苛立ち
いつの間にかブックマークが100越えしてました。(;゜Д゜)
本当にありがとうございます!
頑張って定期更新します!!
城内の案内は滞りなく終わった。
あちこちで女性に色目を使おうとする堕王子には、仕方がないため魔法で口を塞ぎ、無理矢理連れていった。
騎士の訓練を見学する時には、かなり嫌そうな顔をしていた。
「ここは訓練場となります。全ての騎士は、必ずここで訓練を受け、時には自主的に練習を行っています。」
「汚ない。」
本当にこりねぇなてめぇ。
堕王子は若干の潔癖なのかも知れんけどさ?
努力してる奴等を汚ねぇとは何様だ?
「ハッハッハッ、ジャクレイン殿は魔法に長けているとお聞きしたゆえな、剣術は馴染まんのだろう。」
うわっ?!
アドルフさん何でいんの?!
いや、めっさ親しげに肩叩いてるけど、堕王子びっくりしてるからね?アドルフさんの心はミスリルか何かかな?
「魔法は便利だが、反動もある。口を封じられれば詠唱もできんからな。諸刃の剣よ。」
「おれはそんな失態しませんから。」
失態させてやろうか?
っと、アドルフさんがおれを見たから小首を傾げておく。
「ジャックではのぅ・・・よし、ちょうど良い。ジャクレイン殿、あやつ等に稽古をつけてくれるか?魔法相手は中々できぬからな。」
アドルフさん?煽ってんの?
一発殴らせてくれません?おれが何さ?
堕王子はすっげぇ顔しかめてたけど、この流れで断れるわけないよねぇ?渋々了承したよ。
審判役の人に連れていかれてた。
「ジャック、少し休め。」
顔が酷いことになっておるぞ、と頬を摘ままれる。
痛い痛い!無表情になってんのは自覚してっけど?!
ほっぺた千切れる!!
「アレが嫡男とはなぁ。」
「本当になれば国が滅びるでしょうね。」
「そう断言してやるな。」
自分も笑ってんじゃん。
第二騎士団との模擬戦を眺める。
騎士が円陣を組み、堕王子を囲んだ。
鼻を鳴らした堕王子は広範囲を対象に水の魔法を使う。
殺傷能力は無いが、昏倒ぐらいはする威力のもの。
使ったのは古代マルヴ語か。
でも重ねがけしてたな。
「ほぅ、魔法に慢心するだけあるな。」
腹立たしいことにな。
重ねがけは威力が上がる分、扱いは難しくなる。
素人には使えないものだ。
余波はこっちにまで飛んで来た。コントロールがずさんなのか、それともワザとなのか、がっつり水よトゲだ。
アドルフさんは軽く避けていた。反射神経すごすぎるだろ。
おれの方に来るのは、魔法で防ぐか。
「『炎舞』打ち払え。」
カーテンのように下りた赤い炎が飛来する水を蒸発させる。以前、ラニアさんが使っていた火の魔法。
じゃっかん自滅してるような気もするけど、炎を凝視はしてないから、さほど精神的ダメージはない。
いい加減、慣れねぇとな。
堕王子は円陣の影にいた手練れ達に強襲をくらい、魔法で対応していたが、あー。
アドルフさんを見る。その、ものすごい、良い笑顔だね。
ちょい、これが目的?意地が悪いにも程があるぞ?
「ふむ、よしジャック、お主も行ってこい。」
はぁ?!
いや何笑顔で言ってんの?!
ちょ、審判!!模擬戦終わるな!!準備すんな!!
くっそ!どうやってもおれは出んのかよ!
不機嫌な堕王子と入れ替わり、桜草に手をかけた。
開始の合図。
円陣を組まれる前に空に行こうとしたら、アドルフさんから殺気がきてギョッとする。何で?!
「あぁ、ジャック。魔法はなしでの。」
言うのが遅い!!
練っていた魔法を破棄し、走る。
近い騎士は軽く転ばせ、奥にいる指揮官を狙う。
立ちはだかった巨漢の腕を足場にし、肩の上を飛び越える。着地点で待ちぶせされていたので、桜草を鞘ごと剣にぶつけ、勢いを殺さず押し倒し、別の剣を防いでお隣にぶつける。
綺麗に並んでいたもんだから、ドミノ倒しになってた。
指揮官を守る、あきらかに手練れの皆さん。
致し方なし。
「後で治療を受けて下さいね。」
桜草を抜く。
薄く広がる赤い模様が光を反射し、赤い燐光が舞った。
足をそろえて立ち、桜草を前に構えれば、警戒されたのか少し騎士が後ずさる。
うん、騎士の人とはたまに手合わせしてもらってたからね。この構えは知られてるだろうさ。
下手に近寄るとマズイってこともね。
躊躇っていたけど、数名が斬りかかってくる。
一人は桜草で軌道をずらし、後ろの方とぶつけ、別方向からきていたのは、寸前でしゃがみ、前方の人との相打ちに。
ちょっと?今「えげつねぇ」って言ったの誰かな?一応、致命傷にはならないよう確認して避けたからね?
