家へと帰る道で
この小説に目を留めていただきありがとうございます。
皆様の暇つぶしになれば幸いです。
その日、友人のA君は小学校が終わった後、まっすぐ家に帰っていました。
いつもなら誰かしら友達と寄り道をして遊んでから帰るのですが、その日はちょうど全員都合が悪いらしく、誰もつかまらなかったのです。
仕方ないので家でゲームでもしようかと、彼は校門を出て北側に歩き出しました。
家への道を歩いていると、途中で商店街を抜けることになります。彼は慣れたものだと商店街を抜けていきましたが、その途中、ふと彼は誰かから見られているような感じがして、思わず立ち止まったのだそうです。
周囲を見回してみると、自分の後ろにある電柱の陰から大柄の男性が一人、半分体を隠しながら自分を見ていました。
電柱の陰になっていることもあり、顔は良く見えませんでしたが、うだるような暑さだというのに真っ赤な毛糸のセーターを着込み、こちらをジッと見つめているその人影を見て、A君はあれはヤバイと本能的に思ったそうです。
逃げ出そうとしたのですが、体がまるで痺れたように指一本動かすことができません。
ちょうど後ろを振り返った格好のまま、人影と目が合ったまま動けなかったのです。
A君は恐ろしさからか、夏だというのに凍えるような寒さを感じていたと言います。
目を逸らしたらいけない、そんな思いが彼を縛り付け、歯を食いしばってこちらを見ている人影と目を合わせ続けていたその時です。
「……がう、……えれ」
不意に、人影が小さな声で何かを言ったのが聞こえました。すると今まで金縛りで動けなかったA君の体が、フッと自由になったのです。A君はこれ幸いと慌てて踵を返し、全力でその場から家へと向けて全力疾走で駆け出しました。
必死に走りながらも時々振り返ると、必ずその人影は電柱の陰から一定の距離を保って彼を見ていました。
A君はもう半狂乱になりながら休むことなく走り続け、息も絶え絶えになりながら家へとたどり着き、玄関へと転がりこんだのです。ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、後をついて来ていたあの人影が、玄関を開けてくるんじゃないかと、急いで鍵をかけて玄関を睨みつけます。
どのくらい時間が経ったでしょう。
1時間か2時間か、もしかしたらもっとそうしていたかもしれません。
不意に、何となくですが「もう大丈夫だ」とA君は思ったそうです。何でそう思ったかは、本人にもわかりません。ただ、もうアイツは来ないと直感的に感じたと言っていました。
安堵したのと同時に、何だったんだアイツはとA君は怒りを感じ出しました。
もしかしたら変質者かもしれないし、両親に報告しなければと思いつつ、自分の部屋へと向かいました。
その後はいつも通り、部屋で宿題をしてからゲームをして、共働きの両親が帰宅してから夕飯を食べてベッドに入ったのだそうです。眠る前に、結局アイツは何だったのかと考えましたが、どれだけ考えても答えは出ず、結局そのまま眠ってしまったようでした。
そして次の日、目を覚ました彼は特に何事もなく朝食をとり、学校へと登校しました。
これだけならばきっと、ただの変質者に付きまとわれただけだと思うでしょう。しかし、この話の本当に恐ろしいところはここから。A君が学校にきてからふと気づいたことなのです。
実はA君の家は学校の北側ではなく、南側にあるのです。
それだけでなく北側には大きな山があるばかりで、商店街はおろか民家すらまったくありません。ですがA君は確かに北側へと歩いて帰り、そして自宅で一晩過ごしたという記憶がありました。
彼が今日の時間割に合わせて用意した教科書やノートも、しっかりと揃っていたのです。
一体彼は、どこへ帰ってしまったというのでしょうか。
そして彼が見た人影は、いったい彼をどうしようとしていたのでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
作者のラモンと申します。
初めてのホラー作品を書いてみました。
ちょっとテーマと違う部分が核心になってしまっている気もします……反省。
良ければ感想などお聞かせください。
それではまた、別の作品でお会いしましょう。
ラモンでした。
※思いつくままに執筆したので、内容や記述がおかしな場所があるかもしれません。
もし内容が繋がっていない、矛盾している、誤字脱字などお気づきの点がありましたら、感想などでご指摘ください。