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997:6thナイトメア・エンド-4

本日は四話更新になります。

こちらは四話目です。

「『灼熱の邪眼(タルウィスコド)・3(サルファ)』」

 伏呪付きの『灼熱の邪眼・3』が発動する。

 だがターゲットはブラクロ・エウルトではなく、私の身体が炎に包まれる。

 ダメージは殆ど無いが、灼熱のスタック値は敢えて受け入れる事によって、数千単位で受ける。

 そして、一時的に再生を止める事によって、灼熱のスタック値が回復していくのを停止させる。

 で、一つのアイテムを口に含んでおく。


「……!」

 ブラクロ・エウルトが刀身が伸びた短剣を手に突っ込んでくる。

 そしてヤノミトミウノハの守りの目の前で、ブラクロ・エウルトの身体が13に分かれ、それぞれのブラクロ・エウルトの腕が7対あるいは8対に増えた手で剣を振るう。

 その剣の切れ味、威力、込められた呪いはヤノミトミウノハの守りをあっという間に引き剥がしていき……。


「っう!?」

 撃ち破る。

 そして、守りが撃ち破られた反動なのか、私の身体に何本も刃が突き刺さったような痛みが流れて、四肢が痺れていく。


「……」

 また、ブラクロ・エウルトはヤノミトミウノハの守りを撃ち破るだけで終わらせる気が無いらしく、ブラクロ・エウルトは一人になったように重なると、武器を構える。

 きっと、もう一瞬後には、最初の戦いと同じように全ての目を突き刺された上に細切れにされる事だろう。

 だがもう遅い。


「ゴクン」

 私は口の中に含んでいたものを飲み込む。

 私の全身の傷が一瞬にして癒える。

 私の全身が虹色の輝きだす。

 私の灼熱のスタック値がゼロになる。

 それはつまり『灼熱の邪眼・3』の伏呪の効果が発揮されると言う事であり……


「ーーー!?」

「ははっ」

 私自身に数千に及ぶスタック値を持つ悪臭の状態異常を付与すると共に、数千メートルにわたって異臭を生じさせると言う事である。

 その異臭によって、攻撃をしようとしていたブラクロ・エウルトは武器を落として両手で鼻を抑え、目を閉じる。

 当然だ。

 はっきり言って私にとってもツライ悪臭が辺り一帯には満ちている。

 そんな悪臭を、狼の頭の異形と言う見るからに臭いに敏感な部位を持つ上に、それをおおよそ百倍で知覚することになっているのが今のブラクロ・エウルトなのだ。

 耐えられるはずがない。


「『竜息の呪い(クニルドセルブ)』、射出方法1、狂記外天:森羅狂象・初稿-ルナアポクリフ:オルビスインサニレ・ターゲスアンブルフ」

 だがこんなものによる足止めは精々数秒しか保たない。

 私は自分の嗅覚を消した上でブラクロ・エウルトに接近し、ドゴストの口をブラクロ・エウルトの腹に斜め上から押し当てる。


「!?」

 射出されたルナアポがブラクロ・エウルトに突き刺さる。

 突き刺さったルナアポは腹を貫通すると共に、圧倒的な勢いによってブラクロ・エウルトを押し倒し、地面へと縫い留める。


「『太陽の呪い(ノームセルブ)』、『砂漠の呪い(トセロフセルブ)』、『大地の呪い(イクスセルブ)』、『徴収の呪い(ディアセルブ)』」

 だがこれもまた精々数秒が限度の足止めでしかない。

 だから私はさらに呪いを重ねていき、場を灼熱の太陽が照らし出す砂漠と言う、私に相応しい場に変えると共に、ブラクロ・エウルトの拘束を蜘蛛の巣状の強固な岩石によって強める。

 合わせて、ブラクロ・エウルトのHPを僅かずつだが吸い上げ始める。


「ザリチュ! それから……『虹霓(カース)外への(ステアトゥ)(アウト)』」

『言われなくてもでチュよ』

 ドゴストから『模倣の棺船呪』を13体取り出し、その13体へ素早く私の血を注ぎ込み、変形させ、13体の私を模したゴーレムを出現させる。

 また、『虹霓外への階』を『模倣の棺船呪』たちに使用して、ブラクロ・エウルトが妙な能力を持っていても攻撃が通るように強化する。


「グルアアアアァァァァッ!!」

「『転移の呪い(イフセルブ)』」

 ここで咆哮による攻撃をブラクロ・エウルトが試みてくる。

 私はこれを、最初の頃に攻撃を受けたついでに散らばらせておいた眼球ゴーレムの視点を基準に転移する事で距離を取り、弱まった攻撃を防御して凌ぐ。


「さあ、大奮発よ。pmal(プマル)暗闇の邪眼(タルウィダーク)・3(シェード)』」

 凌いだところで、『模倣の棺船呪』、それに生き残っている眼球ゴーレム、その両方とタイミングを合わせて、全力の『暗闇の邪眼・3』を発動する。

 鉄紺色の輝きによって場が満たされる。

 黒い火柱が立ち上る。


「ーーーーー……」

 身動きの取れないブラクロ・エウルトの断末魔の叫びが周囲へと響き渡っていく。

 それでも黒い火は止まず、むしろ火勢を増させるために私は呪詛の剣を叩き込めるだけ叩き込んでいき、世界ごと焼き尽くすような勢いで火を焚いていく。

 『模倣の棺船呪』たちも私に倣って火を放ち続ける。

 何故ここまでするのか。

 決まっている。

 まだ討伐成功のアナウンスが流れていないからだ。

 ブラクロが基になっている以上、何をしてくるのか分からないのがブラクロ・エウルトと言う存在であり、手加減などうっかりしようものならば、容易く逆転されかねない。

 故に焼く。

 徹底的に焼き、理解を深め、皮膚を焦がし、爪を溶かし、肉を炭に変え、血を沸騰させ、神経を焼き切り、熱で骨が割れ、腸が灰になり、魂が未知へと還るまで、徹底的に焼く、焼き尽くす。


≪『狡知黒狼の偽人呪』ブラクロ・エウルトに勝利しました≫

≪称号『6thナイトメア完全制覇』を獲得しました≫

「ふぅ……」

『何とか無事に終わったでチュねぇ……』

 そうして焼き続ける事10分ほど。

 ようやくアナウンスが流れ、私は息を吐く事が出来た。

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