14 スライム
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やってきましたベスの雑木林。
森というには木が疎ら、草原というには木が多い、そんなフィールドです。
ここでは杖に適した樹木がボチボチ生えているはずなのでそれを伐ろうと画策中。
しかし問題発生。
見つからない。
そして出てくるのは各種妖精です。なかなか倒れないしアクティブなモンスターだしで踏んだり蹴ったりな気分。
魔力通すらしい木はドコー!!!
……もういっかなー、適当な木からもごう。製材屋さんとかで買えばいいや。
堪え性のない奴などと言わないでください。こどもの頃、通知表にもよく書かれました。
というわけで手斧を振る。
おや?
視界の隅に青い影。
ス ラ イ ム !
有名な某・竜の探索ゲームに出てくる感じの愛嬌のあるやつ。
懐かしい。
ぽよん、ぽよんと体を弾ませて私に突撃してくる。
か わ い い w
つい手でブロックしてしまったら、地面に着地。
そしてまたジャンプ。
またブロック。
そしてまたジャンプ。
鞠か!!!
でも可愛い。
しばらくバスケっぽくドリブルして戯れていると、ある時ベシャッと音を立ててスライムが破裂した。
まりちゃ〜〜〜ん!!!
《無傷のまま魔物を微量ダメージのみで倒したことにより、【命を弄ぶ者】を得ました》
悲しみに暮れる私にこの仕打ち。酷いと思う。
しかし、攻撃力のないスライムとか、大丈夫か?種としてどうよ?
仕方が無いので彼(彼女?)を悼むスライム型フィギュアを作製しようではないか。うむ。
実寸大は木材が無いから、三分の一くらいで良いか?
まりちゃんに出会う前に切り取った枝の太い部分をそれっぽく削って形にする。
そんなに難しい形ではないからあっという間だ。
そこへまた同じようなスライムが現れる。
君はまりちゃんじゃないしなー。うん、サクッと退場願おう。
私はペタッと乾燥の魔法陣を貼って発動する。
なんで乾燥なのかって?
他に良さげな魔法陣ないんだよ。生活に密着したやつしか持ってないんだ!
洗浄とか、時間加速とか、冷蔵とか、照明とか。
つまりアルバイトの報酬のオマケ。
市販のはそういったのしか売ってない。
そこで、ほぼ水でできてそうなスライムには乾燥が一番効きそうという理由で使ったわけだ。
お、乾燥終わった。木より時間かかったな?十二秒?
……なんか干からびたスライムが残ってます。なんだろう、薄水色の棒寒天?乾燥春雨?みたいなやつになった。
一応回収する。後でサカイくんに売ろう。売れるか分からないが。
そしてまたスライムが現れる。
持っていたフィギュアと見比べて、フィギュアには何かが足りないと気づいた。なんだ?
じっと見つめる私。
ぷよんぷよんと揺れるスライム。
……!!!
そうか!足りないのはプニプニの質感か!!!
でも木だしなあ。
「【混沌】!」
混じらないかな〜、と期待してまりちゃんフィギュアを押しつけて言ってみる。
変化なし。
よし、もう一回。気合を入れて、
「【混沌】!!!」
ん???
目の前がいきなり歪んだ。なんかぶよんとした視界に切り替わったし、しかも色が大体同じ……?
スライムどこいった?
頭を動かそうとして、自分の手や足が簡略化されてまるまるプムプムしていることに気づく。
「きゅー?」
言葉も出せない……まさか!?
慌ててメニューを開く。
……【混沌】、貴様私自身とスライム混ぜたな!?どうやって戻るんだこれ!?
今度は視界に真っ赤な影が四つほど映る。そして私に向かってきた。
「おい、なんかデカイスライムがいるっ!!!」
「スライムゴーレムか!?」
「レア個体じゃね!?ラッキー!」
プレイヤーかっっ!私敵じゃないんだが!!!
逃げようと地面を蹴るが、いかんせんやたら弾む足では大して進めず。
アッサリと私の体は光になった。
「なんか弱いな」
おい貴様、失礼だぞ!昇天中でも聞こえてるんだからな!
次会ったらただじゃおかんぞ!覚悟しておけよ!
昇天中も、モンスターには意思があることを確認した私であった。まる。
もう二度とモンスターの前では【混沌】使わない!
今心に決めた!
