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高い城壁のそびえ立つ街。それが王の住む街。英雄の国。
幾度もの魔物の進行を耐えたのか、城壁は所々に傷を負いながらも頑丈に街を守っていた。
街へ入ると、老若男女様々な人がそこにはいた。
そして、誰もが私たちを歓迎してくれた。
旅の疲れもあるだろうといって宿を紹介され休んでいると、ひっきりなしに誰かが顔を出しては私達へいたわりの言葉をかけてくれる。
心地良い眠気が襲ってきた。もう遅い、今日は眠ろう。
◆
王は城ではなく、普通よりも少し大きな家で私たちを待っていた。
豪快に笑う王曰く、この国には王を住まわせる城など無いのだという。
そして王は言った。この国の一員にならないかと。
勇者などやめて、共に生きないかと。
我々は同じなのだと。
この日は返答を待ってもらい、宿へと戻った。
みんなと宿で一晩話し合い、返事を決める。
明日、また王の元へと向かおう。
◆
朝早く、私たちは旅の支度を終え、王の元へと出向いた。
私たちの姿を見て王は理解したのか、少しだけ悲しい顔をした後、初めて出会った時と同じように豪快に笑う。
去り際、一言だけ投げかけてきた。
「お前達は負けるな」
人々の希望、羨望、嫉妬、悲しみ。そして、自分の中の大きすぎる絶望に負けた悲しい英雄の言葉を背に、私たちは英雄の国を後にした。
以降は血液などによる汚れにより、最終ページ以外解読不能。