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プレゼン能力は大事

「遂に涼達の部活の取材だね!

楽しみだなぁ」


あれから幾つかの文化部の取材を終え、優希に取っては待ちに待ったアナ研の取材となった。


朝からウキウキしている様子の優希を見ていて私は少し不安になる。


「ねぇ、優希……言いにくいんだけど、あまり」


「どんな活動して頑張ってるのかなぁ?

文化部の皆んなも大会に向かって頑張ってたから精一杯応援してあげないとね」


「え、ええ……そうね」


正直、彼らの活動内容は部活の名前で何となく想像が付くのだが、確証があるわけではない。


そのために何度も過度な期待を持つなと言いかけて言えずにいた。


そうして遂にアナログゲーム研究部……アナ研の部室の前に着いてしまった。


「失礼しまーす」


「おや、これはようこそいらっしゃいました。

ようこそアナログゲーム研究部へ。

私は部長の須頃です」


「動画配信部リポーターの双葉優希です」


「同じくリポーターの薪開です。

よろしくお願いします」


奥の方を見ると椅子に座っている結城と涼が手を振っていた。


カメラは既に回っているのでそちらの方に目線だけ送ってから取材に集中することにした。


「この部活では何をやっているのですか?」


「昨今のデジタルゲームの躍進によって衰退していったアナログゲームの普及と保護が目的ですね」


「おお〜なんだか壮大なテーマですね。

普段はどのような活動を?」


「この棚にあるアナログゲームを実際にプレイしてみて理解を深める努力をしています。

また、自分達で新たなゲームを生み出せるように開発にも取り組んでいますね」


「それは凄いですね。

実際に開発されたゲームはあるんですか?」


「ええ、過去にこの部活に所属した先輩達が残したものも含めると多数ありますよ」


運動部では実際に私がその活動を行う事でアピールの機会を増やしていたのだが、文化部では優希がメインとなって取材を進めている。


そんな中で部員紹介に移ったのだが、そこで結城が出てきて実は……と言った感じで取材は進んでいった。


今のところは私が心配していたただ遊んでいるだけにしか見えずに優希がガッカリするといったアクシデントも起こらずに済んでいる。


それと言うのも、この須頃部長という人のプレゼン能力が非常に高いからだろう。


恐らく全てを噛み砕いて聞くと毎日ここでゲームして遊んでいますという内容になっているのだが、彼は崇高な目的の為に日々研鑽を重ねているという印象を与える喋り方をしていた。


純粋な優希はまんまとその言葉に乗せられている訳だが変に落胆させるよりはそれでいいだろう。


「今日はお忙しい中時間を使って頂きありがとうございました」


「こちらこそ楽しい時間でした。

またいつでもいらしてください」


和やかな別れの挨拶で締め括られて取材は終了した。


「お疲れ様。

優希、とっても格好良かったよ」


「本当に普段とは違ってしっかり出来てたじゃねぇか」


「あ、結城!涼!

今日はありがとう」


「私からもお礼を言うわ。

取材の為に時間空けてくれてありがとうね」


男2人も合流して久しぶりにワイワイと話して始めたその時であった。


アナ研の扉がバンと開き……現れたのは動画配信部の画堂部長であった。

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