香川鉄道再建会議と四国百貨店問題 2019/12/29 移動
作者が頭を抱えた地方の実態
香川県高松市。
四国の玄関口を自認しているうどんの国だが、そこの大企業が経営危機に苦しんでいた。
それを救ったのはいいが、救った以上は再建しなければならない。
「創業者一族の追放は仕方ないわね。
同時に、社員教育は徹底させるように!」
香川鉄道。
高松の総合百貨店の債務保証に絡んで、総合百貨店の経営危機が飛び火したこの会社。
殿様商売でも有名で『鉄道は要るが会社はいらん』なんて声が出てくる始末。
会社内部の教育と体制改革は急務だった。
「駅のリニューアル、新車の導入、安全関係への投資はケチらないように。
子会社のバスとの乗り継ぎはきっちり整理すること」
地方はこの時期道路の拡張が進み、地方中心都市へダイレクトに行くバスがどんどん出てきた時期でもあった。
結果、鉄道の隣の国道を鉄道会社のバスが走るなんて本末転倒な事態が頻発するのである。
そんな間抜けな事態を避けるため、鉄道の駅を拠点として周辺にバスを走らせ、乗り継ぎの利便性と乗継割引で客をそちらに向けるように対策を取る。
「お嬢様。
四国帝国鉄道の役員が『四国新幹線について話を伺いたい』と接触してきたのですが?」
桂華鉄道社長である橘隆二の報告に私は来たかと顔を引き締める。
金が無い四国帝国鉄道にとって瀬戸大橋線は金づるであり、金はあるがノウハウはない桂華グループは向こうから見たら鴨が葱を背負ってきたようにしか見えないだろう。
「いいじゃない。
運営は向こうに押し付けちゃいましょう。
その代わり、大株主として経営側に入らせてもらいましょうか」
もともと香川鉄道を救済したのは総合百貨店救済のついでである。
そこから四国新幹線に繋がっているので、適正価格で渡してもいいと思っていたのである。
桂華グループが作った四国新幹線は、その所有が香川鉄道になっている。
その線路の上を西日本帝国鉄道が新幹線を走らせるという訳だ。
それだけではこっちの利は薄いので、稼ぎは新大阪駅の増設ホーム使用料で賄うという訳。
「四国帝国鉄道も、高速道路が伸びてくるとバスで負けるしね。
稼ぐならば、外で稼がないと」
最終的には香川鉄道と四国帝国鉄道の業務提携が成立して、四国帝国鉄道の経営安定に寄与する事になる。
そして、総合百貨店のリストラに話が戻ってくる。
財務状況を確認した一条がため息をつく。
「借金については現段階で清算できますが、今後の赤字についてはかなり厳しいと言わざるを得ないですね」
メインターミナルの前に建ったデパートは、地方のモータリゼーションで郊外型ショッピングセンターに客を食われていた。
さらに、総合百貨店も帝西百貨店も百貨店のブランドとしては弱く、車で行ける都市部の一流百貨店と比べられることになった結果負けるという問題が丁度この頃、バブル崩壊と共に噴出してきたのである。
救済に伴ってコンビニへ配置転換することが既に決まっているが、それが無くともこれらの店の閉店はほぼ必然と言えた。
「松山は生き残り確定。
高知は閉店でしょうね。
徳島は一応残します。
で、高松は……」
バブル期にできた事もあって見積もりが甘く、かといって建物がいいから潰すにはもったいない。
駅前という事を利用して、上層階をイベントホールやオフィス化する事でごまかすことにする。
「一条。
厳しく見て、生き残るのは何店舗ぐらい?」
「地方は半分残れば御の字でしょう」
地方に活路を求めた百貨店は、地方とともに沈むことになる。
都会のおしゃれなブランドを欲しがった地方の客は直に都会に行く事を望み、地方の百貨店を見捨てることになる。
「付き合いから、百貨店の紙袋は必要なのかもしれませんが、その中身は何でも良いのですよ」
お中元にお歳暮、冠婚葬祭の品々など、まだこの時期の地方にはそれらの風習が残っていた。
その為、体裁を整えるために百貨店の紙袋が必要となるのだが、中身については……という色々頭を抱えそうになる笑い話がこの頃から発生する。
「え?
