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街を脅かし続けていた魔物の集団を殲滅したとして、街の中での私達は英雄扱いされた。
産まれたばかりの赤ん坊を一度抱いて欲しいと赤ん坊の母親に言われたが、やんわりと断る。
私たちは英雄なんかじゃない
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勇者が次の街への出発を王へ進言したが断られた。
もし命に反するならば、罪人とみなすとまで言われた。
どうやら王は、私達を国の守り手とし、飼い殺しにしたいようだ。
街で噂されている、隣国との戦争が近いという噂は本当なのかもしれない。
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何処でも監視の目が光っている。
精神的な疲労が溜まり、常に身体が重い。
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勇者が街からの脱走を提案した。
これだけの監視の中、気付かれずに逃げる事は無理だという事はわかっている。
逃げれば罪人の烙印を押される事もわかっている。
それでも誰も反対しなかった。
どうせ、私達はとうの昔に罪人なのだから。
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必要最低限の荷物をまとめ、深夜に逃げるように宿を飛び出した。
監視者に見つかったのか、すぐさま街中に鐘の音が響き渡る。
怒号と悲鳴が響き渡る中、私達は走り抜けた。
途中、家の中から怯えた目でこちらを見つめる、名付けを断った赤ん坊を抱いている母親を目の端に捉えた。
きっと彼女は、自分の子を英雄にしようなどとは思わないはずだ。
どうかあの子が、普通の人生を歩みますように。