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995:6thナイトメア・エンド-2

本日は四話更新になります。

こちらは二話目です。

「ふぅ……」

 私は元の空間に戻された。

 殆どのプレイヤーたちは私とブラクロ・エウルトの戦いを目撃してか、唖然としている。

 そんな中で私と同じように単独で挑むことになっているらしいスクナと私の目が合い、頷き合い、スクナがブラクロ・エウルトに挑む。

 結果は?


「「「えええ……」」」

 スクナは四本の刀を手に持ってブラクロ・エウルトに挑んだ。

 が、ブラクロ・エウルトは文字通りの同時に四本の刀を二本の短剣で折ると言うあり得ない現象を引き起こした上で、スクナの身体を切り刻んで死に戻りさせた。


「……」

「……」

「じゃあ次は俺たちだ」

「「「おうっ」」」

 続けてマントデアたちが挑戦。

 結末は予想通りだが、その過程において雷速で振り下ろされた巨大な棍をパリィどころかへし折ると言うあり得ない現象を見せつけてきた。

 なお、殆どのプレイヤーは捨て身でかかり、呪術をフル活用して、それで数秒稼ぐのもやっとぐらいだった。


「はい、情報共有しましょうか」

「そうだな。情報共有しよう」

「だな」

「可能な限りの解析結果は提供させていただきますね」

「次は私たちが挑んでくるわ」

 さて、私を含む挑んだプレイヤーたちと検証班は情報共有の時間である。

 そしてザリアたちはオリジナルであるブラクロも連れて、ブラクロ・エウルトに挑んでくる。


「干渉力と言うか、攻撃と速さ関係のステータスはヤバいわね。普通に見えなかったし、13個の目が本当に同時に攻撃されたわ」

「あくまでも私見だが、刀の刃を正面で受け止めつつ、両側から全力で叩かれたような感覚があったな」

「パリィされた瞬間は何というか、攻撃が何重にも重なっている感じだったな」

 ザリアたちの戦闘は……流石にオリジナルはブラクロ・エウルトの秘密を知っているためか、抗えている。

 だが、ザリアたちの攻撃は明らかに隙だらけなところに攻撃しているのに、何かによって弾かれているし、完全に同一のタイミングで三方向から攻撃されてもそれは変わらない。

 まるで、腕が何本もあるかのようだった。


「あ、タル・エウルト第二段階でブラクロと偽トテロリが戦っていた時の映像がこれね」

「「「何だこれ……」」」

「「「ふむふむ……」」」

「やはりか……」

 と言うか、実際に何本もあるのだろう。

 そうでなければ説明がつかない。

 それが呪いであるか、呪術であるか、装備品の効果であるかは分からないが、現象から判断して存在しているのだけは確かなのだ。

 で、こうしている間にもザリアたちとブラクロ・エウルトとの戦闘は進行し、ブラクロ自身は耐久出来ているのだが、ブラクロ・エウルトの反撃によってザリアたちは倒されていく。

 そして、ブラクロとブラクロ・エウルトだけになったタイミングで、何かしらの制約があるらしく、ブラクロごとザリアたちはこちら側に戻ってきた。


「はぁ。やっぱり負けたわね。なんというか、うっかりをしないブラクロと言う感じね。で、ブラクロ。アレは何? 私たちも知らないんだけど」

「ひみ……アイダァ!?」

 ザリアの言葉に反応したブラクロに対して、シロホワが無言でローキックをかます。

 なお、蹴られる前のブラクロの顔は非常にイラつく感じであったとは言っておく。


「別に喋らなくてもいいと思うわよ。秘密にしたい案件はそれぞれあるでしょうし」

「そうね。まあ、本人が喋らなくても、だいたいは察する事が出来るわ」

「痛ぇ……うんまあ、種明かしは誰もクリア出来そうになかったらでいいか? 俺にとっては生命線の情報でもあるからな」

 まあ、ブラクロからの情報が無くても何とかはなる。


「じゃ、私は準備をしてから二戦目に挑みますか」

 と言う訳で行動開始。


「そう言えばあの件、タル・エウルトは使ってませんでしたよね……」

「言われてみれば……」

「まあ、見るからにヤバい剣だし、使われなかったのは幸いとしか言いようがないな」

 話し合いの場から少し離れたところで、ルナアポを生み出し、ドゴストの中へと収納する。


「『竜活の(エサエルセド)呪い(セルブ)』」

「「「!?」」」

 そしてルナアポを使用した『竜活の呪い』を発動して、変身。

 続けて『熱波の呪い(ドロクセルブ)』を発動して呪詛に当たり判定を持たせると共に、虹色の炎のようになった呪詛を壁のように周囲へと配する事によって、視線を遮る。

 で、この状態で先に発動しておいても大丈夫な呪術は事前に発動しておく。

 具体的には『不明の呪い(イチラルセルブ)』と『理解の呪い(ンヲンクヌセルブ)』などを使っておく。

 これでブラクロ・エウルトの圧倒的なスピードによって、呪術の発動前に潰されると言うのは、防げるだろう。


≪『狡知黒狼の偽人呪』ブラクロ・エウルトとの戦闘を開始します≫

 で、この状態で転移。


「!」

「……」

 私は戦闘開始と同時に全速力で上空に向かって飛び上がる。

 音速の数倍に及ぶ飛翔は、普通の存在ならば決して追いつけるようなものではない。


「……」

「でしょうね!」

 だが、その飛翔にブラクロ・エウルトは平然と追いついた。

 地面のタイルにクレーターを作るような勢いで跳躍して、既に私の前に迫っていた。


「ぐっ!?」

 私はブラクロ・エウルトの一撃をルナアポによって防御し、色々なものを弾かれつつ、吹き飛ばされる。

 そしてその際だが、ブラクロ・エウルトの身体が何重にもブレるのが見えた。

 この結果を見て、私は確信した。

 ブラクロ・エウルトは何かしらの方法によって同一座標に100人近くが重なっており、その100人分の力を自在に行使する事によって、信じがたい力を放っているのだと。

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