【祝書籍化解説】よくわかるリーマンショック 2020/12/01 投稿
リーマンショック。
2008年9月15日に米国の投資銀行リーマン・ブラザースが破綻したことによって始まる一連の金融危機の事。
なお、リーマンショックは和製英語で世界的には『financial crisis』で呼ばれていたりします。
このリーマンショックですが、負債総額は64兆円という一国の国家予算並みの額になりました。
この負債の元になったのが、サブプライムローンという証券でした。
プライムローンとは『優良者向けローン』を意味するもので、それにサブがついているのですから、サブプライムローンは『優良客の下層向けローン』という意味合いがあります。
ローンというのは借金です。
そして、借金をする際には元本の他に金利を払わないといけません。
優良客よりも信用が低いので、当然金利は高く設定されています。
裏返せば、貸し手側の高金利は借金が帰ってこない可能性の裏返しでもあります。
今でも世界最先端の金融工学を保持している米国ウォール街のトレーダーたちはこのリスクについてこんな解決策をとることにしたのです。
「そうだ。
このローンをバラバラにして投資家に売ってしまおう!」
もちろん投資家も馬鹿ではありません。
高い金利が返済不能リスクの裏返しというのは分かっています。
で、国債など優良の債権と合わせる事で、このリスクを軽減しようと考えたのです。
このローンが返済不能になっても、他の優良債権は支払いが行われるのでリスクが分散されますというロジックです。
このリスクについて安全のお墨付きを与えたのが、格付け会社と呼ばれる連中の格付けで、彼らの格付けを信じた投資家たちはこのサブプライムローンに群がったのです。
また、投資家たちも馬鹿ではありませんでした。
格付け会社を信用しつつも、返済不能が発生した際にお金が返ってくるように保険を掛けたのです。
この保険のことを、CDS『クレジット・デフォルト・スワップ』と言います。
さて、上のロジックが機能していたならば、リーマンショックなんて起こるはずがありません。
という事は、上のロジックに致命的な欠陥があった訳です。
その致命的な欠陥は、『バラバラにして売ったので、中身がわからない』というものでした。
サブプライムローンのばら売りはこんな感じで行われました。
サブプライムローン100万円に優良国債100万円を足して100万円の証券2つという感じです。
ここで問題になるのが、この証券、投資家は金額と金利についてはわかるのですが、中に入っているのがサブプライムローンと優良債権のどちらなのかがわからない点でした。
だから、投資家は万一を考えて100万円の証券を買った際に、返済不能時に100万円が入手できる保険を結ぶのです。
気づきました?
返済不能の可能性があるのはサブプライムローンの100万円だけのはずなのに、保険は証券二つ分の200万円かけられた事を。
これがリーマンショック時に金融危機の引き金を引きました。
中身がわからずにすべてを不良債権扱いにせざるを得なかったリーマン・ブラザースの負債総額は繰り返しますが64兆円です。
つまり、リーマン・ブラザースの破綻後、この64兆円分の保険の請求が保険会社に行き、連鎖的に破綻に追い込まれたのです。
そして投資家は損失の穴埋めの為に株の現金化を急いで世界各地でどんどん株をたたき売り、株価が大暴落するという形でリーマンショックは世界中に波及していったのです。
なお、リーマンショックの被害ですが、日本は相対的に少ない被害で乗り切る結果になりました。
その理由は簡単で、そのサブプライムローンは住宅を対象にしていたから、つまり不動産取引のローンだったからです。
90年代のバブル崩壊で不動産の大暴落という不良債権に苦しんでいた日本の金融機関はその教訓をまだ覚えていました。
人生万事塞翁が馬というのはこういうことをいうのでしょう……
イラスト
景様
これについては解説動画があるのでご紹介。
サブプライムってなんだ!?【しくじり企業】~リーマン・ブラザーズ~前半
https://www.youtube.com/watch?v=n_GC244G2Rs
史上最悪の倒産劇【しくじり企業】~リーマンブラザーズ~後編
https://www.youtube.com/watch?v=Dq4ihsYiozs