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勇者が辿り着いた村には、移動魔法用の魔方陣はあるものの、充分な施設はなかったらしい。
私たちは今、故郷で静養している。
家族は私を見て一日中泣いた。
私はそんな家族を、どこか遠くに感じていた。
◆
身体が動くようになって数日後、教会の孤児院で養っている子供たちがお見舞いに来てくれた。
今の私は、子供たちの目にどのように映っているのだろうか。
◆
次の日、誰ともなしに勇者の元へと集まり、言葉を交わした。
翌日、旅を再開することが決まった。
決して使命にかられてなんかではない。
知り合いの多いこの場所にいるのは辛すぎるからだ。
家族には旅を再開する事を告げなかったが、手紙だけは残してきた。
『ごめんなさい』
それだけ書いた手紙を。