2人に差が出た日
「うう……何で僕がこんな格好を……」
数十分後、顔を手で覆いつつ泣いている結城が女性2人に連れてこられた。
今までのブレザーにズボンという男子校生の制服から、ブレザーにリボン、更にスカートという女子高生の制服へと変貌を遂げていた。
「服をひん剥かれて見られたからお婿に行けない……」
「結城の裸なんて子供の頃にたくさん見てるんだから今更でしょ」
「私も元は自分の身体だし見慣れてるから気にしない方がいいよ」
「まぁまぁ、落ち着けって。
髪はカツラか?」
「そうそう、後ろ髪に留めて着けるタイプのカツラだよ。
ほら、いい加減に顔上げなよ」
優希に促されて顔を覆った手をどけて前を見る。
その顔を見た男性陣は須頃まで含めて「ほぅ」と息をついた。
そこには優希と瓜二つの美少女が立っていたからだ。
身長差は少しあるものの、並べてみればどちらがどちらか分からないほどに2人は似ていた。
「いや……これは凄いですね。
私にはどちらが結城君か分かりかねますよ」
「そうですか?
確かに似てますけどちょいちょい違いますよ」
「能登君は見分けが付くんですか?」
「そりゃ、長いこと幼馴染やってますからね。
亜美もシャッフルされても分かるよな?」
「もちろん。
流石に間違えないわよ」
「古くからの友人というものは良いものですね。
結城君……心中心苦しいのはお察しします。
ですが、アナログゲーム研究部の存続の為に尽くしては貰えないでしょうか?」
須頃部長はまだ恥ずかしさのあまりに俯く結城の前まで行くと深々と頭を下げた。
「ぶ、部長!
頭を上げてください」
「いえ、私は新入部員である貴方に無理を押し付けている身です。
私が代わりを出来れば良いのですが、これは結城君にしか出来ないことでしょう。
そうであるならば私に出来ることは頭を下げて貴方にお願いすることだけなのです」
「わ、分かりました……本当はこんな格好で配信されるなんて嫌でしたけど精一杯に頑張ります。
僕もアナログゲーム研究部の部員ですから。
出来ることを頑張ります!」
俯いた顔を上げてそう宣言する結城の頭を涼が乱暴に撫でる。
「よく言ったな!
結城がしっかりやれるように全力でサポートさせてもらうぜ」
「司会進行は私たちがやって補助するから。
隣には常に優希も配置しているから困ったら丸投げしていいからね」
「動画配信に関しては私の方が遥かに先輩だから任せてよ」
「……そうだね。
皆んな頑張ろう!!」
こうしてオリジナルのシナリオブックとゲームブックのCM撮影がスタートした。