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街に滞在中、英雄の国からの使いだという一団が現れた。
山賊か野党の集団にしか見えない姿に警戒するが、街の人達の対応を見るに、それなりに信用を置ける集団らしい。
どちらにせよ、相手の人数や場所を考えるに付いて行くしかないようだ。
いざという時の為、逃げる準備だけはしておこう。
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意外なことに、彼らはとても紳士的だった。
更に、場数を踏んでいるのか、魔物の対処も素早く、動作も洗練されている。
勇者と戦士は既に彼らに溶けこみ、酒を酌み交わしながら歌を歌い、そんな彼らを見て魔法使いが楽しそうに笑っている。
おとぎ話の中にある冒険者の姿が、そこにはあったようにも思えた。
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王の住む街までの旅路の中、彼らは多くのことを私たちに教えてくれた。
少人数での魔物の対処法であったり、有効な魔法の活用法であったり、果ては食用に適した魔物の種類であったり、果てには調理法にまで及んだ。
そして、羨望の眼差しを向ける私たちに対し、彼らは口々に言う。
「我々は英雄などではない」
私たちと何ら変わりのない、悲しい人達がそこにはいた。