追いつくために
いつも通り放課後にアナログゲーム研究部……通称アナ研にやってきた結城と涼。
「今後の部活を外に発信していくとして、これから僕たちはどうするべきでしょうか?」
「そうですね。
一応の案はあるのですが……結城君は何か考えがありますか?」
「僕……ですか」
そう答えながらも結城の心の内は決まっていた。
「僕達もネットで配信をしていくのが良いのではないでしょうか?」
優希と部屋を分けてから、彼女に負けまいと色々と考えて絞り出した案があったのである。
「それでは動画配信部の活動と被りませんか?」
「いえ、僕たちが勝負する場所は変えましょう。
優希達が配信している所は広告収入などがある為にかなり厳しい審査とルールがあります。
そこで僕たちは収入が無い代わりにルールが緩い場所に動画を投稿しましょう。
自分が見つけた所には数多くのマイナーゲームを遊んでいる動画が投稿されているので少し見て頂けますか?」
「もちろんですよ。
……なるほど。
確かにこれならばかなり動画も作りやすそうですね。
この案は結城君1人で考えたのですか?」
須頃部長の問いに結城はチラッと隣にいる涼を見た。
「いえ、涼と意見を出し合って突き詰めた案です」
「これなら俺たちが遊んだゲームを録音して文字起こしすれば作れるからな。
この部活にいる間はゲームを遊びつつ録音したゲームを貯めていく。
それを文字起こしして動画を作る係と新しいゲームやシナリオを作る係に分けたらいい」
「動画配信では新しく売り出すゲームを中心にプレイしていくといいと思います。
ですが、最初はファン確保のために有名ゲームのプレイ回数を増やしていくべきかと。
回数をこなせば見ていて楽しい奇跡が起きる回も出るでしょう」
「というのが俺と結城の考えなんだがどうだろうか?」
大量の資料と共に提出された今後の活動指標を手に取った須頃部長の身体がプルプルと震えていた。
「あ、あの……部長?」
「素晴らしい案です!
私もゲームをプレイする動画配信をしてみてはと考えていたのですが、ここまで具体的かつ現実的な案は出せませんでした。
お二人のような部員が入ってきて本当にうれしく思いますよ。
この案はありがたく採用させていただきましょう。
みなさんも異論はありませんね?」
須頃部長が周りの部員を見回すと、彼らは拍手を持って部長に答えた。
「涼!」
「ああ、やったな」
自分達が考えたことが認められた2人は喜びでハイタッチする。
遥か先に行ってしまった優希に追いつく。
その一歩を確かに歩き始めたのだった。