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外交 1


ウィルは、アドルフさんからの指導を受けるようになった。あの日、国王様にお願いしたそうな。

うん、ケヴィン王子達が心配そうにして、何度も様子を見に行っていた。もちろん、アドルフさんに目をつけられるから、偶然や通りがかりを装おって。

おれもたまに様子を見に行った。


ウィルの向上心や果敢さは見習いたいね。

おれは、あそこまで我武者羅になれるかな?その時にならないと分からないけど、いくら格上だろうと諦めたくはないなぁ。


星の実にはゴロツキが現れたそうだけど、年長者を中心に追い払えたそうだ。後で様子を見に行ったロカがハンターになれるってお墨付きを出してたからね、次の世代が育ったら街に来るんじゃないかな?

学力も申し分ないレベルに仕上がっているとか。


クスターは、うん、ヒースはそっちの毛かあったのかな?何と言うべきか、寡黙で主人命なアサシンに進化してた。

別人過ぎて怖いんだけど(・-・`;)



そして、吉報が一つ。

セアラ王女の婚約者である王子が成人を迎えられたとのことで、正式な婚姻に向けて国に招きたいとか。

外交、という形でコンタクトをとり、二人の親睦を深めようとするらしく、王妃としての素質を見る嫁入り試験みたいなものになるそうだ。


正式な婚姻はこの外交次第で決まる。

もし決まれば、その年中で式を挙げることになるね。


んで、大役を控えたセアラ王女の身辺警護を誰にするかで、結構もめた。両陛下の騎士である近衛を出す訳には行かず、第二騎士団を出すのは怖い、第三騎士団では力量に不安が、っとこんな感じで貴族やら重鎮やらが煩かった。

国王様の無表情が見えてないんだろうねぇ?こっちは見てて寿命が縮まる思いだったってのに。よくあの空気で保身をベラベラと話せるもんだよ。


まぁうん、結局ギルドに任せようってなるのは良いよ?でもね、よりにもよってアイツ等、「下賎な者達を王女の側には」だの「それなりの身分ではないと」だの注文ばっかり付けてきやがった。


ギルドのランクは最低でも銅。

貴族ないし、それなりの地位か後ろ楯のある者。

国の顔にもなるため、見目の良い者。

王女自身が認める者。

人数は印象の悪くならないように一人だけ。


もうね、ケヴィン王子ですら目が据わってた。

相談役ってだけで同席してたけどさ、そろっと手を上げたよね。


「どうされた、相談役殿。」


重鎮の一人、いたって真面目な人が気付いてくれたので、その場に片膝をついて頭を垂れる。


「口を挟むことをお許し下さい。」


「構わぬ。」


国王様の許可が降りたので、言葉を続けた。


「僭越ながら、私にセアラ王女殿下の護衛を任せては頂けませぬでしょうか。」


「ほぅ。」


「そう言えば相談役殿のランクは銀でしたな。」


「おぉ、そうでしたな!」


相談役という地位、今までの功績、見目の良さ、あれこれと話が飛び交い、セアラ王女に判断が委ねられた。


宵の空のような紺色の瞳がひたりと向けられ、空気が変わったように感じた。


「私だけでなく、マリーとユイを護っていただけますか?」


「傷一つ付けることなく。」


「・・・お願いします。」


何で間が空いたのかは、後々呼び出されて国王様と王妃様、王子達と対面するまで分からんかった。


原因は、おれが11歳を間近に控えていた事。

外交に行っている間に誕生日を迎える事になるから、祝えないって残念がられた。多少ずれても気にしないのにねぇ?

渋る王家の皆さんには何とか後日祝うって事で納得してもらい、マリーさん達と顔合わせをした。


マリーさんは言わずもがな、セアラ王女専属の執事――じゃなくて、唯一のメイドさんで、ユイ君は専属の騎士。二人ともセアラ王女とあまり年は離れていないから、主従にプラスして兄妹、姉妹感が滲み出る感じだ。


ユイ君は、どちらかと言うと美人だから、一見女性と間違えそうになる。まぁ、本人はその事を気にしていて、ナンパでもしようものならレイピアでこま切れにされる。

いやね?見せてもらったんだけど、ユイ君のレイピア、刺すのも切り裂くのも可能な特別製でさ、本人の技量もあって高速剣撃なんよ。敵に回したらおれはボロ負けする、おっかねぇ(;・-・)


「詳細な日程はまた後程。」


「分かりました。」


いったん部屋を去り、自室で荷物を確認しておく。

服は、ギルドとして動くなら機能重視にした方が良いか?あまり質素すぎず、それでいて華美でないもの、か。


ちなみに、お相手はノーマード王国の第一王子、ピーター・ノーマード。

ノーマード王国には遊牧民が休憩地点として利用していた場所が少しずつ大きくなり、ある時代をきっかけに国へと発展した歴史がある。社交的で明るい人が多く、流通の中心となる事も多いため商業面に秀でた者も多いとか。

その反面、職人気質な人も多いそうで鉱物加工と織り物に関しては世界的に知られた匠もいるそうな。

農業の中でも畜産業が盛ん。

ノーマード王国の牛乳、牛肉、蜂蜜の三つは名産で建国当時から根強い人気を誇ってる。


ロカ達から「お土産よろしく」って言われてるから何かしらは買って来ないとなぁ。


行きに馬車で一週間、滞在が二週間で、帰りは空路で三日、長引いても四週間で帰ってこれる予定になっているとか。

いつどこまで進み、どこで休むのかは明日聞くことになるだろうね。


セアラ王女の結婚、か。

あっという間だなぁ。


執筆速度が遅くて申し訳ない。

一週間以内に更新します。

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