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ただいまと話

忙しくて投稿が止まってしまいましま、申し訳ありません<(_ _*)>

週一を目指して頑張っていますので、これからもよろしくお願いします。


二週間の教育指導を終え、ロカ達と帰路についた。

『星の実』の皆は一生懸命に学んでくれた。

それこそ、死に物狂いのように。

おかげでこっちが焦るくらい、習得と成長が早かった。急遽、ロカと打ち合わせをし直したり、教材を増やしたりとてんやわんや。何とか一通りの事は終えたから、後はたまにロカが立ち寄って様子を見たり、クスターを定期的に使いとして出すことで調整をすることにしてる。


時間を作って遊びに行きたいんだけど、そこは国王様と要相談かな?まぁ、最低でも一年に一度は必ず顔を見せに行くけど。


ゴトゴトと揺れる馬車の中で、ロカがおれの頭を撫でてきた。


「お疲れさん。」


「ロカもお疲れ。」


「おれはここに来てもう十年以上だが、ジャックには敵わねぇなぁ。」


ちょっとびっくりしてロカを見る。


「生きることに必死で、周りに手を差し伸べる事なんてほとんどなかったからな。それに、ジャックほど強くもなれない。」


ロカの目に宿る、悲観や自嘲の色。

違う。


「おれは、ロカの思ってるほど優しい人間じゃないよ。おれは恵まれた環境にいるから、鍛える時間も、お金も、余裕もある。もし、おれの周りに今いる誰かが欠けていたら、ここまで来れてなかった。」


自分の手を見る。

まだ小さな手。


「たぶん、おれは強欲なんだよ。おれに関わる大切な人達を、二度と(・・・)奪われたくないだけ。そのためなら、誰かを利用することだって厭わないし、誰かを殺すこともできる。」


星の実に残してきた、自我もない壊れた子達。

抜け殻のようなあの子達をおれは利用する。


力があるだけでは守れないと知った。

協力者がいれば有利だと学んだ。

誰かを失うことの怖さを思い知った。


「王子達も、オリバー達も、ロカ達も、おれのかけがえのない存在だ。星の実の子達も、ね。それでも、誰かを守るためなら皆を利用する。・・・おれからすれば、ロカは優しくて真面目だ。素知らぬふりもできたのに、おれを助けてくれた。」


ロカがいなければ、あの日の内におれは死んでる。

その方法を教え、ロカを助けたヒースとミングがいなければ、あの店で会うこともなく、ウィル達の命も危うかった。


三人の内、一人でも欠けていれば、おれはいない。


「救われたから、誰かを助けたいと思えた。今のおれを作ったのは、ロカ達も含めた皆だ。でも、ロカから見れば、おれはたくさんの事をしてるように見えるんだろうね。」


「違うのか?」


「違うさ。普通ならもっと時間をかけて、じっくりとする事だよ。それを、おれは急ぎ足でやってるだけ。言うなれば、突貫工事だ。ちゃんと調整をしていかないと、数年で瓦解する状態で無理に事を進めてる。」


当たり前だけど、何かの組織や施設を作るなら、一年程度はかかる。下準備をたくさんして、きちんと計画を立てて、緻密に、的確に。


「おれは身勝手だからさ、もし、明日消えてしまっても、いつも通りの日々が続いてほしいんだ。だから、今やれることは全てする。おれが消えても、変わらず生きて行けるように。ただ、それだけなんだ。」


残される皆が、ちゃんと生活できるように。

幸せになれるように。


トンッとロカの頭が左肩に乗せられた。


「早く、知りたいな。おれ達のこと。」


「・・・そうだね。」


おれ達がどちらの存在で、あって良い者なのかどうか。


 + + + + + + + + + +


ギルドに馬車を返してロカ達と別れる。

別れ際にロカから頭を撫でられた。


「叱るのは程々に、な?」


「分かってる。クスターと星の実、頼むな。」


「おぅ。」


クスターを連れ帰ると色々と問題になりそうなので、ロカの所で教育することに決まった。ヒースとミングにかるーく聞いてみたら、暗殺術やら何やら仕込ませるそうな。


あの二人、かなりヤバいぞ(・・;)

優秀な人材は嬉しいけどさ?歩く拷問具じみた存在になりそうな勢いなんだって、いや、真面目に。ごめん、クスター頑張ってくれ、おれには止めれん。


城に戻って、国王様に報告。

少し目を見開いて、申し訳なさそうに頭を下げられた。


「嫌な役をさせてしまったの。」


「いいえ、誰かがやらなければならない事でしたから。それに、法を潜り抜けてどこにでも現れる彼等を捕まえるのは骨が折れます。今回は偶然で、運が良かっただけですよ。むしろ、孤児院の件が事後報告となって申し訳ありません。」


「気にするな。あぁ、それと、ウィルのことだが。」


ん?