図書館に併設された神殿の床から起き上がる。
よかった、体が元に戻ってる。死ねばたいていのことがリセットされて便利だ。
こんなことに利便性を感じるのは私くらいだろうが。
そして目に入る神像。
そう言えばお詣りしてなかったな〜。
せっかくだしまりちゃんをセットしよう。神の使いになるかもしれん。
……ない。
うあああああ!まりちゃーーん!
惜しい君を無くした……!
でも拾いに行くの面倒。プルプルにならなかったからな……。
君のことは忘れないよ、だからちょっと冷たい私を許してつかあさい。
めぼしいお供え物がないな、銅貨でいいか。
本を読む老人と、杖を持つローブ姿の青年の足下に一枚ずつお供えする。
思い出した。スライムの干物、どうしよう。とりあえず生産ギルド行ってみることにする。適当に加工しよう。
この干物をどうこうできるのって、なんだ?無難なところは調合とか練金なんだが、レシピはサッパリだしな。
無理して作ったら猛毒になりそうだし、やめやめ。
というわけで料理設備セット。
【料理】でも毒になる可能性はあるが、薬草とか下手に混ぜなければ多分平気。
【毒耐性(微)】の仕事に期待。
とりあえず半分ほどを、使いにくいので粉砕する。すりこぎでゴリゴリ。
見た目が棒寒天だったので、寒天を使うような料理を作る方向で。と言ってもゼリーとチーズケーキ、羊羹くらいしか思い浮かばないわけだが。
チーズケーキはあまり好きではないし、羊羹は小豆を見かけない。よって消去法でゼリーを作ることにする。
この干物、寒天よりもゼラチンに近いと良いんだが。私は寒天よりもゼリーが好きだ!
スライムが植物に分類されれば寒天寄りだろうし、動物に分類されればゼラチン寄りになるだろう。
粉々になった干物数匙ほどを水でふやかす。
ジュースなんかいいのあったかな?
ストレージを漁っていると、買ったものの結局飲まなかった蒼林檎のジュースが。
ブルーハワイシロップも真っ青になる青さの飲み物で、食欲が失せるため死蔵していた一品。
褐色瓶に入っていたから、コップに注いでみて驚いたのだ。
うん、スライム色。
これで行こう。むしろこれしかない。
ジュースをなんとなく温めて適当に砂糖を放り込み、溶けて熱くなったところでふやかした干物の粉末を投入。
入れ物は無いのでバットでいいや。とりあえず水を張ったバットの中に一回り小さいバットを入れて、スライム液を注ぐ。
あとは冷蔵の魔法陣使えば完成。
「おっとっと、」
手元が狂ってバットとバットの隙間、水の中にスライム液が。
「あちゃー、あ?」
水に沈んだスライム液は何故か混じって拡散することなく、分離したままだった。
しかもよく見ると、ちょんっと角が立っている。
「人工イクラか!」
面白くなってまだ鍋に残っていた分でスライムを量産。
「ところで食えるのか、これ」
摘んで一つ口に放る。
あ、意外と美味しい。風船ゼリーのように噛むと表皮が一度破裂して、それがすぐ溶けたあとグニグニとした濃厚な本体が出てくる。
よし、もう一つ。
ちなみに、バットに入れて冷やしたゼリーはどこにでもある普通のゼリーでした。
名前:ジャン・スミス Lv.18
種族:人間 性別:男性
HP:139
MP:151
STR:18
VIT:9
INT:14
MID:45
AGI:69
DEX:89
LUC:56
称号
【混沌神の玩具】【運命神の憐憫】【怠惰神の親愛】【無謀】【マゾ】【命を弄ぶ者】
スキル
戦闘
【盾】【刀】【奇襲】【会心の一撃】【空駆け】【バランス感覚】【毒耐性(微)】
魔法
【魔法陣】
生産
【細工】【採取】【料理】【木工】【解体】【伐採】【書画】
その他
【運】【薄影】【痛覚耐性】【読書】【識別】【魔力制御】【木登り】【地図】【風の心得】【金の心得】【木の心得】【水の心得】【火の心得】
特殊
【混沌】【手抜き】
備考
地味にMIDは高いほうなので、【マゾ】効果もあってここでは死に辛い主人公。
そしてジャンさんや、顔は確認できてないから復讐は無理じゃないかな〜。地味にお気に入りの話。
スライム化中の主人公は、【混沌】効果でシステム上魔物扱いされていたため、主人公を討伐(?)したプレイヤーはPK扱いされません。
ブルースライム【青寒天】
主な攻撃手段は一定時間貼りついて溶かすこと。温度によって周囲を知覚している。