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女王は滞在の代わりに、旅費の支援を提案してきた。
その為の対価は、滞在の間、謁見を決まった時間に行うというものである。
謁見の場にて女王は、これまでの旅の話を聞かせるよう命じた。
宿に戻りこれを書いている今も、女王の真意がわからない。
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女王は様々な質問をしてきた。
冒険の旅が、決して英雄譚などで語られる希望に満ちたものではないこと。
食料や水など、様々な問題が山積みであることなどを話すと、しきりに頷いては何かを記録させていた。
目的がわからない分、不気味さを感じる。
翌日の謁見は、私と魔法使いのみが呼ばれた。
相手は女性ではあるものの、王であることに変わりはない。警戒を強くしようと思う。
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なぜ女王は私たちの話を聞き、涙を流したのだろう。
しきりに私たちに謝る彼女に、私も魔法使いも困ってしまった。
ただ、不思議と悪い気持ちではない。
この日の夜、久しぶりに魔法使いと私は同じ部屋で語り明かした。
彼女と笑って話をしたのはいつ以来だろう。
奇妙な女王に感謝を。