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お酒を初めて飲んだ。
とても不味い。だが、ふわふわとして色んなことを忘れられる。
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勇者は部屋から出てこない。私も部屋から出ようと思わない。
誰か私たちを助けてください。
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魔法使いが戻ってきた。
あれからどれぐらいの日が経ったのか。日付の感覚が曖昧だ。
魔法使いの頬はげっそりとこけ、一言も喋らない。
彼女の澱んだ目は、じっと私を見つめている。
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魔法使いの回復を待っていたのか、全員が揃ったすぐ後、王に再度呼ばれた。
近場の遺跡に向かい、魔物の殲滅を行うようにと命じられる。
数日の猶予を勇者が申し立てると、国で支払った魔法使いの蘇生の代金や、現在宿泊している宿の代金などをちらつかされ、翌日の出発を命じられた。
帰り際、王に私だけ呼び止められ、今後は王宮付きの司祭にならないかと誘われた。
好色な目でこちらを見る王が、私を司祭として求めていないことはわかっていた為、その場で断った。
一刻も早くこの街を出たい。