか気になるけども。


 ポチッとな。


 ピロン!


《【効果】を得ました》


 なんじゃらほい。

 んん?なにやらすでに技が登録されている。


 【星(暖色)】

 【集中線】

 【薔薇ピンク


 今まで全く触れることはなかったが、私の場合、【読書】や【魔法陣】、【刀】にも技が登録されている。【速読】とか【乾燥】とか【冷蔵】とか【時間加速】とか【首刈り】とかである。

 安定してできるようになると「君ならできるさ☆」という感じで表記される、大変無駄だと思っていた機能である。

 まさかプリセットされている場合があるとは……!!


「【効果】【薔薇ピンク】」


 誰もいないし、最初だし、ということで声に出してスキル発動。


 ブワッ!


 私の周りでいくつもの少女漫画的な薔薇が咲き誇った。


 三秒くらい。


「……。……」


 はっ、いけない。呆然としていた。……誰もいなくて良かった。平凡顔に薔薇の背景とか視界の汚物でしかない。


 【集中線】は集中線が出た。

 【星(暖色)】は十個くらいの星が飛び出て五秒くらいかけて消えた。


「……。チェンジで」


 そう呟いた私は悪くないと思う。




 私はアレフの街に戻っている。

 ベスの街の魔物、倒しづらいからな。べ、別に面倒になったわけではないぞ?


《お知らせします。ヘエの街に到達したプレイヤーが現れました》

《これより拠点システムが稼働します》

《詳細はメニューよりご確認ください》


 へーへーへー。


《お知らせします。ダレスの街に到達したプレイヤーが現れました》

《ダレスの街にてスキルショップがオープンします》

《詳細はメニューよりご確認ください》


 何この連続到達。狙っていたのだろうか。凄いな〜。

 というか、私がアレフの街に戻った瞬間って嫌味じゃないですか?システムさんは私がお嫌いなんだ!(冤罪)


 それはさておき、久々のフラスク老ですよっと。

 魔法陣も少し描けるようになったので、多分インクの調合を教えて貰えるはずだ。

 突撃ー!


「すまんのぅ、トレントの虫こぶと緑寒天が足りないのじゃ。それが無いと作れん」


 なんと出鼻を挫かれた。


「足りないなら取ってくるが、どこにあるんだ?」


「ギーメルの街あたりの森じゃな。あとはその先のテスの遺跡かの」


 孫娘の淹れてくれた、青紫の薬草茶を飲みながら、必要なものの情報を聞き出す。メモメモ。

 うん、そして意外と美味い。ミントよりはスッとしないハーブティー的な。


「オニグルミの実やガムゴムの樹液でもええんじゃが、遠いしのぅ」


 そちらはヴァウウォーの街まで行かないといけないらしい。どこやねん。いや、ギーメルの街も行き方を知らないのだが。

 フラスク老は白い髭を梳きながら、インクに必要なものの見本を並べる。


「あとは適当な鉱物じゃな。見かけたら掘ってくるように」


「わかった。……ところでギーメルの街にはどうやって行くんだ?」


 フラスク老がずっこけた。




 ギーメルの街を目指して森の中を北東の方角に進んでいく。

 フラスク老は「ついでじゃ」とか言ってなんかの薬品の配達を押しつけてきた。まあ、【読書】さんのお蔭で地図はあるから良いけども。


 途中山桃やら野草やらを取りつつ、猿や蛾を撃破しながらしばらく進んでいくと、小振りな滝壺がある。


 ヤバい、マイナスイオンが異常発生してるわ〜。

 きっとこれ飲める!リトマス紙とかはないが私の直感が飲めと叫んでいる!


 ばしゃー!


「……」


 水じゃなくてスライムでしたか私の直感仕事しろ。


 うにょうにょデカデカとしたスライムさん。大きいと愛嬌が職務放棄するらしい。


 回れ右して走ると、巨大スライムは私を追いかけてか陸に上がってきた。……地味に速いな!

 逃走を諦め、ありったけの乾燥の魔法陣をペタペタ貼りまくって木の上に逃げる。

 ちょ、触手は卑怯だよ!私は美味しくないから!ペッしなさい!誰も幸せにならないから!こっち来んな!


 うええええ、息出来なっ!

 暴れると酸素が足りなくなるとわかっていても、もがかずにはいられない。


 あっ、なんか川が見える……。向こう岸には花畑と死んだ婆ちゃんが……。


 視界が白く……。


 どしゃっ。


「ぶべっ!ゴホッ、おえぇぇ、はぁっ、はぁっ」


 腹から地面に落ちた。振り返るとふこふこしているけどうねうねとした物体がある。芸術作品のように常人には理解できない奇妙なオブジェは、さっきまで私を襲っていたスライムと似ているような――?


《スプリングスライムを倒しました》

《ギーメル・転移許可証を得ました》



《称号【妖精郷の歓迎】を得ました》


 倒しちゃったみたいだ。テヘペロ☆


 世にも不思議なオブジェを触ると、ふこふこしていてスポンジのようだ。これは食えそうにないな。

 ……とりあえず死骸回収しとこ。




名前(ネーム):ジャン・スミス Lv.22

種族:人間 性別:男性

HP:161

MP:169

STR:26

VIT:16

INT:15

MID:51

AGI:80

DEX:91

LUC:61


称号

【混沌神の玩具】【運命神の憐憫】【怠惰神の親愛】【無謀】【マゾ】【命を弄ぶ者】【妖精郷の歓迎】


スキル

戦闘

【盾】【刀】【奇襲】【会心の一撃】【空駆け】【バランス感覚】【毒耐性(微)】


魔法

【魔法陣】


生産

【細工】【採取】【料理】【木工】【解体】【伐採】【書画】


その他

【運】【薄影】【痛覚耐性】【読書】【識別】【魔力制御】【木登り】【地図】【風の心得】【金の心得】【木の心得】【水の心得】【火の心得】【効果】


特殊

【混沌】【手抜き】




備考

息を止めるギネス記録は二十分くらいですね。

主人公は……三分くらい?

今回、主人公的にはかなり格上と戦いました。


技に関して

技が登録されると、必要コストが若干補正を受けます。省エネ的な感じです。だから戦闘職の方は必死に登録しているんじゃないかな(雑)


【妖精郷の歓迎】

初めてスプリングスライムを撃破した者に与えられる。

ギーメルの街の住人のように扱われる。


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