「参りました。」
指揮官の人が降参したため、模擬戦終了。
負傷した人はすぐに治療を受けに連れて行かれた。
アドルフさんの所に戻ろうと踵を返せば、堕王子の顔が面白いことになってた。クシャッてなってる。吹き出しかけた。不機嫌になった赤子みたいな顔だぞ?
清潔の魔法をかけて戻れば、アドルフさんに苦笑される。
「お主、鞘ごとはどうかと思うぞ?」
「大丈夫です。作り主に許可はもらいましたから。」
「しかし、魔法を使わずに騎士団を抑えるとは凄まじいの。やはりハンターは良い刺激になったか?」
「手加減をしていただいていますからね。胸を借りました。ハンターは、やはり魔法だけでは限界がありますし、護身としても剣術は必須かと思います。」
「そうかそうか。」
頭をガシガシと撫でられた。
だから縮って!!
堕王子は四六時中不機嫌だったが、食事では少し機嫌が良かった。飯と女が好き、か?
まぁ、厨房の人達が作ってるからな。かなり美味しいだろうよ。
王子達との交流では、案の定だった。
セアラ王女に馴れ馴れしく触れた上に口説き始めやがった。
「『縄蛇』。」
闇属性の魔法を使い、ロープでグルグル巻きにする。
ロープを引き、無理矢理席に座らせた。
「セアラ王女殿下、申し訳ありません。」
「大丈夫よ。少し驚きはしたけれど。」
堕王子ときたら、それはそれは、射殺さんばかりの目でおれを見てくるもんだから、思わず頭を押さえた。
「ジャクレイン様、この際貴方が貞操観念をどう認識しているかは聞きませんが、女性を見かけては声をかける、体に触れるという行為は避けて下さいと、何度も申していますよね?」
「美しい女性を褒めて何が悪い。」
「褒めることは大変結構。僕が言っているのは、触れるなということです。お分かりですか?触るな、誘うな、口説くな、たった三つのことです、子供ではないのですから守れますよね?」
ローザ王女がセアラ王女の手を拭き、汚らわしいものを見るような目を堕王子に向けていた。
堕王子もさすがに黙ってる。
「まして、セアラ王女殿下には婚約者がおられます。誰彼構わずに口説けば国際問題になること、ゆめゆめお忘れなきよう。」
魔法を解き、王子達に一礼して下がる。
ケヴィン王子から不憫そうな顔をされた。
会話は、ハイスビル王国のことやこちらのことで、あまり深い話まではされなかった。
ハイスビルは島国ゆえ、水産業と商業が盛ん。話を聞くと、伊国に近い環境と文化のようだ。パスタが美味しいと言っていたから、なおのこと。
対して、こちらは武術、特に剣術が広まった国。
15年に一度行われる祭典があるらしいが、それが昔の名残であり伝統。もちろん、魔法にも抜かりはなく、他の国から応援要請が来るぐらい優秀だ。
その関係で、商業と武器産業が盛ん。
ふむ、一つ認識を改めないといけないな。
堕王子、勉強は疎かではあるが、知識はある。
特に下町の生活や着眼点は中々目を見張るものがある。たぶん、口説いた女性から情報は集まってるんだろけど、
ちゃんと自分なりに考えている所は褒めても良いだろう。
島国ゆえに、海から来る魔族で必ず死傷者が出るらしく「騎士やハンターだけでなく、自警団を作れば良いのに」と言っていたのには感心した。
交流を終え、客室に案内していると、珍しく堕王子から声がかけられた。
「お前、何で城にいんの?隠し子かなんか?」
「違います。末の、第五王子であられるウィリアム王子殿下の乳兄弟です。今は相談役として城に住まわせて頂いているだけです。」
「何で乳兄弟が相談役なんかしてんだ?」
・・・純粋な質問なんだろうけど、お前は言葉を選べよ。相談薬学『なんか』って、立派な仕事だぞ。
「乳母をしていた母が殺されたからです。・・・着きました、こちらがジャクレイン様の部屋となります。」
客室の鍵を開け、扉を開いて促す。
中の灯りをつけてから、軽く説明を。
「右手に水回りがあります。左手のクローゼットにはお荷物があります。部屋の中にあるものはご自由にお使い下さい。明日の明朝、迎えに参ります。では。」
頭を下げて、部屋を去る。
何故か始終無言だったけど、どうかしたのかね?
では次の後書きでヾ( ・∀・)ノ