探し物は案外側にある
「何か進展あったか?」
あれから3日が経った放課後、涼は私の所に来るなりそう聞いて来た。
「なーんにも分かってない。
よく考えたら皆んなの記憶の中では優希は最初から女の子だったり、2人は最初から男性と女性だったりとその都度に記憶改竄されてるから、結城を変えたノートなんて聞き方も出来なかったからね」
「そりゃ、そうだよな……本当に何処に行ったのやら」
「何か探してるの?」
「2人を分裂させたあのノートを探してるんだよ」
「何処を探しても見つからないのよね」
私達がノートのありかを探すのは絶望的かと思っていた矢先に優希達がやってきた。
2人に関わることなので本当は話すべきでは無かったかもしれない。
しかし、最早打つ手が無かった私達は反射的に普通に答えてしまっていた。
だが、本当に意外なところから求めていた答えがやって来た。
「え?それなら私が持ってるけど」
そう言いながら優希がカバンからあのノートを取り出したのだ。
「何で優希が持ってるの!?」
「分裂した時に放置されてるノートを見つけたから持って帰って来てたの。
なんだかんだあったけど、女性にしてもらえて今は感謝してるし分裂したのも良かったと思ってるからね。
今では良い友達だよ」
「今じゃ仲良しなんだよね」
「仲良し……?」
2人の言葉の中に私達の頭が疑問符でいっぱいになる。
「え?このノートと意思疎通出来るの?」
「出来るよ。
例えば……いつも話し相手になってくれてありがとうね」
そう話しかけてからノートを開くと中には
『こちらこそ感謝していますよ。
貴女に拾われてから毎日大変楽しい思いをさせてもらっています』
と書かれていた。
「本当だ……意思疎通出来てる」
「これなら色々聞けるんじゃないの?
ねぇ、優希。
このノート少しだけ借りてもいい?」
「え……別にいいけど乱暴な事はしないよね。
私は怒ってないから酷いことはしないであげてほしいんだけど」
「しないしない。
少し聞きたいことがあるだけだから。
それじゃ、ちょっと借りていくね。
涼、行くわよ!」
「ああ、本当に変なことはしないで質問したいだけだから気にしないでくれ。
少ししたら返しに来るからいい子で待っててくれよ」
涼はそう言って優希の頭をポンポンと撫でると私の後をついて来た。
「とりあえず屋上とかで聞いたらいいかな?」
「そうしよう」
こうして意外なところからノートを入手した私達は結城達の分裂の知識を得るために屋上へと向かっていった。