「ノエルとシルバから聞いておる。一先ず、謹慎をさせているから、部屋にいるはずだ。ジャックの好きにして構わぬ。」


「承知いたしました。」


一礼して、場を去る。

すぐに向かったのはウィルの部屋だ。


出迎えたシルバ君が急いでウィルの寝室に消えていった。ノエル君がソワソワしつつも紅茶を用意していたから、テーブルについてゆっくり待つ。

二人の顔に色濃く残る疲労から見るに、荒れたのかなぁ。


五分ほどで、寝室からウィルが出てきた。

ちょっと絶句する。


ボサボサで心なしかくすんで見える金髪に、濃いクマを縁取られた淀んだ深緑の瞳。やつれきって、生気のない表情と足取り。よれよれのシャツとズボンで、いつものウィルの面影はなかった。

それでも、きちんと自分の足で歩いているし、不安をありありと浮かべる目はちゃんとおれを見ていた。


うん、もしシルバ君に連れて来られてくるなり、おれから視線を外すようなら叱責もんだったよ。


イスに座ったウィルに紅茶が出され、ゆっくりとおれは指を組む。オズオズと向けられた視線。


「どうして、あんな事をしたのか、教えてくれる?」


ひゅう、と掠れた呼吸が聞こえた。

ノエル君とシルバ君は離れた所で微動だにせずにいる。


ウィルはうつむいて、肩を震わせていた。


「だって、おれだって強くなった。守られるだけの子供じゃないっ。いっつも、ジャックは一人で何かしようとするのに、おれには何も任せてくれないっ!」


透明な宝石を散らせて、ウィルはおれを強く睨んだ。


「ジャックにとっておれは何?!王子だから傷付かないように守ってるの?弱いから邪魔なの?何でいっつも何も教えてくれないの!!」


「・・・ウィリアム。」


思いのほか、低い声が出てしまった。

ごめん、今かなり驚いてる。


肩を跳ねさせておれを見るウィルに、少しだけ息を多めに吐き出す。子供だ子供だと思って、縛りすぎたかな。勝手にお兄ちゃん気どって、我慢させたかな。


「自分の立場は分かっているよね。」


「・・・クリーオヴ王国第七子で、第五王子。」


キュッと唇を引き結ぶウィル。


「そして、僕の義理の弟。」


付け加えた言葉に、ウィルがハッとした。

そうだね、最近忙しさにかまけてきちんと話せてなかったもんね。不安にもなるよね。

勉強も以前より高い水準のものに変わって、多くの事を知って、力も身に付けた。たくさんの現実を知って不安にもなっただろうし、おれはいつまでも子供扱いだから、余計に不安や焦りは強かっただろう。


「確かに、ウィリアムは大切な国の王子だよ。でも、それ以前に僕の大切な弟なんだ。怪我をさせたくない、人の闇を見せたくない、そう思ってウィリアムを遠ざけてしまった。」


「ジャック?」


「ごめん。」


頭を下げたら、ガタガタンッと音をたててウィルが駆け寄ってきた。


「ちがっ、何でジャックが謝るの!悪いのおれなのに!」


「思い詰めさせたでしょう?」


「相談しなかったのおれなのに、ジャックは悪くないっ。・・・ごめんなさい、約束破って。」


ぎゅう、と服を握り締めたウィル。

そっと抱き寄せて、頭を撫でた。


「もう、しないでね?心臓が止まりそうなぐらい驚いたから。」


「ごめん。」


「それと、対処法を学んで、アドルフさんからの許可が出るまでは、危ないことは禁止。焦らなくて良いんだよ、ウィルには時間がたっぷりあるでしょう?僕のように急がなくて良い。」


「・・・分かった。いつか、ジャックの隣に行くから。」


「うん、楽しみにしてる。」


大切な子を危険から離すのではなく、危険から身を守る術を教えることが大切である。


そう知っていたはずなのに、おれはウィルを縛ってた。

慢心、いや、調子に乗りすぎたか。

反省しないとな。


ウィルは国王様にお願いをするとかで部屋を出ようとしたから、そっと引き留める。


「ジャック?」


「部屋を出る前に、身嗜みを整えようね。」


「あ・・・。」


慌てて着替えに行ったウィルをノエル君とシルバ君が追いかけた。


「うわ汚なっ?!シルバっ、お前着替えた後の服を放置したのか?!あれだけすぐ渡せと!」


「敬語抜けてるぞノエル。ちょ、ウィル!服をひっくり返すな!おれ達がよういするから!まず落ち着け!」


「そういえば、ノエルもシルバも顔酷いぞ?」


「「誰のせいだと!?」」


にぎやかだなぁ(*´・∀・)


次は、17日を予定しています。

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