野望の階段 小学生編
帝都学習館学園の委員会は、以下の組織になっている。
高等部執行部----各委員会
中等部執行部---各委員会
初等部執行部--各委員会
また、委員会はこんなのがある。
風紀委員会
学校の風紀を取り締まる。
自治権の強みがあるので、『生徒のことは生徒で』という原則で権限はかなり強い。
体育委員会
体育授業の補佐及び、体育系部活の管理と体育祭の運営担当。
業者が入る利権の巣でもある。
文化委員会
音楽・美術系授業の補佐及び、文化系部活の管理と文化祭の運営担当。
同じく金が絡む利権の巣である。
保健委員会
身体検査の補佐や保健室への付き添い等で仕事が多い。
合法的に保健室に行けるというメリットの為人気の委員会ではある。
放送委員会
放送室を拠点に校内放送や壁新聞の発行などで仕事が多い。
マスコミ対策は理事会及び職員室と共にこの放送委員会が学生代表として出ることが決まっている。
図書委員会
図書館管理運営の補佐。
司書の下につき、そのまま図書館に就職というコースもあったりする。
また図書館図書購入の決定権がある程度渡されている。
美化委員会
校内掃除の担当だけでなく校内庭園等の管理も行う。
実態は業者がするのだが、その決定権はこの委員会が握っているのでここも利権がある。
式典委員会
入学式・卒業式の他に体育祭や文化祭の運営にも参加する。
校内の全イベントの管理運営はここが行っている。
これらの委員会には各クラス一人から二人委員が割り振られ、委員長の下でお仕事をする事になる。
で、委員会の組織図はこんな感じ。
高等部委員会--中等部委員会--初等部委員会--委員会委員
だんだんこのあたりから話がややこしくなってくるが、各等部の執行部の下にその等部の委員会がつく形になる。
つまり、命令系統が二重になっているのだ。
高等部委員長の命令と中等部執行部の命令はどっちが上か?
何も知らないと委員は混乱することこの上ないが、日本の会社組織においては年功序列と現場主義から明確で、高等部委員長の命令に従うのが筋だったりする。
もちろん、中等部執行部は面白くない訳で、そんな彼らにはクラス委員という己の手駒がある。
クラスの中での指揮系統はこうなるのだ。
クラス委員--委員会委員
まずこれを小学生で理解しろというのが無理だと思うのだが、そこはお子様。
誰かが手を上げたなら、それについて行けばいいのだ。
クラス委員とはつまりそういう役職である。
あと、生徒会執行部はクラス委員からの立候補とクラス委員による投票によって決められる。
委員会と執行部の同一化を避けるための対策だろう。
もう一つあったな。
職員室や理事会相手の折衝は執行部が基本行うので先生や理事会のご機嫌取りという役目が。
「いや。
地味に、このシステムエグいよ」
つらつらと委員会の組織図を眺めていた私の耳に裕次郎くんが苦笑するが顔は青ざめている。
何がえぐいのかよく分からない私に裕次郎くんはあっさりとそのエグさを言う。
「これ、父さんが居る党の族議員形成システムまんま」
「あ。納得」
要するに、これは族議員の育成システムの応用なのだ。
誰に付けばいいかはその所属と年功序列で決まり、椅子取りゲームから外れると陣笠委員としてクラス委員に落ちぶれるか、派閥の力で復権を目指すかだ。
「ちなみに、裕次郎くんだったら、どういう感じでキャリアを積むの?」
「そうだね……」
少し考えてから裕次郎くんはそのキャリア希望を告げる。
「この生徒会には大蔵委員会が無いからね。
予算は執行部の切り札だから何処かで就かないとキャリア的にはまずいかな?
だったら式典委員からスタートするさ」
「式典委員会?
体育委員会や文化委員会じゃなくて?」
「うん。
学校行事の全スケジュールを握れるのは大きい」
一条もそうだったが、出来る人間は金よりも時間を気にする。
これは面白いなと思ったので心にメモしておこう。
なお、裕次郎くんはゲーム内では主人公の選挙参謀として政争で容赦なく私を追い詰めてゆくのだが。
「次にどこかで執行部入りを目指す。
生徒会執行部は会長選挙があって、副会長・会計・書紀はその会長の指名によって選ばれるからその時に指名されて会計に。
あとは実力を見せれば人はついてくるさ」
「またずいぶん楽観的なキャリアプランね……」
「そりゃそうさ。
僕が指名されるのは確定事項だもの。
栄一くんが立候補するならね」
あ。納得。
そのまま裕次郎くんは楽しそうに笑って、ぽんと私の肩を叩く。
「その時は間違いなく桂華院さんは副会長だから。よろしくね♪」
待てよ。おい。
私、巻き込まれ前提ですか?
そんな事を突っ込む前に第三者の楽しそうな笑い声に邪魔される。
「面白い人達ですね。
私、興味が湧いてきましたわ」
私達の隣に座っている朝霧さんがくすくすと笑っているのを見て、私達は一度会話を収める。
悪い人では無さそうなのだが、堂々と華族閥を名乗って接近してきたのだから、警戒するに越したことはない。
「前々からカルテットの噂は聞いておりましたのよ。
皆様のご活躍、色々と耳に入っておりまして」
「なかなか恥ずかしいですね」
「ですから話題になっていましたのよ。
皆様は何処に入るのかしらと」
朝霧さんとの会話に私は気付かされる。
考えてみると、私達は華族・財閥・政治家・官僚とそれぞれ出身が違う。
それはそのままこの手の派閥で分かれる事を意味する。
「栄一くんも光也くんも多分派閥には入らないんじゃないかなぁ」
「え?そうなの?」
裕次郎くんの言葉に私が突っ込む。
それ初耳だからだ。
「聞いてない」
「言ってないからね」
まるで何かのコントのようなやりとりに朝霧さんがたまらず笑い出す。
そんな事をおかまいなく裕次郎くんはあっさりと種をバラす。
「絶対に派閥からのお誘いが来るから、断るために天下取るって栄一くん言ってたし」
なお、栄一くんは式典委員、光也くんは風紀委員だったりする。
こいつら、流される前に流れをコントロールする為に既に動いていたとは……
「本当に桂華院さんとそのお友達は仲が良いのですね」
朝霧さんの何気ない一言に何も言い返せずにただ頬を赤らめる私が居た。
その後の委員会は何をやったかまったく覚えていなかった。
族議員
特定の省庁と利益団体の間を取り持つ議員の事。
官僚とためを貼る専門知識を有するが同時に癒着の温床にもなった。
金よりも時間
某与党はねじれ国会時は2/3で法案等を通していたから壁一面にカレンダーを貼って国会審議のタイムスケジュールを可視化していたという。
政権交代後の参議院戦で惨敗した時の与党は卓上カレンダーしか無かったとかなんとか。
事の真偽は知らぬが、あの時の国会混乱と今の国会を見てさもありなんと納得する私。