自己愛か、異性への愛か
「ふーん、結城の方はそんな事があったんだ」
「そうそう!
最新の技術には無い面白さって言うのがあって良かったよ」
初めての部活から帰宅後、其々にどんな体験をしたのか2人は話し合っていた。
楽しそうに今日あったことを話す結城の話を、優希はベッドの上でキャラクターのぬいぐるみを抱えながら聞いていた。
「私の所は逆かなぁ。
取材した内容を色々と編集してくれてるからデジタル技術って凄いなって思ったよ。
あ、ほら……これが動画配信部のチャンネルなんだけど早速バスケ部の取材が公開されてる」
ぬいぐるみを抱いたままスマホを操作して配信部のチャンネルを開くと、結城もベッドの上にやってきてその動画を覗き込んだ。
「へぇ〜本当の番組みたいで凄いね。
あ、亜美のシュートのフォーム綺麗だ」
「ね〜亜美ちゃんが皆んなに教えてて本当に格好良かったよ。
私なんてそれ見て凄い凄いってはしゃぐだけだったし」
「ふーん、でも褒められた部員さんたち嬉しそうだよ。
やっぱり可愛い女の子に褒められたら嬉しいんじゃない?」
何の気無しに結城が誉めるが、特に響いた様子もなく優希が首を傾げた。
「嬉しいけどそれって自画自賛にならない?」
「どうなんだろうね。
でも、最初に会った時から話してるけど優希のことは可愛いって思ってるよ」
「まぁ、私も結城の顔は好きだけど。
こう言う事を涼にはすんなり言えないから、やっぱり自分の事を褒めてるのと変わんないのかもね」
「こうやって男と女に分裂して話し合った人なんていないから分からないからなぁ。
でも、自分の事を好きになるのがポジティブに生きる1番の方法って何かの本で見た事もあるし悪いことじゃないんじゃない?」
「自己肯定感を高めていこうってやつよね。
それじゃ、結城にもっともっと好きになってもらって自信を付ける為にも部活頑張らないとね」
「僕も優希にもっともっと格好良いって思ってもらえる様に部活頑張ってみようと」
こうして自分を好きになって自信を付けるという口実で2人はお互いの為に努力しようと約束して就寝するのであった。
果たしてそれが本当に自己愛だったのかどうか?
それとも異性としての気持ちの芽生えだったのか?
この時の2人はまだ何も知らずに眠りにつくだけであった。