という事は、リサイクルショップで売っている贈答品を中古価格で買って、地元百貨店の紙袋で包装してなんてのも有りなの?」
私の驚きの質問に、あいまいな笑みで肯定する一条。
地方百貨店のアンテナショップなるものの一番の売れ筋商品は紙袋である、という笑えないジョークもあるらしい。
「そうなるとどうやって地方の店を維持するべきかしら?」
「TVとのタイアップでしょうね。
そこでの通販のセールと、百貨店からの配送ネットワークで翌日にはその商品が届くようにして客をつなぎ止め、その売り上げで穴を埋めるしかないでしょう。
あとは、イベントで客を呼び寄せるぐらいでしょうか」
「イベントねぇ……」
後日談。
「♪~」
旧総合百貨店高松店イベントホール。
超満員の観客--それでも数百人規模でしかないのだが--の中で私は歌い終わり、拍手とともに渡部さんや地元吹奏楽部員たちと共に舞台裏に引き上げる。
徳島スタートで、高知、松山、高松とまわり、神戸と大阪心斎橋をゴールとするお遍路コンサート、別名『生き地獄ツアー』である。
四国新幹線とAIRHOを使ってもらうために、一番楽なスターである私を起用するというか私で赤字が減るのならばやるしかないわよねというか。
他にも、地域へのホール貸し出しやこちらが抱える劇団のショーの開催、さらには大衆演劇等にも舞台を貸すことでとにかく人を店に集める事を目的にしている。
「お疲れ様でした。
お嬢様」
「ありがとう。渡部さん。
とはいえ、このあと飛行機で東京でしょう?
結構疲れるのよねー」
「でしたら、お泊りになりますか?」
渡部さんの気遣いに私は苦笑して、正論を言った。
そのための東京帰還である。
「一応私、学生ですよ。
学校にはちゃんと出ておかないと♪」
百貨店閉鎖問題
本当にここからバタバタ潰れてゆくだよなぁ。
同時に地方中核大都市の百貨店の売上が凄いことになってゆく。
そごうと西武
四国四県に店舗があったので、ネタにしたがここからがひどいのだ。
いよてつは生き残れたが、ことでんは計画がバブル期だから死に。
とさでん西武はあれはどうしようもない。
徳島そごうは橋がなければなぁ……
なお、この作者、今治大丸、新居浜大丸、呉そごう、小倉そごう、黒崎そごう、井筒屋あたりは色々語れるのだが、語りだすとどれもこれも致命傷になるので消したという……
バスと鉄道の連携
このあたり凄くうまく作られているのが、『バス会社』西日本鉄道である。
かつて住んでいた伊予鉄もバス路線の再編に手をつけたらしいが、地元の調整とかあってゴタゴタした所までは知っている。
紙袋
1)まず、大きくて安い箱商品を買い、その商品を梱包してもらう。梱包を剥がす時は丁寧に。
2)リサイクルショップの中古贈答品を買い、1)で買った紙を使って梱包する。
3)2)の正規品を1)で買うとえらく高いのでこういう裏技が駆使される。
TVとの連携
『レディス4』。
リニューアルする前の落ち着いた雰囲気が実は好きだった。
リューアルされると、かえって見なくなるのは何でだろうなぁ。
TVで紹介、その直後にお店に出して、通販でも翌日には家に届くというのは、百貨店とスーパーとコンビニの全国ネットワークを構築していたから。
なお、それすらいらんという事で物流網を構築するのが某密林で……
四国ジョーク
「四県のみんなで落ち合おう。どこが良い?」
「「「「東京」」」」
そんなジョークが通用するぐらい、東京行き飛行機が出ているのが四国である。
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