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炎の記憶
プロローグになります。
まだまだ駆け出しですので、
意見等よろしくお願いします。
妹の誕生日ということで、市内のデパートに出かけた。
中学生で、思春期真っ盛りの妹へのプレゼントを選びに、雑貨店へ行って、両親と悩みながら、オルゴールを見ていた。
可愛らしい、花や動物のイラストが彫られた、
木製のオルゴールを見つけ、手に取った時だった。
足下の、ぬいぐるみの入った買い物カゴが、爆ぜた。
私の記憶は、一瞬飛んで、次の記憶は、一面火の海。
逃げようにも、私の足は無くなっていた。
少し離れた所に、両親がいた。
重症を負っていたものの、動けるようだった。
火の海を越えようとする父に、私を呼び続ける母。
何とか、痛む右腕で、選んでいたオルゴールを投げた。
少し焦げてしまったが、十分動くはずだ。
それを持って、早く行けと、手を振った。
両親は、オルゴールを持って、逃げてくれた。
と言っても、母が、諦めない父を、引きずって行ったのだが。
どうせ、この傷では助からないだろう。
医学に乏しい私でも、そのぐらい分かる。
両足が、太ももの半ばで無くなり、左腕は動かない。
あちこち火傷しているのか、痛いうえに、焦げ臭い。
壊れたオルゴールや、ゲーム機、テレビがうるさく鳴る。
人の悲鳴や、泣き声、子を呼ぶ声が聞こえる。
あと一ヶ月で、誕生日だったのに。享年17歳、か。
まだまだやりたいこと、あるのにな。
やかましく鳴る電子音と、熱い熱い、炎の世界。
それが、私、雨宮 桂の最後の記憶。
だったはずなのに。
次話から本編となります。