名推理と部長就任
「最初からそれが目的だったんですね。
部長……いえ、画堂先輩」
「何のことだろうね?」
いきなり部長の座を明け渡されて困惑する優希の横で、画堂を睨む。
その視線を受け流しながらヒョいと両手を上げる仕草は非常に芝居がかっていて胡散臭い事この上ない。
「貴女は知っていたんですよ。
アナ研には資産になる資料がある事を。
そこで廃部をチラつかせて自分達で稼ぐ手段を考えさせた」
「面白い推理だけど彼らがお金になる物を作り出したからと直ぐに販売できるわけじゃない。
それを売っているという事さえ普通の人は知らないだろうからね」
「だから私達動画配信部の力が必要だったのでしょう。
現に貴女はアナ研の取材中に廃部通知書を持って現れた。
私達が手伝うのを見越していたんじゃないですか?」
亜美がそう言いながら画堂を指差して己の推理を叩きつけた。
そこ推理を聞いた画堂は堪え切れないとばかりに笑いながら両手を叩く。
「はっはっはっ、ヒントを与えてはいたがここまで完璧に見抜くとは……流石は動画配信部の巻開副部長だ」
「もう副部長確定ですか……それは置いとくとして、多分ですけど最初は単純に優希に部長の座を受け渡すつもりだったのでしょう。
しかし、こうして敢えて試練を与える事で動画配信部の絆を深めて優希が部長になっても誰も文句を言わない状況を作り出した。
現にこれだけの事を成し遂げたいま、優希の部長就任を反対する人はいないでしょう。
全ては貴女の掌の上だという事でしょうね……対価は画堂先輩の帰る場所を失ったくらいですか」
「痛い所を突くなぁ……まぁ、私は唯の成敗された悪党というだけさ。
今までの話だって証拠があるわけじゃないしね」
「さっきは認めたような発言しておきながら良くもそんな発言が出来ますね。
私、画堂先輩みたいな人が大っ嫌いです」
「おや、それは残念。
私は君のような聡明で正直な人間は大好きなんだけどね。
……まぁ、今後はその能力を新部長の為に存分に発揮しておくれ」
「勿論そのつもりですよ。
と言うわけで私達は新しい部長の元で一丸となってやっていくわよ!
文句のある奴はいないわね!?」
「え?はえ?あれ?」
未だに状況を飲み込めない優希を尻目に亜美が動画配信部の面々に向かって叫ぶ。
彼らは声こそあげないものの満場一致の拍手でもってその問いに答えた。
こうして当人が未だに混乱している中で、双葉優希は動画配信部の部長の座に就いたのであった。