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分かれた心身と男の約束

放課後の街を結城と一緒に歩いていた。


今日は偶には男同士、女同士の友情を育もうぜという事でいつもの4人とは別行動を取る事にしたのだ。


そうして俺の横を歩く結城を見ていて気付いたことがあった。


「結城、お前背……伸びたか?」


隣を歩く結城の頭がいつもよりも近く感じた気がする。


「うーん、どうだろう?

身長は変わらないと思うけど猫背じゃなくなったからかも?」


「あ〜そういえばお前って姿勢悪かったもんな」


「その事も関係あるんだけど、涼は僕について疑問に思わない?」


「疑問に思うこと何かあるか?」


「分裂して生まれた僕はどういう存在かって事。

例えば優希になる前の僕なのか?

それとも優希がもう一回結城に変わったものなのかって」


「うん?……どういう事だ?

お前は優希がもう一回結城になった存在じゃないのか」


結城の言葉の意味を考えてみるがちっとも分からない。


「結論から言うと違うと思う。

僕が優希になった時はまだ結城としての男の心が強かった。

それが日に日に身体に心が引っ張られるように女性化していったんだ」


「その辺りの事を説明できてる時点で優希になる前の結城じゃないよな」


「うん。

優希だった頃のことはしっかり覚えてる。

だけど、それなら今度は優希だった頃の……女性の心を持っていて徐々に男性化していかないとおかしいだろ」


「それは元々の結城としての人生があったせい……って言うには確かにおかしいか。

お前、あの時よりも明らかに女の子っぽさが抜けてるもんな」


「そうなんだよ。

自分の事をこんな風に話すのは微妙な気分になるけど、あの時の僕はかなり中性よりな人物だったと思う」


「あ〜って事は……つまりどう言う事だ?」


何とか結城の言葉を理解しようと思うが全くどう言うことか分からない。


そもそもこんな普通ではあり得ない事を理解しようとする方が無理なことかもしれない。


「簡単に言うとこれまでの双葉ゆうきの中で培われた男性面が結城、女性面が優希に分裂したんじゃないかな」


「ふーん、それは別にいいんだけど結局何が言いたいんだ?」


「ああ……まぁ、あれだよ。

涼の知っている双葉結城とはまた違う人物かもしれないけどよろしくねって話さ」


「……はぁ〜お前なぁ」


俺は心の底から呆れてため息をつき、涼の額にデコピンをかました。


「あいたっ!

何するのさ」


「お前が馬鹿な事言うからだろ。

どんな風に変わろうとお前は俺の友達の結城だ。

そのぐらい分かっとけ」


「……涼はそういう奴だったよな。

女の僕が惚れたのも納得だよ」


「最近はお前の方が仲良さそうに見えるけどな」


俺がそう言うと結城は心底驚いたと言う顔で俺の方を見た。


「何言ってるの?

僕たちは元は同じ人間なんだから当然じゃん」


「元……だろ?

今は別々の人間なんだから自重しろよ。

俺もそうだけど亜美を悲しませるような真似をするな」


「それは勿論さ。

亜美を悲しませるような事はしないさ……絶対に」


そう言って俺たちは真面目な顔をしたのだが、その後すぐに笑い合って拳をぶつけ合う。


言いたい事は言ったからこれ以上は必要ない。


後は久しぶりの男同士の時間を楽しむだけであった。

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