疑惑の本を探したい
「頭を冷やすとは言ってもどうするのよ」
「そこは何にも考えてないけどよぉ……あの場であーだ、こーだって言ってたら絶対に口論になってたろ。
今の状態で口論になるのは不毛だし、俺たちはお見舞いに行ってる身で言い争っても絶対にいい結果にはならねぇぞ」
「それはそうだけど……」
涼の言いたいことは分かるけれども納得は出来ずに口を尖らせる。
「言いたい事は分かるよ。
今のあの2人のくっつき方は正直異常だ。
2人を兄弟、姉妹とか双子と同じカテゴリーに入れたとしても仲が良すぎる。
それに対して俺たちがどうこう言っても元は1人の人間だからって返されたらどうしようもないだろ」
「あの返しは正直卑怯すぎるわ。
自分自身が目の前にいる感覚なんて私達には分からないから、そう言うもんだって言われたらそういうものかなってなっちゃう」
「そうだろ……最近思い始めたんだが、俺らに分からない感覚でそういうもんだって言われたらそうなのかって言うしかないよな。
この事に関して話し合っても平行線だし俺たちが負けるのは目に見えてる。
俺たちはもっと別方面から物事を考えるべきじゃないか?」
寮の言いたいことは分かるような分からないような話だ。
そこで私は率直に思いついた疑問を口に出した。
「具体的にどうするの?」
「2人が分裂した時にまた消えてしまった本を探す。
優希達には決定的な何かが不足してしまっている。
その理由はあの本が2人が分裂した時にまた何かをやらかしたんじゃないのか?」
「でも探すって言ってもどうやって?」
「最初の時も今回も本は学校内の何処かにあったからな。
今回も学校内の何処かに落ちていて誰かが拾ってるんじゃないかと思う」
「そっか……じゃあ、私も誰か見ていないか探してみるよ」
「そうしてくれると助かる。
男子と女子のネットワークは違うものだからな。
明日からはお互いにその路線で調査しよう」
「分かった……お互いに頑張ろうね」
「ああ、また明日な。
明日からは大変になると思うから身体を休めておけよ」
「分かってる、涼もしっかり休みなさいよ」
「ああ……それじゃ、俺はこっちだから。
またな」
「気をつけてね」
私は手を振って見送った後でため息を一つついて、明日からの大変さに滅入る気分を何とか奮い立たせて帰路に着くのであった。