双葉家の一幕
当然の事ではあるが、結城と優希は同じ家で暮らしている。
結城から優希に変わった時は全ての時間が女性として産まれたという事に置き換わっており、今回は双子として産まれたという事になっているらしい。
本来は性別が違うだけの全く同じ人間なので双子とも違うのだろうが、辻褄を合わせる1番良い設定がそれだったのだと思う。
「この場合ってどっちが上でどっちが下なんだろうね」
「そんなのどっちでも良いんじゃないの?
それより着替えるんだけど」
「自分の裸なんて見飽きてるから気にしても仕方なくない?
僕がここで着替え始めたからって優希は気にしないでしょ」
「それもそうか。
涼が目の前で着替え始めたらこんなに落ち着いていられないと思うけど」
「僕だって亜美が目の前で脱ぎ始めたらドキドキして落ち着かないさ」
2人は軽口を叩きながら制服から部屋着へと着替えをしていく。
やはり元は見慣れた自分の身体ということで思春期の男女であっても特に思うことはないらしい。
「分裂した後に色々改変されたにも関わらず部屋が一つしか無かったけど、そう考えると特に影響なくて良かったよね」
「元が自分だって考えると何も気を遣わなくて良いもんね。
ここまで気にしないでいい同居人なんて滅多にいるもんじゃないよ」
「作業効率も倍になってるしね。
分裂様々だよ」
そうして2人は机の上で本日の宿題をし始める。
とは言え、同じ箇所をやるのではなく2人で分担して進めていく。
お互いの範囲が終わったところで、ただ書き写すのではなく自分がどうやってその部分を解いたのかを説明する事で宿題は最短の時間でキチンと理解して終えることが可能であった。
先程自分が理解して行った道筋を示せば良いだけなのだ
これほどに優れた教師というものもいないであろう。
「あ〜終わった終わった!
今日もあっという間だったね」
「こんなに効率が良いやり方は中々ないよ。
さて、ママの晩御飯作り手伝ってこようかな」
「あ、僕も行くよ」
こうして2人仲良くリビングへとやってくると、晩御飯の用意をしている最中の母親を見つけた。
「ママ、私たちで手伝うよ」
「あら、助かるわ。
おかずが一品足りないと思ってたから2人で適当に何か作ってくれるかしら」
「オッケ〜……この材料があるならアレかな」
「ああ、なるほど。
それじゃ僕は調理器具の準備をしてくるよ」
優希が冷蔵庫の中身を見て何を作るか決めると、それを察した結城が必要な調理器具の準備を始めた。
そしてお互いに何の言葉も交わさぬままに下拵えを分担していく。
「あ、あれ……」
「はい」
途中で必要な物もアイコンタクトすらせずに受け渡していく程の完璧なコンビネーションであっという間に一品仕上げてしまった。
「はい、ママ」
「あらあら、もう完成したの?
結城達のコンビネーション完璧ね」
「お互いに思考が同じだから何考えてるか分かるってだけよ」
「そうそう。
まだ、時間あるからゲームでもしてようか」
「さんせ〜い!
完成したら呼んでね。
盛り付け手伝うから」
「僕もね」
そう言ってまた自室へと戻っていく結城達。
「本当にあの子達の相性はピッタリね。
正に無敵のコンビだわ」
超人的な手際の良さで自分の悩みを解決して去って行った子供達を誇らしく思いながら結城達の母は調理に戻るのであった。